フードリンクレポート


素材も味付けも「選べる」のが鉄板焼の魅力。
〜鉄板焼のカジュアル化進む。立ち飲み、ワンコイン。〜(4−4)

2010.7.22
「鉄板焼」という業態はホテルのトップフロアに昔からあったように「高級業態」として位置づけられてきた。今でも特にアッパークラスのリゾートホテルなどではその土地の素材をそのまま焼き、シンプルな味つけで食べさせるという部分で変わらず健在。他の国からステイをする者にとっても「素材そのまま」「シンプルな味つけ」「目の前で調理」という点で「安心してセレクトできる業態」として万国共通で認識されている。近年ではこの「鉄板焼」に別の切り口を掛け合わせた新しい鉄板焼業態が街なかで人気を集めているという。その現況について探った。4回シリーズ。レポートは国井直子。


「バンブーグラッシー」(東京・恵比寿)の薬味類。

素材も味付けも「選べる」のが鉄板焼の魅力

 個人的には卓上に塩や調味料が全くなく(テーブルが狭いのもあるだろう)、提供もされない点が気になる店もあった。味が全て決められて出てくることに多少の物足りなさを感じ、単にフライパンではなく鉄板を使用しているだけで、テーブルに提供されたときは通常の料理と違いを感じない場合もある。

 更に「素材そのまま」という部分のメニューの幅も少ないように思う。素材を種類多く横並びにし、セレクトが広く欲しい気がする。野菜であれ肉であれ、素材も味付けも「選べる」という点が「鉄板焼」の料理としてのひとつの魅力と思う。売値をおさえているので在庫軽減や色々な点で工夫した結果かもしれないとは推測はできるが期待はしたい。

 オープンキッチンでピッツアを焼く様子や料理人の包丁さばきが見られたりすることは他業態でもあり、「鉄板焼」にはそれならではのベース部分が残ってあって欲しい。

 恵比寿の「バンブーグラッシー」(運営:株式会社ラウンドテーブル)は7年目をむかえる鉄板焼きの人気店。同店の向かいに昨年3月から2号店を構えているがこの2号店は今年2月になって「お好み焼きハウス フラワー」と新たにネーミング、1000円からの「お好み焼き」を中心に価格面を含め気軽に使い易い店としてリニューアルオープンさせている。「フラワー」でも本家「バンブーグラッシー」と同じ料理を全て注文することも可能だ。

「バンブーグラッシー」で提供されるコース料理では最初に「鬼おろしポン酢」「からしと3年熟成醤油」「味噌」「岩塩」が品よく並べられ調理された食材を好みの味でそれぞれいただける基本のスタイル。カウンターを囲むのは常客のようだがテーブル席では気楽に本来の鉄板焼のスタイルや雰囲気を味わいながらゆったりと過ごせる。


「バンブーグラッシー」の料理

 鉄板焼の居酒屋スタイルは数年前からあったものの、広がりをみせるのはまさに今。お客が直接そのパフォーマンを見ることができて、それにプラスアルファを掛け合わせることで時代にあった「鉄板焼」スタイルが実現できていくようだ。10坪もあれば様々な切り口で可能性の広い注目すべき業態のひとつ、新しい市場を獲得し始めている。


【取材・執筆】  国井 直子(くにい なおこ) 2010年7月12日執筆