フードリンクレポート


電子メニューにミニゲームや厨房の動画を連動させる。
〜座談会:話題のiPadで外食をブラッシュアップする〜(3−2)

2010.7.1
5月28日の発売日には長蛇の列ができるほどの盛り上がりを見せた、アップルのタブレット端末「iPad」。起動が早く、直感的に使えるところが人気の秘訣のようだ。では、その「iPad」を使って外食はどんなことができるか。売り上げアップにつながるか。「iPad」ファンである4人のアイデアマンに集まってもらい、座談会を開催した。3回シリーズ。レポートは長浜淳之介。
<出席者>
・金澤拓也氏(店舗デザイナー、株式会社カームデザイン 代表取締役)
・佐藤晃一氏(株式会社インサイド 代表取締役)
・宮田正秀氏(株式会社関心空間 代表取締役社長CEO)
・河内哲也氏(株式会社ダイヤモンドダイニング 執行役員企画開発部長)
<司会>安田正明(株式会社フードリンク 代表取締役)


金澤氏と佐藤氏が共同開発した、「売れ筋メニューゲーム」。

電子メニューにミニゲームや厨房の動画を連動させる

●安田
 回転寿司屋さんなんかでタッチパネルが活躍している店がありますが、タッチパネルを買うお金がないところでも、「iPad」なら買えるって感覚はあります。個人店向けなのでしょうか。

●金澤
 確かに大きなチェーンより、個人店向けかもしれません。タッチパネルは注文を取るツールって感じです。もちろん、その代わりにもなりますけど、ソムリエがいなくてもワインのことがパッとわかるとか。ワインの解説がずらっとあるだけでなくて、条件で検索してワインを選んでくれるような、コンテンツも考えられます。

●佐藤 
 ひまつぶしツールとして、ゲームで遊んでもらいながら個人情報が取れないかなと思っています。登録してもらって、コンテンツを使ってもらうわけです。

●安田
 カクテルを注文する場合は、写真で見えたほうがいいですね。言葉で説明されても、出てくるまではどんなものか、わからないことが多いですから。

●河内 
「iPad」の容量の多さに可能性を感じます。一つは、今は食の安全にお客様の関心が高いですから、食材をクリックすると生産者情報に飛んで、野菜をつくっている人の畑の写真が出てきて、人となりもわかるってイメージです。音声も出ますから、紙ではできないことを何かやってみたいですね。紙のメニューではなかなか、トレーサビリティまでは伝えきれないと感じていまして、そこをしっかりアピールできるようにしていきたいです。

●金澤 
 料理をつくっているところを「You Tube」で見せる動画コンテンツも考えました。実際にお見せしますと、こうやって厨房で炎が上がっているのが見れるんです。

●安田
 臨場感がありますね。シズル感が伝わってきます。

●河内
 これはいい。客席にいるお客様に、ちゃんと調理しているんだと伝えられます。ホールスタッフがお店のことを隅々まで知っているのを、期待するのは難しい時代になったと感じています。女の子が「iPad」の使い方を説明して、そこでお客様とコミュニケーションを取っていくのもありではないでしょうか。

●安田
 携帯電話や「iPhone」と違ってこのくらいの大きさになると、パーソナルユースという感じではなくなってきます。共有するツールなのでしょうね。

●宮田
 説明書が要らないですし、「iPad」のように直感的に触れてコミュニケーションの輪が広がるようなツールはかつてなかったと思いますよ。共有するほうが楽しいツールです。そこがポイントです。

●河内
 弊社では「龍馬の空」という幕末のストーリーが味わえる居酒屋をオープンしたのですが、「薩摩藩の部屋」に入った人が、もっと知りたければ西郷隆盛がどんな人物であるか略歴がわかる。西郷ゆかりの地が動画で出てくるとか、そこまでつくり込まないとダメないのではないか。オリジナルのコンテンツを充実させて、歴女の方にもっとお越しいただきたい。

●安田
 飲食店は接客業なんですけど、お客様と話をするのも、なかなか難しいってこともあります。テクニックが要りますもの。「iPad」を使ったアイデアってないですか。

●金澤
 従業員全員で飲みに行った写真や動画を載せておくと、そこから会話が始まるとか。飲食店って、従業員の女の子目当てで通うってよくあるじゃないですか。

●河内
「iPad」の凄さは、電車の中で触っていると、全く見知らぬ人から声をかけられることです。ツール自体の話題性が大きいです。今だけなのでしょうけど。もっと軽いパソコンもありますが、飲食店でパソコンを見ながら食べる行為は考えられないです。でも「iPad」は普通にカウンターに並んでいても、全く違和感がない。

●安田
「iPad」が飲食店に普及してくると、どこでもインターネットカフェみたいな感じになるような気がしてきました。

●河内
 2毛作店とか絶対に出てきますね。5時まではネット見たり、電子書籍で漫画読んだり、テレビ見たりするような場所で、5時以降は普通のバーとか。その店でしかダウンロードして見れない、すごく面白い漫画があったなら、その店だけが繁盛するといったようなことが起こってくるでしょうね。

●安田
 なるほどね。お店にわざわざ来させる理由を付けてあげないと、意味ないですね。「iPad」で読む電子書籍を教科書にしようという動きもありますから、普及してくるといろんな使い方が考えられます。


【取材・執筆】  長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年6月10日開催