フードリンクレポート


百万人を集客する屋外ビアガーデン、スウィーツ食べ放題も。
〜夏本番! ビアガーデン革命、全国で進行中〜(5−5)

2010.8.3
いよいよ梅雨が明けて夏本番。気温の上昇と共にビールの美味しい季節になった。夏の夜、屋外のビアガーデンで涼みながら飲むビールの味は格別だ。しかも、今年は料理や空間にこだわったビアガーデン、一味違うサービスを試みるビアガーデンが増え、従来のイメージを一新している。ビアガーデン革命の進展状況をレポートした。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


札幌・大通公園 ドイツ村ビアガーデン。

百万人を集客する屋外ビアガーデン、スウィーツ食べ放題も

 今年の夏は7月後半になって気温が急上昇していることもあり、日本全国でビアガーデンの盛り上がりもうなぎ上りだ。

 7月21日より8月20まで開催している第57回「さっぽろ夏まつり」。札幌市中心部の大通公園5丁目から12丁目まで延々と続く野外テントのビアガーデンは、席数1万3500を数える日本最大規模で、51回以降毎年ビール40万リットル以上を消費するほど盛大になっている。

 昨年は137万人を集客し、ビール52万リットルを消費した。札幌市観光企画課では今年も同等がそれ以上の集客が見込んでいる。


札幌・大通公園のビアガーデン。

 ビアガーデンに出店しているのは、アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの4大メーカー、地ビールの小樽ビール、ドイツ直送生ビールを出す「札幌ドイツ村」、札幌グランドホテル。

「さっぽろ夏まつり」には「北海盆踊り」などさまざまなイベントがあるが、何といってもこの壮大なビアガーデンこそ最大の売りで、21日の正午スタートとともに、市民、観光客が詰め掛け順調なスタートを切っている。ビアガーデンは8月15日まで開催。


札幌・大通公園 サッポロブース、斜里町名産の赤豚生姜焼き(700円)。


札幌・大通公園 サントリーブース、帆立とアスパラのバター焼き(500円)。

 名古屋市の名古屋駅前、大名古屋ビルヂング屋上にオープンしている「ビアガーデンマイアミ」は毎日、大道芸、黒人シンガーのステージなどライブが楽しめる、エンターテインメントに力を入れて人気のビアガーデンだ。席数は850席。屋根が一部開閉式になっており雨天でも400席まで収容できる。


ビアガーデンマイアミ 4大メーカー11種類ものビール飲み放題。

 しかも、5年前から毎年オーディションで、キャンペーンガールのマイちゃん、アミちゃんを選定しており、地元のアイドルとして知られてきている。毎週火、金、土には2人のライブがありオリジナル曲を含むステージで盛り上がる。


ビアガーデンマイアミ マイちゃん、アミちゃんのステージ。

 料金は3800円で、バイキング形式になっており、ビールは4大メーカー11種類も飲み放題である。

 また今年から新しく「なめらかプリン」の「パステル」がプロデュースした、オリジナルスウィーツのバイキングも始め女性客が増えているという。

「日本一のビアガーデンを自負していますから」と運営するチタカ・インターナショナル・フーズは「ビアガーデンマイアミ」に絶対の自信を持っている。

 広島市のアサヒ会館屋上にあるビアガーデン「キリンビアガーデン」では、月に1度開催する、全国でも珍しい女性解体士・佐伯恵美さんによる、マグロの解体ショーが大人気だ。ショーのある日は、職人が繰り出してその場で鮨を握るなどして提供する。


広島・アサヒ会館屋上ビアガーデン名物のマグロの解体ショー。

 料金は飲み放題・食べ放題で、男性3000円、女性2800円とお得な設定だ。経営母体は割烹料理のひのきで、本格的な鮨や刺身を味わえるビアガーデンとして貴重な存在だ。

 東京・日本橋の高島屋では、試験的に今年初めて屋上ビアガーデンに取り組んでいる。アイリッシュパブをイメージし、夕方4時から8時までオープン。昨年百貨店で初めて国の重要文化財に指定された贅沢な空間で、飲食が楽しめる。ターゲットは買物帰りの主婦と近隣のOL、ビジネスマンでどちらかというと女性狙いである。


日本橋高島屋 スターライトビアガーデン。

 ビアガーデンでビールと料理を楽しんで宿泊できる、夏季限定プランを打ち出すホテルもある。

 金沢市の「ANAクラウンプラザホテル金沢」では、ドーム式全天候型の「ビアテラス」を有しており、5000円で網焼きグリルを中心としたバイキングという設定になっているが、1泊2万3800円〜でビアガーデンと翌朝の朝食が付く「ワイワイビアテラスプラン」を販売している。


ANAクラウンプラザホテル金沢ではビアテラス宿泊プランを提案。

 同ホテル広報によれば「週末に観光にいらっしゃるご家族連れの利用が多いが、金沢の人もいらっしゃいます。出張に来られた人と一緒に飲み食いして、ちゃっかり泊まっていかれる金沢のサラリーマンも多いですよ」とのことだ。

 以上、見てきたようにビアガーデンは、日本の夏を楽しむエンターテインメントとして、料理、サービスともに従来のイメージを一新しており、ビールとおつまみくらいしかない面白くない店は淘汰されてきている。

 一方で、若者、女性など新規の顧客獲得のノウハウを持つ企業が複数のビアガーデンを運営するケースも出てきた。いずれにしても質の向上が目覚しい、ビアガーデン革命。これからの進展がますます楽しみである。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年7月26日執筆