フードリンクレポート


生き残るためには、マーチャンダイジング力。
〜低価格「大阪カルビ」がヒット。高価格焼肉にも逆張り。〜(4−4)
緒方 智氏  株式会社さかい 代表取締役社長 

2010.6.24
「焼肉屋さかい」など154店(直営83店、FC71店)を展開する株式会社さかい。BSEで業績は苦しくなったが、2007年から業績が回復し、昨年4月に開発した低価格焼肉「大阪カルビ」がヒット。不振店を次々と業態転換させている。さらに、低価格トレンドに逆張りした高価格焼肉「ほまれ」を3月に東京・自由が丘にオープンさせた。マーチャンダイジングに差別化を求める緒方氏を取材した。4回シリーズの第4回目。レポートは安田正明。


ロードサイド型鶏料理店「とりバックス」。2002年開発だが、再構築して今好調。

生き残るためには、マーチャンダイジング力

「社長になった時は倒産寸前でした。有利子負債は60億円ありました。BSEで会社の業績がどんどん悪くなり、他の投資もダメ。店は疲弊し、それを直す金もなかった状態です。そこから立て直して、2年間で40億円を返済しました。」

 緒方氏は、ジー・コミュニケーション傘下で当時の稲吉会長の信頼が厚かった。

「僕はある程度自由にやらせてもらいました。95%くらいのジャッジ権をもらっている感じです。商売は逆張りと思っています。その次は何がくるのか見据えて、勇気を持って取り組む。新体制になりましたが、業績さえしっかり残せば、何もマイナスはないと思います。」

 2002年に開発したロードサイド型鶏料理店「とりバックス」。それを再構築して今年1月にメニュー改定。大阪・堺市の堺泉北の巣店では5月に1150万円を売上げ好調だ。


「とりバックス」 鶏五目釜飯 税込714円。


「とりバックス」 つくね串 1本税込168円から。

「そこそこのクオリティの店が郊外に無くなっています。みんな安売りに走っちゃった。50店とかはいけると思います。今はチェーンで何百店を求めちゃいけない。大阪では大阪カルビが当たらないので、さかいと、とりバックスで攻めていきます。」

 ジー・コミュニケーショングループは買収で大きくなってきた。今後の成長戦略も買収だ。


ジー・コミュニケーショングループは、銀座にオフィスを持つ。

「買収案件は、ジー・コミュニケーション側で決めています。その後で、どこの会社でターンアラウンドするか、決定します。牛肉関連はウチに来ます。今後は買収した企業をターンアラウンドして成果が出せた会社だけが残ると思います。シナジー効果は仕入れくらいです。新しく買収した時にグループ各社からの選抜メンバーが立て直しにいきます。ウチは人的な層が厚いので、各社から1人ずつ抜いても耐えられます。」

「通常の買収は、やりたい業態があって、それを買ってくる感じです。やりたいが先。ところがウチは、買収案件が来たら改善できるか、黒字にできるかだけで判断します。やりたいは無関係です。仕入れのシナジーとか全く考慮しません。雑念が入るそうです。買うか買わないかは黒字化できるかどうかだけ。」

「最後に残る外食は他社とは違うマーチャンダイジング力がある企業です。参入障壁になるくらいのものを作らないと勝てません。それができるためには量が必要。そしてそれをコントロールできる会社です。大きな商社と喧嘩するためには、仕入れ金額で1000億円は必要です。つまり、売上高で3000億円。それができる企業が最後の勝ち組です。」

「末端売上3000億円が目標。そこまで出来たら全然違うぞ、というのが僕の持論。外食でトップを目指すならそこぐらいにいかないと。ケンタッキーフライドチキンのように専門性を追求して他の追随を許さないか、居酒屋みたいな参入障壁が低い業態は他社では真似できないシナジーを出さないと生き残れません。」

 ジー・コミュニケーショングループで外食売上高3000億円を達成して、大手商社とも互角で交渉したいと緒方氏。その背景には、レインズ時代にマーチャンダイジング担当者としてなしえなかった夢の実現を目指している。


■緒方 智(おがた さとし)
株式会社さかい 代表取締役社長。1969年生まれ。 東京都出身。1993年、ハーゲンダッツジャパン株式会社入社。2000年、レインズインターナショナル株式会社入社。2002年、レッドロブスタージャパン株式会社 常務取締役就任。2004年、株式会社コスト・イズ代表取締役社長就任。2007年、株式会社さかい代表取締役社長就任。

株式会社さかい


【取材・執筆】  安田 正明 (やすだ まさあき) 2010年6月7日取材