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キラキラ輝く蕎麦屋を作る。
〜蕎麦屋がキラキラ輝く日本を作る!「しのぶ庵」三代目の使命〜(4−4)
大橋 正伸氏 有限会社エムアンドエムフーズ 代表取締役

2010.6.10
お客様もスタッフも年配のイメージが強い蕎麦業界。関西の商業施設で蕎麦屋など10店舗を展開する「しのぶ庵」三代目、大橋正伸氏。彼は蕎麦のルーツは大阪にあるという。その大阪から蕎麦業界の活性化に向けて、全国に呼び掛けを始めた。4回シリーズの第4回目。レポートは安田正明。


スタイリッシュな「しのぶ庵」。

キラキラ輝く蕎麦屋を作る

 4年後には米国ロサンゼルスで、蕎麦、天ぷら、日本酒の店を開店させるのも夢だ。今年は、さらに4店舗の出店が決まっている。7月に「しのぶ庵」のうどん版。大阪の名物「かすうどん」をメインとする。8月にはホテルから要請されて、難波にスペインバルを出店。そして、あべの再開発では蕎麦「しのぶ庵」も出店する。

 そして、蕎麦業界を活性化することが大橋正伸氏のテーマだ。

「蕎麦屋では自家製粉や農家と提携したりとこだわる方はいますが、業界の活性化を目指し動いている人は少ないです。蕎麦屋は閉鎖的で群れない。業界の人達も年配の方々が多く、新しい改革は難しい。僕は職人じゃないから新しいことができるんです。まずは大阪で連合体を作って、それを全国に広げたい。」


鴨南蛮蕎麦。

「昔の大阪の商売人の話を聞きました。昔の商売人は自分達で儲けたお金の一部を集めて橋をたくさん作った。橋を作ったのは、国とか府ではない。通天閣も皆で作った。その話を聞いて体が震えました。これからの時代、絶対にこの考え方が必要だと思いました。今の若い者はすぐに東京行く、その編集長の表現ですが、六本木ヒルズに住むなど、自分の事しか考えていない。これからはそれではダメ。東京に行ってもいいが、本社は大阪に残して生まれ育った町に税金を落とさないとダメ。地方はどうなるの?」

「ウチのスタッフは年配の人が多い。27歳で会社に入った時も専務なのに一番年下。自分より若い人と仕事をしたいとずっと思ってきました。今は僕より年上と年下のスタッフが半分半分。不景気の時代だからこそ会社を元気にするために今年は初めて大卒の新卒を10人採用しました。でも、蕎麦屋で働きたい人はいません。僕は学生達に、どんなフィールドでも関係ない。自分で道筋を見つけてる子ならいいけど、分からない子の方が多い。会社の社長の考え方、方針と響くところで仕事するのが正解だ、といつも言ってます。響いた子たちに、ぼくと一緒に夢追いかけないか、と声をかける。」

「このままでは、蕎麦屋を継ぐ人がいなくなる。ダサいし、いやになる。それをカッコ良くしたら、やりたいと思ってくれるし、親父を追い越してやろうと思ってくれる。」


スタイリッシュな「しのぶ庵」。


店内。

「やっている人がキラキラしてない。どんな業界でも大人が誇りを持ってやればカッコイイ。大人がキラキラしたら、若者は目標としてくれると思うんですよね。今の大人はあきらめている人が多く感じます。もう無理、俺なんかできない、という人が多すぎると日本が沈没してしまいます。」

「これからは、勝負の時代じゃなくてWin-Win-Win(三方良し)の関係です。いっしょに盛り上がりたい。」

 うどんは讃岐うどんブームで息を吹き返したが、蕎麦は重みがあり過ぎて手を付けにくいのが現状だ。蕎麦業界も小規模店が多くまとまりにくい。経営者としても顧客としても若者が離れてしまっているのが現状。蕎麦文化が消えないためにも、蕎麦業界の活性化を目指す大橋氏の活動をバックアップしていきたい。


■大橋 正伸(おおはし まさのぶ)
有限会社エムアンドエムフーズ 代表取締役。1971年生まれ。大阪府出身。証券会社、米国ロサンゼルスでの語学遊学中のSUSHIレストラン勤務を経て、1997年に父親が経営していた同社に専務取締役として入社。2001年に代表取締役に就任。コンサルティングと映像製作を行う株式会社大橋家の代表取締役も兼務。社会貢献活動にも熱心で、大人が本気で夢を語れる文化を創るNPO法人大阪維新会を2008年に立ち上げ、理事長を務める。

有限会社エムアンドエムフーズ
株式会社大橋家
NPO法人大阪維新会
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【取材・執筆】  安田 正明 (やすだ まさあき) 2010年5月17日取材