フードリンクレポート


日本一の海の家数を誇る逗子海岸にイタリアン海の家。
〜昨年の冷夏から一転。猛暑で海の家が復活。〜(5−1)

2010.8.4
昨年は冷夏で盛り上がりを欠いた海の家商戦であるが、今年は7月中盤以降の猛暑で、昨年の3割増〜5割増の売り上げを記録する店舗が続出している。また、湘南地区では逗子と片瀬西浜を中心にカフェやダイニング、ライブハウスのテイストを強調して、地元住民、アフター海水浴、音楽ファンの需要開拓に成功する店舗も増え、ビーチサイドの夏季限定レストランの様相が濃くなっている。盛り上がる海の家商戦の前半戦を総括する。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


「YUKUIDO」 外観。

日本一の海の家数を誇る逗子海岸にイタリアン海の家

 海の家の数41軒と、全国でも最大の規模を誇っているのは、湘南でも東側にあたる逗子海岸海水浴場。昨年は38軒の出店であったが、今年は3軒増えて今までで一番多い出店数となっている。

 逗子市役所によれば、去年の海水浴客数は24万人で、一昨年の42万人の57%ほどの来客と冷夏の影響を甚大に受けた。しかし今年は、7月29日の時点で21万人が訪れており、7月中に去年の客数を超えた模様だ。まだ、書き入れ時のお盆前後を残しているので、今年はひと夏を通すと一気に60〜70万人くらいまで来客数を伸ばしそうだ。

 今、全国でも最も勢いのある旬のビーチが逗子海岸なのである。


41軒と日本最大の海の家数を誇る、逗子海岸。

 逗子海岸でもダイニングを強調した運営を行っている海の家が「YUKUIDO」だ。昨年が初出店で今年が2年目となる。席数は70席。ロッカー、更衣室、シャワー室を完備している。営業は6月25日から8月29日まで。経営は住宅のリノベーション・リフォームを専門とする会社、ゆくい堂(本社・東京都台東区)。


「YUKUIDO」 店内。海の家にシャンデリア。

 食事は東京・日本橋のイタリアンバル「ビゴーテ」と提携。毎日「ビゴーテ」のシェフが厨房に入って本格的なイタリアンを提供している。

 ポモドーロ、ポロネーゼ、ボンゴレといったパスタ(各1000円)、包み揚げピザのカルツォーネ(500円)、生ハム、チーズ、オリーブなどのおつまみ(各500円)、地魚海鮮サラダ(900円)のほか、農家直送の減農薬の米を使った野菜たっぷりのロコモコ(900円)、ミートカレー(700円)、オムそば(800円)、冷しサラダらー麺(650円)などといった海の家で受けそうなメニューを、オリジナリティあふれたアレンジで出している。客単価は1400円。


パスタ各種 1000円。


カルツォーネ 500円。包み揚げピザでトマトソースとミートソースの2種類がある。


農家直送の減農薬の米を使った野菜たっぷりのロコモコ 900円。

「ロコモコが一番人気ですが、逗子では一番旨いと自信を持っています。パスタ、カルツォーネのようなイタリアンのメニューも好評をいただいています。お客様は私服で来られる方が多く、地元の人が夕方に食事をしに来るイメージです」と山下直樹店長。

 海の家の売り上げはお盆前後の1週間ほどの間に、6〜7割がどうしても集中する。その時期に天気が悪かったり、暑すぎて人々が外出を控えれば、その年の経営は失敗に終ってしまう。

 そうしたリスクを極力分散させるためにも、海水浴客に頼らず、地元住民が足を運んでくれるレストランの要素を強く打ち出したそうだ。年齢層は高めで30代くらいが中心だが、ウエディングの2次会も3件入るなど、通常の海の家では取り込めない顧客も来店している模様だ。

 また、完全予約制のバーベキュープラン(1人3500円)もあり、地元の野菜、朝に獲れたサザエ、和牛の霜降り肉を中庭で楽しむことができる。

 ドリンクはビール中心で、キリン一番搾り生が600円などとなっており、コーラ、ジュースなどソフトドリンクもある。

「YUKUIDO」は鎌倉・材木座海岸にあって今年10周年となる、アジアンテイストのダイニングバー型海の家「エイジア」の姉妹店となっている。「エイジア」は隣接する由比ガ浜の海の家をおしゃれに変身させたと評されるほどのインパクトを持ったが、ゆくい堂丸野信次郎社長の先輩が「エイジア」を経営しており、初期の3年間は海の家の建築をゆくい堂が請け負っていたという。逗子のこの物件も「エイジア」のオーナーからの紹介。

 由比ガ浜から逗子へ、海の家の大人化の流れが波及しているのを象徴するエピソードだ。

「YUKUIDO」も「エイジア」と同様にDJを入れての音楽イベント、ライブなどを週末中心に行うが、スケジュールとイベントの性質によっては相互に回しあうほど深い交流がある。
 さらに「ウォーターバルーン」という風船状の物体の中に入って、水上に浮くアトラクションも始めた。

 さて、逗子海岸の興隆に大いに寄与しているのは、2008年紅白歌合戦にも出場した人気デュオ、キマグレンが経営するライブハウス型海の家「音霊シースタジオ」である。今年で6年目となる。


ミュージシャンのキマグレンが経営する「音霊シースタジオ」。

 営業期間中は毎日ライブを開催するが、参加ミュージシャンは毎年豪華になっており、今年は藤井フミヤ、スキマスイッチ、大塚愛、山崎まさよし、一青窈ら著名ミュージシャンが多数出演する盛況となっている。

「音霊シースタジオ」はその発展形として東京・恵比寿にスペインバル「OTODAMA BAR」を2009年10月にオープンしているが、その夏季限定の支店もライブハウスの隣につくられ、食事の面でも充実度が増している。各種ドリンクのほか、シラス丼、タコライス、カレーなどが楽しめる。

 その他逗子には、町田にあるラーメン屋「町田商店」の運営する横浜家系ラーメンの海の家「逗子家」、FCオーナーが出店した「カレーハウスCoCo壱番屋」の海の家、ブラジルなど中南米系の海の家といったユニークな海の家も多く、ファミリー、音楽ファンが多数詰め掛ける賑やかなビーチになっている。


横浜家系ラーメン海の家「逗子家」。


「CoCo壱番屋」も海の家に出店。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年8月3日執筆