フードリンクレポート


老若男女が憩う、かっこいいファミレスを作りたい。
〜外食を超える悪ふざけ文化を創造する!IT上場社長が仕掛けるカフェビジネス〜(4−4)
家入一真氏 株式会社パーティカンパニー 代表取締役社長

2010.6.17
家入氏は個人向けレンタルサーバー事業を行う株式会社paperboy&co.(以下、paperboy&co.)を2001年10月に創業。08年12月にジャスダック市場に上場。IT経営者の間であこがれの存在だ。そんな家入氏は、今、IT産業から、正反対とも思われる外食産業に進出している。現在カフェ、レストラン6店を展開し、6月に渋谷1店、7月に渋谷1店と江の島で海の家を出店する。4回シリーズの第4回目。レポートは安田正明。


家入一真氏。

老若男女が憩う、かっこいいファミレスを作りたい

 家入氏は対人恐怖症からITの世界に進んだ。ところが今は、真逆の外食に情熱を注いでいる。

「IT業界では、指示出しや報告がメールで行われたりします。皆、淡々としてる。飲食の現場は、オレ納得できねえとか言うシェフがいたり、ホールスタッフも接客に対して熱かったり、人間対人間でゴリゴリ動いている。元々、会社作るまで対人恐怖症でひきこもっていました。人と会わないでできる仕事がいいなと、IT企業を立ち上げた。当初は皆、壁側を向いて仕事し、人間同士のぶつかり合いは避けてきました。」

「ハイスコアキッチンのオープニングパーティーではIT繋がりの仲間を呼びました。ITだらけ。店舗数が増える毎に、内装をやってる人、デザインや音楽をやってる人がITに交じってきた。色んな業種の人たちが仲良くなって、気付いたら一緒に何かやってた。それは素敵だと思いました。人同士の繋がりを自分の作った場所でやってくれ、僕はどっちも知っている。それが面白い。僕はスタートアップ企業20社くらいに出資しています。そういう人が繋がって面白がってくれる会社であればいいな。」

「6店とも黒字です。1店あたりの月商は400〜500万円。営業利益は平均15〜16%。今期は2期目で年商5億円を見込んでいます。ITでは売上高1億円で利益5千万円というのはよくある。でも、そこから積み上げができないまま終わる企業が多いんです。飲食業はポンポン出店でき、気付いたら5億円になっちゃう。これからは、スケールメリットを考えていかなきゃいけない。」

「かっこいいファミレスをやりたい。渋谷で7月にオープンするカフェは、ファミレスとしての使われ方をしてもらいたい、という裏テーマがある。地方に車で行ってファミレスに立ちよると、朝早くても遅くても、お客さんは若いも年よりも、男も女もバラバラ。コーヒーだけ飲んでる人もいれば、がっつりハンバーグを食べている人も。すごい皆バラバラで、これが本来のカフェなんじゃないかと思います。海外のカフェはそんなよい意味でのミックスされた雰囲気がある。使われ方としてのファミレスにポテンシャルを感じる。かっこいいファミレスは展開できないかな、と。ゆくゆくはホテルをやりたい。」

「カフェはフラットな存在で、多様性を受け入れられる業態。色が付かない方がいいんです。老若男女入れる。でも、ハイスコアキッチンのようにお腹一杯になれるとか、一言で言えることは大事かな。居酒屋、焼鳥は想像つかないですが、カフェ、カフェレストラン など自分も腑に落ちて周りも納得できるのもなら増やしていきたい。エッセンスとして何かしら悪ふざけできるならいいのかな。」

「悪ふざけ文化創造企業と言ってますが、でもまだワルじゃない。もっと悪ぶっていかなきゃいけないかな、笑。宇田川コロニーと、江の島に作る海の家がちょっと悪。宇田川コロニーは本格和食ダイニング&バー。懐石料理の料理長が入ってくれました。床に砂利を敷きつめて、ハイヒールの女性のために飛び石を設けた。壁にはストリート系のペイント。東京のミックス&カオスな感じが出れば面白い。海の家は2区画を借りてカフェスペースとラウンジスペースに分けて色んなイベントを考えています。」

「飲食以上のものを見て今やっています。ビジネスだけ見ると割のいいものがいっぱいある。楽しいし新たな繋がりを作ってくれて、お金以上のリターンがあります。」

 家入氏はIT業界からやってきた外食経営者。それも、外食に限らず、彼が出資するアパレルやアートなど様々な事業を繋げて、食にとどまらない新しい文化を創造しようとしている。外食市場に新しい波がやってきた。


■家入一真(いえいり かずま)
株式会社パーティカンパニー 代表取締役社長。1978年生まれ。福岡県出身。2003年、株式会社paperboy&co.を創業、代表取締役社長に就任。08年、ジャスダック証券取引所に上場。代表取締CCOを経て、2010年、取締役に就任。同年、悪ふざけ文化創造企業、株式会社パーティカンパニーを設立。

株式会社パーティカンパニー


【取材・執筆】  安田 正明 (やすだ まさあき) 2010年6月1日取材