・お通しで出す枝豆の浅漬けお代わり自由が好評
さて、不況で消費者のお小遣いも減る中、居酒屋もそれに対応して、300円以下の均一料金居酒屋が増えている。
しかし、低料金の均一価格の店も増えすぎて、差別化が難しくなってきた。そこで新たなサービスとして、無料の試みが始まっている。
お通しの「枝豆」お代わり無料という、新しいサービスで好評を博してしているのは、「北海道厳選素材 新鮮炙り焼き居酒屋 はなこ」である。
「はなこ」神田店 看板。
「はなこ」神田店 店内。
いわゆるおへそを出したミニスカートのセクシーな衣装で女性が接客する、ガールズ居酒屋の草分けで16店を首都圏中心に札幌、大阪にもチェーン展開しているが、最近は似たような店名、コスチュームで営業する店が増え、さらなるパンチのある企画を打ち出して明確な優位性を示す必要性が出てきた。
まず「はなこ」では、お通しを見直すことに手を付けた。従来、さまざまなお通しを提供してきたが、顧客には料理の好き嫌いがあって、万人に喜ばれていたわけではなく、食べ残しも多かった。そうした中、枝豆は嫌いな人が非常に少なく、これに絞ることにした。
とはいえ、普通に枝豆を出しても、インパクトがない。独自の商品開発でオペレーションも簡略化できる。
そうして商品開発を行い、4月1日より全店で「枝豆の浅漬け」をお通しに統一。塩茹での従来の枝豆とは異なる独自の「やみつき枝豆」と称し、話題性を持たせるため、何回でもお代わり自由とした。最初に出す量は、70gと控えめとし、お代わりを前提とした。
お通し食べ放題は確かに画期的であるが、こればかりをお代わりされたら、料理の注文が減って単価が取れなくなるのではないだろうか。その点が引っかかったので、質問してみた。
「90分飲み放題1780円とお通しだけで、全然OKなんです。月に1度しか来れなかったお客様に2回、3回と来ていただけるのなら、来店頻度が増えるほうを選びます。居酒屋に行ってお通しに期待する人は、ほとんどいないでしょうから、インパクトが大きいです。
お代わりする時に、お客様は女性スタッフを呼びますから、会話できるいい機会にもなります」と、運営会社のセクションエイト・商品開発部長、片岡竜也氏。
つまり、単価が落ちても、顧客が女の子とコミュニケーションできる切っ掛けをつくれば、来店頻度が上がるという算段だ。
なお、「はなこ」の飲み放題プランは、90分1780円で生ビール(プレミアムモルツ)、焼酎、酎ハイ・サワー各種、ハイボール、ワイン、ソフトドリンクが何杯でも飲める。これだけでも十分楽しめるが、さらに500円を足して2280円なら、本格焼酎、地酒、カクテルなども飲み放題になる。生ビール1杯の値段が600円なので、3杯以上飲むなら、飲み放題のほうがお得になる料金体系だ。
顧客の98%がビジネスマンを中心とした男性だが、7〜8割が飲み放題をオーダーするという。
そのほか4月から、月曜は全種類のドリンクが1780円で飲み放題、火曜から金曜は18時までに入店すると60分980円で全品飲み放題、土曜日は一部店舗で女の子とジャンケンなどミニゲームをして勝てば飲み放題が120分に延長または宴会が120分から180分に延長、日曜と祝日は一部店舗でドリンク全種類200円と、デイリーの割引イベントを実施して集客力アップをはかっている。
毎日ある、「はなこ」のイベント。
また、ツイッターで様々なお得な情報をつぶやいており、各店による独自の割引サービスなども発信している。
このように、お通しお代わり無料をはじめとする、さまざまな割引サービスでリピートを取っていく戦略の「はなこ」であるが、同時にメニューの強化を行っていることにも注目したい。
何度もお通しをお代わりする人は実際は少なく、ほとんどの人は1回だそうだ。
幾つかメニューをピックアップしてみると、一番人気の北海道らしい「ラーメンサラダ」(780円)、中がレアになっている「北海トロサーモンカツ」(780円)、北海道の定番家庭料理「若鶏のザンギ」(680円)など、「はなこ」でなければ味わえない魅力あるものを開発してきている。
「ラーメンサラダ」 780円。
「北海トロサーモンカツ」 780円。
元々、丁寧で気が利いた接客には定評があったが、料理の面でもお通しだけで帰られないように対策は考えられている。フリーの部分と、料金を取る部分、両方のバランスが考慮されているのが、ポイントである。