フードリンクレポート


治安や法律を守ってくれそうな商業施設に出店。
〜ROI主催「中国進出セミナー」進出編〜(4−3)
関 敏氏 株式会社ROI 取締役

2010.6.11
「ファンくる」「グルリザ」でお馴染みのROI。その取締役、関敏氏が中国進出セミナーを5/21に開催した。関氏は大手コンサルティング会社出身。同社が中国進出を決め、2003年、中国シンセンにて300席の和食店をオープン。月商300万円を2100万円にまで育てた。現在の中立的な立場で、中国市場で外食を成功させるノウハウを語った。4回シリーズの第3回目。レポートは安田正明。


上海の「サイゼリヤ」。

治安や法律を守ってくれそうな商業施設に出店

 まずは、業態を決めて、物件選びをスタートさせた。

 中国人からすると客単価100元を超えるとハレの日向けの店とされる。「味千」、「サイゼリヤ」は現地人をターゲットとし、「和民」は現地人も来れる100元ギリギリに押さえている。日本人駐在員向けは高単価を獲れるが、マーケットは非常に小さくなる。チェーン化は難しい。現地人をターゲットに、一歩先を行く業態を作ろうとした。客単価は100元を少し超えたところ。これを業態コンセプトとした。

 中国人への調査によると、飲食店への重視項目は、1位「衛生」、2位「健康」、3位「味」、4位「サービス」、5位「雰囲気」。日本では「味」がトップに来るが、中国では露天商の不衛生さが問題になっており、「衛生」がトップ。

 そして、入りたいレストランは、1位「FCもしくはチェーン店」、2位「大きなスペースを持った店」、3位「雰囲気の良い日本食を提供している店」。

 お金を持っている人は変なことをしないだろうという考え方があり、FCやチェーン店が人気となる。大きな店も金持ちでなければ出せないだろうと考える。また、お金持ちは外国の知識が入ってきて、健康に気を遣うようになる。日本食はヘルシーというイメージが定着し、「雰囲気の良い日本食を提供している店」が3位に上がる。但し、最近は上海で30坪の焼鳥店が支持されるなど、状況も変わってきているようだ。

 関氏は、ターゲットは年収6万元以上の「ネクストリッチ」とし、大きな物件を探した。

 中国の物件は、家賃が毎年30%上がるとか、契約途中で出ていけと言われたり、水道管やガス管が引かれてないなど日本では考えられないクレームがある。大家が強くてなかなか解決しない。そこで、治安や法律的に守ってくれそうな商業施設を選んだ。深センには、「和民」の入る華潤万像と、ジャスコ1号店でトウ小平の娘がオーナーの中信広場という2つの商業施設がある。

 しかし、実績がないと商業施設の物件に入ることは難しい。飛び込みはありえず、ツテを頼って紹介者を探した。華潤万像に力を持つ不動産屋が台湾にいると聞きつけ、訪ねて接待により1次面接をクリア。施設の上長を紹介され、プレゼンを気に入ってもらって、隠し物件を入手することが出来た。

 家賃交渉は、建前と本音で価格が異なる。300坪で、坪1万8千円、合わせて540万円。リーシング料は12%。深センの不動産相場は坪1万7千円〜3万円がざら。これを粘り強く交渉して、坪1万2千、合わせて370万円。リーシング料3年間免除を勝ち取った。中国人との交渉は言ってはいけないことはない。ダメもとで言った間が妥協点だと思った方がいい。ずうずうしいくらいがいい。

 物件交渉で覚えておくことは、
1) 建築面積と実効面積が異なる。公共スペースも含んだものが建築面積。実効面積は6割程に小さくなる。
2) 単位は㎡で、坪ではない。上海は1日単位の家賃。
3) 工事期間はフリーレントとしてくれる。
4) 敷金・礼金はない。保証金のみで戻ってくる。
5) 正規価格と実勢価格は相当変動する。


【取材・執筆】  安田 正明 (やすだ まさあき) 2010年5月21日取材