・回転寿司3強の顧客満足度の高さは外食トップクラス
サービス産業生産性協議会(代表幹事:牛尾治朗・ウシオ電機会長)が3月21日に発表した、業界横断的な日本の主要サービス業29業界291社を対象に、利用者延べ10万人に聞いた、日本初の「JCSI」(日本版顧客満足度指数:Japanese Customer Satisfaction Index)の平成21年度版によれば、回転寿司大手3社、あきんどスシロー(「スシロー」ブランド主力)、くら寿司、かっぱ寿司がそれぞれ外食の1、2、4位を占めた。総合でもトップ20に入る高評価を得ている。
なお、外食のベスト3は、あきんどスシロー、くら寿司、サイゼリヤの順。4位タイは、かっぱ寿司と餃子の王将であった。
6、7、8位は、びっくりドンキー、すき家、モスバーガーで、ここまでが総合のベスト50位に入っている。
では、総合順位で見てみると、総合1位は東京ディズニーリゾート、総合2位はネット通販のECカレント。総合3位には、あきんどスシローが入った。
総合4位住信SBIネット銀行、総合5位シンガポール航空、総合6位ジャパネットたかた、総合7位アマゾン、総合8位ヤマト運輸、総合9位楽天トラベル、総合10位じゃらん、となった。
以下外食では、総合13位くら寿司、総合16位サイゼリヤ、総合20位かっぱ寿司と餃子の王将。ここまでが総合ベスト20に入った。
さらに、総合50位以内の外食は、総合30位びっくりドンキー、総合34位すき家、総合44位モスバーガーであった。
外食1位のあきんどスシローは、総合でも3位と、東京ディズニーリゾート、ジャパネットたかた、アマゾン、ヤマト運輸のような並みいる強豪の中に入って大健闘。くら寿司とかっぱ寿司も総合20位に入っており、回転寿司という業態自体の高い評価が際立っている。
あきんどスシロー、くら寿司、かっぱ寿司は、いずれも1皿100円(税込105円)均一の低価格路線、ファミレス型の大型店舗、タッチパネルの注文システムや寿司ロボットを導入した省人化システムと、似た面が多い自他共に認めるライバルである。
回転寿司も数あれど、この3社のみが突出している印象がある。
サービス産業生産性協議会によれば、「顧客満足を測る基準として、利用前の期待・予想、利用した際の品質評価、価格への納得感の3要素を掲げていますが、回転寿司3社については価格への納得感で、特に高得点を上げています」とのこと。
あきんどスシローの「価格への納得感」の指数78.7は、サービス産業全社1位である。くら寿司5位、かっぱ寿司9位であって、いずれもトップ10に入っている。
つまり、安くて旨いが、回転寿司3社の一般的な評価となっているのだ。
なお、この調査はそもそも、利用者の多いナショナルチェーンでないと、対象にならない。外食では、3ヶ月以内に2回以上利用したことがあるという条件が付いている。そうした、その店のファンに選ばれている理由が、「価格への納得感」であるというわけだ。
この結果を踏まえて、3社にどんな感想を持っているか、簡単なインタビューをしてみた。
あきんどスシローでは、「当社の原価率は50%近くと、外食の平均に比べ、非常にいいネタ、いいシャリを使っています。創業者は元々町の寿司屋でしたし、現社長の豊崎も弟子として寿司を握っていました。寿司はファーストフードだったという意識がありまして、努力すればこの価格でおいしいお寿司を食べていただけると、証明できたと思っています。お寿司は日本人にとってハレの食事ですし、家族で来てもここまでリーズナブルならインパクトが強いのではないでしょうか」(マーケティング担当)と、町の寿司屋出身である職人気質の社風と、原価率の高さを強調した。
スシロー 日野バイパス店。
スシロー なす田楽。揚げものは店内のフライヤーで調理。
たいていの回転寿司では、セントラルキッチンでネタを一度解凍し、スライスした後、再冷凍して各店舗に送られる。ところが、あきんどスシローでは、直接ネタを店舗に送って、店舗でスライスする。その工程が違う。天ぷらも店舗でフライヤーを使って揚げており、セントラルキッチンで揚げたものを電子レンジで温めて提供しているわけではない。
ネタや寿司ロボットの握り方のチェックも、職人である社長のチェックが入っているという。
一方くら寿司を展開する、くらコーポレーションでは、「全食材から化学調味料、人工甘味料、合成着色料、人工保存料を使わない無添の理念が、お客様にも浸透してきているのではないか」とのこと。
無添くら寿司 昭島駅前店。
くら寿司は、酢、醤油、マヨネーズなどの調味料も、食の戦前回帰、無添加の考え方のもと、独自に開発してメーカーに特別に造ってもらっているというほど徹底している。また、タッチパネルの導入も早く、ICチップを皿に埋め込んで長時間レーンに流れている商品を自動廃棄するシステム(最大55分)も、顧客にからよく知られている。
「ビッくらポン!」という食べ終わったお皿5枚を専用下げ口に入れれば、グッズが当たるゲームもあり、子供連れの顧客に喜ばれている。
無添くら寿司 タッチパネル、ビッくらポン。
無添くら寿司 ビッくらポンの景品はサッカーバッジ。
さらにかっぱ寿司を展開する、カッパ・クリエイトでは、「テーブル中心のファミレス形式にしてから、お客様が増えました。お寿司が回転するレーンの上に特急レーンがありまして、間違いなくお届けできる点で喜んでいただいています」と語る。
かっぱ寿司 小平店。
「特急レーン」とは、かっぱ寿司独特のシステムで、タッチパネルで注文した商品が新幹線の形をした器に乗って専用レーンで届く。従来の寿司が回っているレーンで注文品も一緒に流すシステムでは、うっかりした顧客の取り忘れ、取り間違えも多く、クレームもよく発生していたが、一切解消されたそうだ。しかも、エンターテイメントとして面白く、子供受けするのでファミリーの評判も良い。
また、特に鮮度が問題になるネタは、店内でさばいてスライスする魚もあり、おいしい寿司を提供する努力を続けている。
このように、1皿100円、顧客単価1000円前後といった中で、ここまでやるのかといったお値打ち感を打ち出しているのが、大手3社の強味なのである。