・内装、シェフ、バーテンダー、マネージャー、海外修行
現在、13店の直営店、3店のFC店舗の運営を手がける株式会社スパイスワークス。もう一つの大きな柱である内装の設計施工は年間、100軒を優に超える。設計担当者が4名いて、「建築業の許可票」を持っているので、500万円以上の案件も扱える。そのため、商業施設のようなスケールの仕事も請け負うことができるのである。
「職人の集まりなんです。だから、パッケージとして業態提案をして、施工して、後はお任せする。そんなパターンも多いです。でも、そんな中で、これもやってね、次もお願いねって、先につながっていく。要は飲食の何でも屋。そんな流れで店舗数も増えています。」と代表取締役社長の下遠野亘氏。
2007年12月に恵比寿店がオープンした『馬喰ろう』はまさにそのパターン。一つうまく行くと、次も、となって4店舗を1から10までお手伝いし、その流れが継続している。そして、そのプロデュース対象は1店舗に留まらない。今や同社は横丁形式の複数店舗が入る商業施設プロデュースで名を馳せている。
「馬喰ろう 恵比寿」外観。
でも実は、下遠野氏のキャリアのスタートは、製図の専門学校卒業後入社した工務店。義理の父が建築関連の会社を経営し、家族皆が建築業に関わるという建築一家の影響もあり、将来は自分の店を持ちたいという夢を抱きながら、飲食店の内装も手がけていたその工務店で、飲食店の施工に携わることになる。ちょうどバブル崩壊直後で、まだ日本がバブルを引きずっていた時代。お金をかける内装工事もまだ多く、毎日現場に泊まり込んで仕事をし、猛烈に働き内装の仕事を覚えた。
「馬喰ろう 恵比寿」店内。
そんな中で結婚をし、店を持ちたい、内装をやりたいという夢をかなえるため、25歳の時5年程務めた工務店を辞めて海外への修行に出る。最初は、イタリア。でも数ヶ月で帰国することに。「ピザの勉強をしに行ったのですが、何かやりたかったことと違うと感じました。イタリアは素材がいいんですよね。素材が全てというか。そこで、今度はビストロへ。ざっくりとした中に味があるじゃないですか。」
そして、28歳の時、今度はオーストラリアはシドニーへ旅立つ。地元有力紙の評価も高い「Longrain」「Pig&olive」を始め、わずか1年半程でシェフとしてチーフまで上り詰める。英語もままならない状態だったが、そこは腕が勝負の料理の世界。「当時は給料を結構もらっていましたね。日本に残してきた家族に仕送りをしながら、シドニー郊外のタワーマンションに住んでいましたから。」月給60万円をも稼ぐ高給取りだった。
帰国後、今度はバーの技術と経験を積むべく、カーディナスの店舗でバーテンダーとして勤務。その後、他社でゼネラルマネージャーをも経験。施工、シェフ、バーテンダー、マネジャーと、飲食店を一から作るために必要な経験と知識をまさに全て着実に身に付け、満を持して2005年に初店舗「仕事馬」をオープンする。