・3強崩しに挑むのはすき家、吉野家の大手牛丼系列店
あきんどスシロー、くら寿司、かっぱ寿司の3強以外は、総じて苦戦続きである。
現在はジー・テイスト傘下に入っている、回転寿司の元祖的存在「平禄寿司」は、130円均一をやめて皿によって価格の幅を持たせているが、今年3月決算によれば17.8%も売り上げが減って、約69億円となっている。
そこで、東北9店で100円均一の「奥羽寿司製作所」という新業態に変えるなど、再構築をはかっている。米、味噌、醤油を含め東北の地産地消にこだわっているようだ。「とんこつラーメン寿司」などといった、アバンギャルドなネタにも取り組んでいる。
また、元気寿司も今年3月決算で売上高8.3%減の約250億円である。そこで「魚べい」という105円均一の低価格業態を投入。かっぱ寿司とそっくりの特急レーンも登場している。また、寿司だけでは太刀打ちできないと考えたのか、セルフうどんにも進出して「釜や本舗」を立ち上げている。
一方で、3社に立ち向かい業界トップを狙おうと虎視眈々なのは、ゼンショーグループの「はま寿司」だ。全国に70店ほどある。
ゼンショーグループの「はま寿司」。
6月2日にオープンしたばかりの埼玉県新座市にある、新座野火止店に行ってみた。ゼンショーは今は関係を解消したが、かつてカッパ・クリエイトとあきんどスシローに資本を入れていたこともあり、回転寿司制覇への思いは強い。
新興の郊外住宅地と農地が入り混じるような場所にある店舗は、駐車場も広く、ドライブスルーで寿司がテイクアウトできるようになっていた。まるで「すき家」の寿司版だ。
「はま寿司」ドライブスルーのテイクアウト注文口。
「はま寿司」のこだわり。1はスシロー、2はくら寿司のこだわりでもある。
中に入ると、いかにもアルバイトといった感じのお兄さんが、一番手前のほうのカウンター席を指定。時間は午後3時頃で、ランチタイムは過ぎていた。空いているのなら、ゆっくりできるテーブル席がいいと頼んだが、「席はいっぱいで空いてない」と言われた。あとで、奥のほうを見てみたが、案の定ガラガラだった。1人で来たら必ずカウンターに座らせ例外を認めない、マニュアルどおりで融通がきかないあたりも、すき家の接客といった感じだ。
ネタは全国の漁港から届いたネタを店でさばいているそうで、セントラルキッチンを通さないなはスシローと同じ。また、注文品が近づいてくると、タッチパネルから「ご注文いただきました、商品が到着します」といったようなアナウンスが自動音声で流れてくるのも、スシローそっくりだ。
また、レーンに流れている寿司が、一定時間経過すると自動廃棄されるのは、くら寿司と同様なシステムである。
「えびフライ軍艦」、唐揚げ、プリンのようなメニューは、かっぱ寿司の影響が感じられる。
つまり、3強の店をいいとこ取りして、すき家のフォーマットと合体させたのが、はま寿司なのである。はま寿司が、牛丼ですき家が吉野家を抜いたような逆転劇を起こせるか、注目したい。
今は吉野家グループの傘下にある京樽だが、2009年12月期決算では、年商約270億円となり、前年の約315億円からダウンしている。不振の和風レストランを閉めて、100円均一の「すし三崎丸」を強化。持ち帰り寿司から外食にシフトしている。「すし三崎丸」は回転ではなく、職人が握ることに特徴があり、かつ駅前、ショッピングモールなど都市型立地で、3強と差別化をはかっている。
京樽の「海鮮三崎港」国立店。
京樽には、でかネタの「海鮮三崎港」という回転寿司業態もあり、一皿120円からネタによって皿と値段が変わる、やや高級なゾーンである。こちらも都市型立地で、味の評判は良く、休日には行列のできる店もある。
京樽も、はま寿司と同様、3強に迫り抜きたいと考えているだろうが、都市型立地で比較的店舗規模が小さくショッピングセンターの出店も多いという特徴を、生かせるかどうかがポイントだろう。
そのほかでは「1500〜2000円の客単価で、特色のあるチェーンで伸びているところがある。たとえば「銚子丸」(いちよし経済研究所・鮫島主任研究員)ということだから、回転寿司は100円均一の3強と、1500〜2000円ゾーンの一部に2極化し、そこだけが伸びている状況なのである。