フードリンクレポート


馬を釜で焼き、肉屋の飲食業態を開発&パッケージ化。
〜内装、業態提案、横丁運営まで。「職人集合体」で急成長〜(4−2)
下遠野 亘氏  株式会社スパイスワークス 代表取締役社長  

2010.6.24
馬肉料理から始まり、魚貝ビストロ、鉄板焼き、そして「神田ミートセンター」、「品川魚貝センター」などの横丁業態を次々と成功させてきた株式会社スパイスワークス。建築業ならではの強みを活かした業態開発力で多方面へ展開中。4回シリーズの第2回目。レポートは村田麻未。


馬肉の釜焼きから始まった。

馬を釜で焼き、肉屋の飲食業態を開発&パッケージ化

 今から4年8ヶ月前最初にオープンさせた店舗は、「仕事馬」。馬肉と釜焼き料理が売りの店。今でこそ馬肉を扱う店が増えたが、その当時はまだ珍しく、ましてや洋風の馬肉料理を出す店はほとんどなかった。そんな店を出すきっかけとなったのは、下遠野氏の海外の経験からだ。


「仕事馬」(水道橋)


「仕事馬」店内。

「友人から300万円もするピザ釜を貰ったんですよ。でも、ただピザを焼いていては面白くない。イタリアでは、ポルケッタいう、豚肉を釜のおき火で焼く料理があるんですが、それがとにかくうまい。そこで肉を焼きたいなと。そして、日本ではあまり食べられていないけど、ヨーロッパではよく食べられている馬肉を焼こうかと思ったんです。特にフランスではよく馬を食べるんですよね。でも、フランスっぽく出す店は日本にはない。ちょうど友人が肉の卸しをやっていて、会津産の馬肉を扱っているというので。何より自分が肉が好きですし。」

 下遠野氏の修行時代の経験と知識が実を結び、「馬肉を釜で焼く」という新しいスタイルが誕生した。

 馬肉は、流通量が少ないので、肉屋とのつながりが大切になってくる。特に最近は、馬肉を扱う店が増えたのと、主要産地であるカナダの馬肉の生産量が減っているために、いい部位の取り合いが起きている。


「仕事馬」の「桜肉の刺身」。

 そんなつながりの中で、実は肉屋に飲食店をやりたいとニーズがあることを知る。「食材だけでなく、店舗を持つというエンドまでやりたくなるのでしょうね。でも、表に出るとクライアント(飲食店)と競合してしまう。そこで、うちが肉を扱う飲食店をパッケージ化して提案することになったんです。このやり方にはこちら側にもメリットがあって、メニュー開発までお手伝いするケースでは、肉屋ならでは肉の使い方を教えてもらって、自分たちの店のメニュー作りにも活かせるからなんです。」

 肉を扱う業態を集めた横丁「新橋ワールドミートセンター」では、新たな設備として施設内に肉の熟成スペースとストックスペースを合体させたミートセラーを作り、そこで肉を販売することができるという仕掛けも。卸しも直接商売ができ、ストックスペースとしても活用できるという。

 新たなパートナー、業態モデルは身近な所にあり、それに気付いてうまく形にしてきた同氏である。


【取材・執筆】  村田 麻未(むらた あさみ) 2010年6月10日取材