・苦労すればノウハウは残ると、独自資本を選択
日本貿易振興機構JETROによると、中国の2000年の1人当たりのGDP(国内総生産)は946ドル。それが、09年には3566ドルにまで上昇。10年間で3.8倍となっている。
中国の総人口は13億人。その1.5%に当たる約2千万人が月収10万元(約130万円)の「富裕層」と言われている。その次の月収5万〜10万元(約70万〜130万円)の層は全国で5千万人と推定されている。
中国の外食市場は、都市部で共働き家庭が多く、経済発展とともに外食への依存度が年々高まっている。1988年には238億元(約3200億円)だったが、上海万博の今年2010年には2兆元(約27兆円)に達すると言われている。日本の外食市場、2009年の24兆円を抜く見込み。この伸長目覚ましいマーケットを狙って、「マクドナルド」「ケンタッキーフライドチキン」「スターバックス」など米国の外食チェーンが攻勢をかけている。
この中で、関氏は和食店の開店を目指した。まずは、進出方法。FC供与、合作・合弁、独資の3つの方法がある。
関敏氏(株式会社ROI 取締役)。
「FC供与」とは、中国企業にカントリー・フランチャイザー権を与えて展開するもの。最も苦労する現地化と政府交渉が容易になる。売上高1位の百勝飲食集団は、2007年売上高3440億円。「ケンタッキーフライドチキン」を2100店以上、「ピザハット」を350店以上展開している。また、中国で300店以上展開する日本の味千ラーメンも中国企業へのFC。中国人で日本食と聞くと大多数が「味千ラーメン」と応える有名ブランド。しかし、日本が中国からもらっているFCロイヤルティは2億円程度と低い。ロイヤルティを低くして中国での店舗数を増やしてもらい知名度を高めて、世界に打って出るのが戦略という。
「合作・合弁」は、中国企業と合弁会社を作り展開するもの。立地開発などのノウハウを自社内にも蓄積できるメリットがある。「和民」は合弁企業を作り、香港で10店以上を展開。その100%子会社を中国深セン市に置き、2005年1月に同市内に中国本土1号店を出店させた。現地企業と折半出資で展開。非常に良い立地に出店している。合弁相手は日本の「和民」で働いた方という幸運に恵まれた。しかし、ある日本のラーメンチェーンは中国の大手チェーンと合弁を組んだが、上手く行かず撤退した例もある。追加投資はお互いの比率で投資しないといけないルールだが、ところが、その金をこっそり合弁ではない自分の業態に使っていた。信頼できるパートナーがいないと怖い。
「独資」とは、外国資本が100%の有限責任会社を設立し展開するもの。メリットは自社判断なので経営の方向転換が容易にできる。2003年に自由化されて日本から最初に独資で入ったのが「サイゼリヤ」。中国人が普通に食べるラーメン9元と同じ値段で出したら、大行列が出来た。原価率は60%。絶対に中国に広めるんだと強い意志を持って、セントラルキッチンを作り、店舗数を増やしていけばそのうち儲かると考えた。独資だから意思決定が出来たこと。
関氏は、信頼できるパートナーも見つからず、中国で外食以外のビジネス展開も計画していたので、ノウハウを独自に貯めたいと、独資を選んだ。大変な苦労が予想されたが、ノウハウを手に入れることを優先した。