フードリンクレポート


初業態ならではの苦労と「けん」業態との住み分け。
〜「とんかつとサラダバー」で挑む“ロードサイドの雄”の新たなる挑戦〜(4—3)
中村 嘉利氏 株式会社エムグラントフードサービス 専務取締役

2010.6.30
ロードサイドの居抜き店舗で「ステーキハンバーグ&サラダバー けん」を展開し、急成長した株式会社エムグラントフードサービス。今度はとんかつとサラダバーを組み合わせた新業態「とんかつ&サラダバー よしかつ」をオープンさせた。メイン+サラダバーというヒットの方程式誕生の裏側、今後の展開に迫る。4回シリーズの3回目。レポートは村田麻未。


「よしかつ」 外観。

初業態ならではの苦労と「けん」業態との住み分け

 とんかつの調理は同社にとって初めての挑戦。当初オペレーションにはいくつもの問題が出てきたという。「二度揚げするなど、あらかじめ揚げておくことはしたくありませんでした。でも、弱火で揚げ、強火で色をつけて、油をきる・・・と一連の作業には結構時間がかかり、オープン当初はお客様を長く待たせてしまうケースも出てしまいました。しかも、肉がピンク色だと火が通っていないとクレームになることも。きちんと温度は測って提供しているので70℃以上になっているはずですが、お客様的にNGなら仕方ありません。揚げ直しすることもしばしばありました。そこでも時間的なロスが出ていましたね。」


ヒレカツが贅沢に4枚載った「黒豚のたっぷりヒレかつ」(2205円)。

 しかし、救世主になったのは老舗とんかつ店から移ってきた調理スタッフ。彼の持っていたノウハウと職人としてのこだわりをうまく活かして、オペレーションと両立できた。「ノウハウを教わったので、あとは私が仕組みを作ります。」と中村氏。その結果、クレームもほとんどなくなり、調理時間も一気に短縮されたという。


「はみ出るチキンかつ ジャンボサイズ」(1449円)は原価も抑えられ、人気もある一品。

 客層については、「けん」とかぶるケースが少なくないという。「『けん』と同じ会社だというアピールは何一つしていないのですが、報道の影響もあるのか、『けん』サービス券を持って来られるお客様がいたりします。リピート率も高いと思います。オープンしてまだ1ヶ月足らずですが、既に週4回もいらっしゃる常連の方までいます。」

 男女比で見ると、かつという業態にもかかわらず、女性の方がやや多いという。特に昼間の時間帯は女性が多い。「ドリンクバーがあるので、ランチに来た奥様方が食事を済ませた後、ドリンクバーでゆっくりおしゃべりというパターンは多いですね。2時間〜2時間半くらいの滞在時間でしょうか。夜は、若いファミリーが多く、ガテン系の若者も来てがっつり食べていきます。週末は、同じく若いファミリーが多いですね。」と、「けん」とかなり近い。

「けん」と単価も変わらず、立地もロードサイドで近い場所に「けん」がある。そんな中で双方を訪れるお客が多いというのは、うまく業態としての住み分けができているからに他ならない。その結果、「けん」のFCオーナーから「よしかつ」もやりたいというオファーが多く届いているという。


【取材・執筆】  村田 麻未(むらた あさみ) 2010年6月17日取材