・店舗は劇場、店員は劇団員。外食の楽しさを演出する
では、1500〜2000円ゾーンの数少ない勝ち組に取材し、その強さを検証してみよう。
まず、訪問したのはすし銚子丸の所沢店。西武新宿線航空公園駅近くのロードサイドにあり、オープンしたのは昨年12月15日。80席ほどあり、休日には長いウェイティングができるほどの人気ぶりだ。
客単価は1600円ほど。ランチはあら汁が無料になるサービスがあり、780円の握りセットもあるので、平日でも満席になる。訪問したのは平日のランチ時であったが、驚いたのが、元気なシルバー層で席が埋めつくされていたこと。
すし銚子丸 所沢店外観。
店内。
平日は特に60代のシルバー層に人気だそうで、退職した団塊世代にターゲットがぴったり合っている。ポストファミレスの1つの形がここにあった。休日は、シルバー層に、息子・娘夫婦、お孫さんと3世代で楽しむ店である。
商品コンセプトは4つあって、海の香り、新鮮、ネタの大きさ、魚屋の精神。千葉県出身だけに、銚子港をはじめ房総、九十九里といった千葉県の海で水揚げされた魚のネタが充実しており、マグロは当然として、特に銚子港の漁獲高日本一のキンメダイや、イワシ、アジなどの光物の魚には定評がある。
皿の値段は136円〜525円まであり、セントラルキッチンを持たず、世界の漁港から上がった新鮮なネタが最速で店舗に届くシステムになっている。でかネタであるということと、ネタのローカル色の強さで、100円寿司と差別化されている。
1皿の価格は5種類。135円〜525円。
水槽の魚 店内でさばかれる。
全国の漁港から新鮮なネタが直送されてくる。
生の地魚は、その日の仕入れによって、店ごとにも異なる。当日の所沢店では、鳥取のアジ、長崎の沖イサキ、ノルウェーから直送の養殖ではあっても超特大の養殖場でじっくり育てたオーロラサーモンなどが、お勧め品となっていた。
鮮真アジ、オーロラサーモン(各262円)。
鮮真いわし(157円)。
デザートでは、かりんとう饅頭が2ヶ月で20万個売れるヒットになっており、お土産としても積極的にPRしている。
さらに、100円均一寿司との明確な違いは、人間系による楽しさの演出である。
「当社ではお店は劇場、店員は劇団員と位置づけていまして、職人も黙々とお寿司を握っているだけではダメなんです。魚をさばく時も、お客様にまずかざして見せて、お声かけをしてからさばきます」(東方拓也店長)。
銚子丸では、レーンの中に何人か職人が立って寿司を握るが、ホールスタッフともども、賑やかに声を掛け合っていてとても活気がある。しかも、マグロの解体や、丸のままの魚をおろすところを、随時見せているので、切り身の魚しか見たことがない子供たちにも喜ばれているという。
また、無料で炙ったり、利尻昆布とオホーツク海の塩でつくった昆布塩を塗ったり、鯛醤油を塗ったりする、ひと手間かけたサービスも提供。ホール長を女将と位置づけて、客席をまわって注文や要望を聞くサービスも始めた。
埼玉県西部は銚子丸としては、決して強い地域ではないが、オープンして半年、地域に根差した繁盛店となっていると確認できた。
銚子丸は現在千葉県を中心に72店。関東エリアで勢力を伸ばしつつある。年商は2010年5月期で約164億円。前期より9.2%と2桁近く伸びている。
3強に迫る、第2勢力のトップランナーの1つと位置づけられるだろう。