・先行き不透明な「アウト」キーワード 5つ
外食キーワードを、先行き不透明や制約のある「アウト」、3ヶ月後も続く「キープ」、直近の3ヶ月に生まれた「ニュー」の3種に分類しました。まずは、「アウト」キーワードを紹介します。
1) 朝活
出勤前や休日の朝を利用して、仲間で集まって自分磨きをしようという、クラブ活動のようなもの。ジョギングやヨガなどの体育会系や、ビジネスマッチングや読書などの文科系など、決まった曜日の決まった時間に集まり、同好会が開催されている。
しかし、「朝活」として定期的に利用されている店舗は僅か。マスメディアでは読書会、勉強会などの活動は度々取り上げられているが、貸しスペースが利用され、外食との絡みは少ない。
また、朝食市場を取り込もうとする店も少ない。営業時間が長くなり、効率的に人材を配置できないことがネック。提供している店では、じわじわと認知が広がって客数が伸びている感はある。しかし、朝食時間帯だけでペイさせることは現状難しい。
2) セルフうどん
セルフうどんのリーダー「丸亀製麺」。3月末で329店。既存店売上高はマイナス。
2000年代前半に一度鎮静化した讃岐うどんブームが、香川の田舎の製麺所というストーリー性を演出した「丸亀製麺」の躍進とともに2008年頃から再燃している。デフレ傾向とも重なる。
「丸亀製麺」「はなまるうどん」を筆頭に店舗数が伸びてきたが、ここにきてリーダー「丸亀製麺」の既存店売上高がマイナスに転じ始めた。主な立地である商業施設の林立により、施設自体の集客力が弱まっていることも一因。 上位2社で約600店。「すき家」「吉野家」「松屋」のトップ3社で3500店もある牛丼のような市場に成長するには、まだまだ紆余曲折がありそう。
3) 中食シェアリング
惣菜店併設は立地と人件費管理が難しい。
とんかつ店、牛丼店等では以前から脇で弁当等を売ることが行われていたが、ホルモン焼店、焼鳥店なども新たに参入。ご飯は扱わず、ハンバーグや焼鳥・唐揚げなどの惣菜を小売している。専門料理店ということで、スーパーや総菜店と差別化できる。また、店舗で食べたお客が惣菜を家に勝って帰り、惣菜を買ったお客が週末に家族で来店するなど相乗効果も見込める。
しかし、住宅地でなければ惣菜小売は成立しない。そうすると店舗の売上も低くなる。両者のバランスを考慮せねばならず、立地選定が難しい。
昼間の惣菜小売と、夜間の飲食店で、人材を効率的に回転させるのにノウハウが必要。
4) 訳あり食材
アウトレットワインで話題の「ワヰン酒場」。有名ブランドの訳ありを継続して調達できるかどうかがカギ。
不良在庫となった輸入ワインやビール、ツメが一本とれたカニ、ヒゲがとれたエビ、規格外の野菜などいわゆる、訳あり、アウトレット食材を使用。安価で仕入れ、お客にも明示して、安価で提供する。アウトレットブームに乗って注目率も上がった。
訳ありの前提は、皆が認める高額商品が規格外などの理由で安いこと。ブランドとして知られていること。景気低迷で通常品でも安いものが出回っている中で、ブランドが確立されていなかったり、元来の品質に疑問があるものは、お客にとって魅力は少ない。有名ブランドの訳ありを継続して調達できるかどうかがカギ。
5) トロ箱鮮魚居酒屋
「鰓呼吸」中目黒店。ド迫力で若者層も集客。
運送用に魚を入れるトロ箱、大漁旗、ビール函、安っぽい丸椅子などで活気ある魚屋や魚市場を演出。スタッフも漁師のような荒っぽい接客。獲れ立て、仕入れ立ての鮮魚が、魚屋ならではの安さで提供されている雰囲気を出した居酒屋。
奇抜な内外装から、単なる鮮魚居酒屋では来ない若者層を集客できている。施工費も安く、ブームに乗って出店しているケースが大半。実際に魚屋が出店している店は少ない。居心地の悪さを、価格や品質で補うのがこの業態の本来の姿にもかかわらず、価格や品質が通常の居酒屋と変わらなければ淘汰されていく。