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「誰かとコミュニケーションをとりたい」から飲みに行く。
〜一人で飲みに行く女性が急増中!これが女性の“おひとり飲み”〜(3−2)

2010.5.25
“おひとりさま”という言葉が流行り、女性が夜、飲食店で一人食事をする光景もよく見かけるようになった近頃だが、最近は食事をするというよりは、飲むために店に行く女性が増えているという。一人で飲むことを楽しみ、自分らしく自分の時間を過ごす。ますます今後増えていきそうな、そんな“おひとり飲み”の実態を探った。 3回シリーズの第2回目。レポートは村田麻未。


一人で飲みに行く目的は様々。気分によって使い分ける。

「誰かとコミュニケーションをとりたい」から飲みに行く

 女性の“おひとりさま飲み”には、大きく分けて2パターンあるようだ。一つは、「誰かとコミュニケーションをとりたいパターン」。もう一つは、「一人の時間を過ごしたいパターン」だ。


●「誰かとコミュニケーションをとりたいパターン」

 店員と話をしたり、 他の客とコミュニケーションをとる女性一人客が増えている。サービス業のBさん(30歳)は、馴染みの店に一人で飲みに行く。「賑やかな雰囲気の店なので、その雰囲気を楽しむためというのもあるし、そんな気分の時は他のお客さんと話したりする。」とのこと。

 知らない客に話しかけるのは抵抗がないかと尋ねると、「自分が好きな店の常連なら、間違いがないと思う。“お酒”が共通の話になるので、コミュニケーションの手助けになる。」とも。実際に話しかけて周りの客も一緒に仲良くなり、その店以外でも会う友達グループが出来上がったらしい。仕事以外で友達を作る機会が少ない人にとっては、格好の場なのかもしれない。

 そんな彼女も、一人で飲みたい=話しかけられたくない時もあり、そんな時は落ち着いた雰囲気の違う店に行くという。同じ女性でも、一人で飲みたい時と、コミュニケーションをとりたい時と、パターンと店を使い分けているのである。

 Webサイトの編集長をしているCさん(35歳)は、月に1回は一人で飲みに行く。「考え事、悩み事がある時は、帰宅途中、いつもより少し足を伸ばしてバーに寄る。「年配のマスターや隣に座った、どこかの会社の“お偉いさん”だろうと思われるお客さんに相談したりする。」という。会社の上司には言えないことも話しやすく、人生経験豊富な彼らからのアドバイスが参考になるそうだ。


何気ないやりとりから会話が生まれるカウンター。


●「一人の時間を過ごしたいパターン」

 このパターンの場合、女性はただただぼーっとしたり、考え事をしたりする。本を読む人が結構多いというのには驚いた。どれも家でもできることでわざわざ店でやらなくてもと思ってしまうが、家にいると家事や他のことをしてしまい、例え一人暮らしでも結局一人きりの時間を満足に過ごせない。だから、誰にも邪魔されない環境で楽しみたいのだそうだ。確かに心置きなく一人の時間を過ごすには、家でない方がいいのかもしれない。


何も考えず、バーテンダーの手さばきを眺めるのもいい。

 保険の営業マンをしているAさん(34歳)は、週に1回くらいは近所のバーで一人で飲む。「実家暮らしなので、家にいると一人きりの時間が少ない。誰にも話しかけられない、かつ、生活の場でない所でゆっくり考え事をしたい。」とバーに通う理由を語る。「来週のプレゼンどうしようかと作戦を練ることも。お酒が少し入ると難しい状況の仕事も前向きに考えられる。」という。

 彼女は、カクテル1杯と軽いつまみだけを頼み、1時間くらいで出ることが多い。「営業という仕事柄、日中も一人で店に入ってランチをすることも多いので、一人でバーに入るのも抵抗はない。会社に夜9時過ぎまでいることが多いので、その時点で飲みに誘う人がいないのも一人で飲む理由。」と話す。一人で飲みに行く背景には、女性のワークスタイルが大きく影響しているようだ。

 店側からすると、話しかけて欲しいのか欲しくないのか、どちらのパターンの客なのか見極めるのは難しい。あるバーテンダーによれば、「一人で来られるお客様と少し会話をすると、あまり話しかけられたくないんだなぁとか、今日は話し相手が欲しいのかな、とか分かってきます。」とのこと。女性が一人で気持ちよく過ごせるようにするには、店側がその希望を瞬時に見極める力を持つことが大切のようだ。


【取材・執筆】  村田 麻未 (むらた あさみ) 2010年5月14日執筆