・名古屋に“ピンポン”は必須
「焼肉屋さかい」は1993年、ロードサイド型焼肉店として岐阜市に誕生。翌年にはFCをスタートさせ、1999年には直営・FC合計100店を達成し、株式の店頭公開を果たす。その後、BSEの影響で業績が悪化。2007年、株式会社ジー・コミュニケーションがTOBにて株51%を取得し、同社子会社となった。
緒方氏は2007年、ジー・コミュニケーションの買収とともに、さかい社長に就任。緒方氏は「牛角」の株式会社レインズインターナショナルにて、マーチャンダイジング部門で頭角を現した人物だ。東京からさかい本社のある名古屋に住まいを移している。
インタビューは、東京と名古屋の違いから始まった。
「名古屋に住んで3年経ってようやく、名古屋の特殊な商売が分かってきました。前職の時は名古屋市場が分かりませんでした。名古屋と東京ではお客様の求めていることが違うんです」と緒方氏。特に客単価3千円あたりから違ってくるという。
緒方 智氏。
「名古屋では“ピンポン”(ページャー)がほとんど全店で置いてあります。東京は無い方が多いですね。私自身はサービスを悪くする諸悪の根源と思っています。でも、名古屋では必須なんです。東京では注文し忘れたものがあると、ドリンクを持ってきた時に追加を頼みます。名古屋は言い忘れたらすぐにピンポンと押すんです。社長就任時はピンポン撤退のつもりで行きましたが、今も置いてあります。一度撤去しましたが、お客様がフラストレーションを感じるようで、だいぶクレームを貰いました。ピンポンを使って大きくなった会社はない、が持論でした。でも名古屋はなくちゃだめ。」
「食べ放題にすると食べる量が名古屋だけ違います。東京のデータで組み立てると全部原価割れしちゃう(笑)。例えばしゃぶしゃぶ食べ放題だと、東京は肉350gですが、名古屋は450g。3割増。しかも、名古屋は肉をひたすら食べ、野菜はおかわりしない。東京はバランス良く食べる。全国チェーンのビュッフェスタイル店はどこも名古屋だけ原価割れじゃないでしょうか。」
「サラダバーのルールも守っていただけない方が多い。家族連れのお客様に、全員で頼んで下さいと言っても、1人分だけ頼む。注意してお客様とトラブルになることも多かった。今は、6歳以下は無料、12歳以下は199円と安く設定して、これで頼んでくれる確率が高まりました。従業員も食べ回しをされるとフラストレーションを抱えて、気持ちよく接客できなくなるんです。どこかイチモツを抱えたままサービスして、お客様も従業員が来たから隠さなきゃ、という気持ちで食事をしてもらうよりも、6歳以下なんて無料で食べさせちゃえと考えました。」
「大阪と京都も違います。京都はビジネスをするのが厳しい。単価と求めているものがお客様の中でちゃんと基準がある。それを上回らないと流行らない。手を抜くと見透かされます。お客様がよく知っています。京都には3店ありますが、難しい市場なので4店目がなかなか踏み出せません。」
「大阪は自分たちが得意なものは、店より詳しくて凄いこだわりを持っていますが、知らないものは全くこだわりが無い。それをうまく組み合わすのがコツだと思います。カルビとロースの比率も違います。カルビを10とすると、ロースは東京3〜4、京都5〜6、大阪7〜8という感じです。」