・一人客の40%が女性も。あらゆる業態で“おひとり飲み”
どんな店でどんな人が一人で飲んでいるのか?“おひとり飲み”の実態を探るため、実際に一人飲みに繰り出してみた。
●ケース1: バールでタパスつまみに一杯ひっかける。
銀座の外れにあるイタリアンバール「Barcos」では、なんとディナータイムの一人客の40%が女性だという。店内は明るく活気があり、入ってすぐの長いカウンターがオープンで一人でも滞在しやすい。オーガニックを売りにしていて新鮮な無農薬野菜を使ったメニューであること、バールだけあって一皿のポーションも多くなく、タパスなら400〜700円が中心であることも女性一人にはポイントが高い。
明るい店内。エントランスから伸びる長いカウンターが開放的。
そして、何より嬉しいと思ったのは、料理3種(日替り)+ドリンク1杯(ビールor 赤・白ワイン)で1000円というセット。少量ずつつまめる料理3種類楽しめ、お酒も飲めて1000円。女性に人気があるのもうなずける。飲み足りない時はお酒を追加し、お腹が空いている時はこれに料理を1品追加するというパターンも多いそう。
前菜3種とドリンクのセット(1000円)。
男性が仕事帰りに居酒屋で一杯ひっかけるという感覚に近いと思う。でも、この値段と雰囲気なら女性でも日常的に気軽に利用できそうだ。
●ケース2: バーでウイスキーのストレートを2、3杯飲んで帰る
本格的なバーでも、女性の一人客が増えている。仕事帰りに行きつけのバーにふらっと寄って、好きなお酒を楽しむ。「ウイスキーを2、3杯、ストレートでさっと飲んで、帰られるお客様もいらっしゃいます。」と語るのは、バー「Atrium」(銀座)のバーテンダー清水さん。この店のバーテンダーは女性のみ。本格的にお酒が楽しめる“銀座のバー”ではあるが、女性にとっては居心地がいい。客が全て女性、つまり店内は全て女性という状況になることもあるという。
「Atrium」カウンター。
日中暑かったこの日、「さっぱりと一杯目に飲める、ラムを使ったカクテルを。」というリクエストに出してもらったのは「モヒート」。メニューを見ずに好みや気分でオーダーができるのもバーの嬉しいところ。言葉にしない気分を汲み取ってくれて、細かい気配りをしてもらえる心地よさは、仕事で疲れた女性にとってはほっとできる瞬間だ。
「モヒート」
●ケース3: 近所の居酒屋で惣菜と魚をつまみに日本酒を。
居酒屋というか、小料理屋というか、門前仲町の路地を入った所にある「鶴来(つるぎ)」は、女将の出身地石川県の郷土料理を中心に、美味しいお惣菜が楽しめるカウンター10席の店。およそ、女性一人客とは結びつかないような店ではあるが、全体の70%程を占める一人客の中でも、女性が少なくないという。女性一人客は30代後半〜40代が多いが中心だが、20代前半の女性も通っているという。
「鶴来」エントランス。
通常はカウンター10席のみ。席の間隔も狭く、アットホーム。
大半は近所に住む常連で、仕事帰りに寄る人が多い。飲み物は、半々くらいの割合で焼酎か日本酒。石川県の食材を使った一品や、ぶり大根、肉じゃがといった総菜もあり、もともと築地の寿司屋で働いていたという大将が仕入れる新鮮な魚を使った料理も楽しめる。
どれも美味しく懐かしい、ほっとできる味だ。こじんまりとした店内で、どことなく実家の居間にいるような雰囲気。料理をつまみながら、お酒を飲んでのんびり過ごせる。
ぶり大根と八海山。
女将さんとの会話も、一人で飲みに来る女性には嬉しいだろう。女性の一人客は、話し好きなママさんとのおしゃべりを楽しみ、女将さん特製の裏メニューをオーダーする。日によって異なるが、スパゲッティやカレー、シチューが裏メニューとして用意されており、女性に人気だという。
寿司屋の大将らしく、寿司ネタのように魚が並べられ、寿司も握ってくれる。
手頃な量&価格の料理とお酒のセット、店員の細やかな心配り、家にいるようにのんびりできる空間と人情味あるコミュニケーション。どの店も女性に嬉しい要素があり、たとえ初めて入っても、一人で入っても寛いで過ごすことができる。女性一人客が増えているのも納得である。では、女一人客はどのように店を選び、店でどう過ごしているのか?