フードリンクレポート


勝ち残れる店舗のつくり方をぐるなび大学で講義。
〜「ぐるなび」vs「食べログ」、グルメサイトの王者はどっちだ?〜(5−2)

2010.4.30
飲食のポータルサイトとして著名なぐるなびと、最近急速にアクセスを伸ばしてきた食べログ。この2大サイトはぐるなびが飲食業者を支援する立場に立つのに対し、食べログが消費者のクチコミでお店を評価するというように方向性が正反対だ。両サイトの強みはどこで、飲食店としては販売促進にいかに活用できるのか。研究してみた。5回シリーズの第2回目。


飲食店向けのぐるなびPRO ホームページ。

勝ち残れる店舗のつくり方をぐるなび大学で講義

 では、ぐるなびのサイトに掲載して、実際に効果を出す方法を我妻氏に教えてもらった。

 第一に、自分の店の特徴を強く打ち出しているところが強い。例えば、特定産地の素材しか使っていないとか、鮎なら鮎の料理しか出さないとか。強い売りがある店なら、販促ツールとして有効に機能する。

 確かに顧客との双方向性を考えれば、クーポンは重要だが、ぐるなびはまずクーポンありきのサイトではなく、店の情報と強みを発信するツールであるということだ。

 店の強みの打ち出し方、トレンドなどについては、実際の経営者、マーケティングの専門家に来てもらって、「ぐるなび大学」で講義。また、海外からの顧客が増えている現状であるので、英語での接客法をロールプレイングで教授している。

 第二に、食材の生産者とつながる機会がある。地方自治体からもブランド力アップのために、ぐるなびを通して飲食店に食材を売り込みたいという要請があり、ぐるなびでは生産者と飲食店をマッチングさせる機会を設けて、飲食店の食材に関する悩みの解決を手助けしている。食材のクーポンカタログを発行しているほか、産地への食材探しツアーなども行っている。自分の店に最適な食材を確保できれば強い。


食材クーポンカタログ。

 第三に、さまざまな販促ツールを活用している。たとえば、携帯電話をかざすとスタンプカードの代わりになって、何回来店したのかがわかる「ぐるなびタッチ」を使って、10回来れば割り引くなどのサービスを行うことができる。メルマガも発行でき、集客の機会につなげることが可能だ。


ケータイで販促できる、ぐるなびタッチ。

 第四に、飲食店を利用する顧客に、お店を選択しやすくする様々な仕掛けがあり、ニーズに応じて集客プランが組み立てられる。

 たとえば「セカイカメラ」と提携してスマートフォンをかざすと、位置情報と連動してお店の情報が得られる。あるいは、地域ごとに「感情を演出できる店」を特集するなど、感性で直感的に選べるように、特集ページを編集している。

 また、来日数が増えている中国人観光客に関しては、近畿日本ツーリストと提携して、パッケージツアーに3000円のレストランカードを付けて、ぐるなび推奨店で使えるサービスを始めている。将来的には、中国人の国民的デビットカード「銀聯カード」で決済できるように、提携も視野に入れている。

 宴会需要の掘り起こしでは、「スーパーらくらく幹事さん」というコーナーがあり、ここにエントリーすると、何日何時から、予算は幾ら、何人で、何が食べたいのか、個室がいいのかといった条件で、消費者が検索してお店選びをして、予約を入れることができる。

 約2万人が登録している会社秘書と飲食店との懇親会も開かれており、約半数の上場企業の秘書が会員になっているという。役員の接待などを開拓するチャンスである。

 特に毎月5万円以上、年間60万円以上を払った販促正会員ともなると、さまざまな機能が使えるようになり、より効果的な宣伝ができるとのことだ。

 ぐるなびサイト内の、さまざまな特集に取り上げられるほか、検索に有利になったり、食にかかわるレポートが読めたり、顧客に関する詳しいデータが見れるなど、多岐に設定されたプランから、必要な宣伝・販促の方法を選べるのである。

 求人、ウェディング、トラベルなどのコーナーもあり、食のトータルサイトを目指しているのがぐるなび。

 顧客の意見が反映されにくいといった批判もあったが、ツイッターなどからお店に行った人の感想も書き込めるようになった。加盟店となって月額最低3万円以上の投資効果が集客に見込めると考えるなら、試してみる価値は十分あるだろう。


【取材・執筆】  長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年4月23日執筆