フードリンクレポート


葉山・一色にはイベントに合わせ日替わりメニューの店。
〜昨年の冷夏から一転。猛暑で海の家が復活。〜(5−2)

2010.8.5
昨年は冷夏で盛り上がりを欠いた海の家商戦であるが、今年は7月中盤以降の猛暑で、昨年の3割増〜5割増の売り上げを記録する店舗が続出している。また、湘南地区では逗子と片瀬西浜を中心にカフェやダイニング、ライブハウスのテイストを強調して、地元住民、アフター海水浴、音楽ファンの需要開拓に成功する店舗も増え、ビーチサイドの夏季限定レストランの様相が濃くなっている。盛り上がる海の家商戦の前半戦を総括する。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


「UMIGOYA」のナスとトマトのフィジーリパスタ。海を眺めながらゆっくり食事が取れる。

葉山・一色にはイベントに合わせ日替わりメニューの店

 湘南でも奥座敷にあたる葉山町は、鉄道のない交通の不便さもあって、家族や気の合った人とゆっくりと過ごせる落ち着いたビーチが幾つかある。葉山町は最近リタイアした資産家が東京から移り住むケースも多く、海岸や山肌に高級住宅地、リゾート風マンションが広がり、人口が増えている。

 葉山町役場によれば、海水浴場の集客も近年増える傾向があり、一昨年の11万人に対して昨年は13万人と、冷夏にもかかわらず増えていた。


葉山御用邸のすぐ近くにある一色海岸。

 今年の海の家の出店数をエリア別に見ると、森戸12、一色7、大浜1、長者ヶ崎2で、町役場に近い森戸がやや減っているのに対して、御用邸に近い一色がやや増えている。実際の人出も、昨年くらいから森戸が伸び悩むのに対して、一色が伸びている感がある。

 一色海水浴場にあって、隠れ家的なビーチリゾートの雰囲気を漂わせ、人気店となっているのが「UMIGOYA」である。

 今年で10年目となるが、食事のメニューは日替わりでパスタ、カレーなどを出しており、カフェとダイニングの中間くらいの創作性の高いものとなっている。


「UMIGOYA」外観。


「UMIGOYA」店内。


「UMIGOYA」のバーカウンター

 記者の訪問した日は、ナスとトマトのフィジーリパスタ、ゴーヤチャンプルー、たっぷり野菜のチキンカレー(各1000円)が本日のお勧めとして提供されていた。

 元スタッフで今は飲食店に勤務している人などが周囲にいるので、彼らに応援を頼み、土日はイタリアンのシェフが入り、タイ料理のスペシャリストが厨房に立つ日もある。来店する日によってサプライズがあるのが面白い。

 営業は7月10日から8月29日までで、葉山の海の家の特徴として深夜営業が許可されていて、夜は11時まで開いている。夜は地元の人たちが集う夏季限定の社交場になっており、お酒はビールをはじめワイン、カクテルなどが揃っている。顧客層は若い人はあまり来ず、30代〜40代のファミリー層が中心になっている。

 席数は100〜120席あり、ミュージシャンからのオファーも多く、さまざまなジャンルのライブが多く開かれる。ジャズ、ボサノバ、サルサ、各種のダンスといった具合にワールドミュージックの様相で、料理もイベントに合わせて変えていくのだという。

 変幻自在のスタイルを持つ「UMIGOYA」だが、オーナーの村野義哉氏は、元々海外のリゾートホテルのサービスマンとして、ニューカレドニア、モルジブ、フロリダなどで働いていた。そこで日本にないようなサービスを体験しながら、マリンスポーツのインストラクターとしても顧客にウィンドサーフィンなどを教えていた。

 5年くらいして日本に帰ってきた時に、海の家が開いている海水浴シーズンには、マリンスポーツ愛好者が浜から追い出される状況に疑問を感じ、ロケーションをいろいろと見て回って葉山の一色海岸にたどり着いた。

「UMIGOYA」の立地は一色海水浴場でも南端にあり、遊泳区域と遊泳禁止区域のちょうど境界線上にあって、海水浴客とマリンスポーツ愛好者が共存できる場所になっている。
 たまたま、この場所の権利を持っていた人が引退するというので、村野氏は権利を譲ってもらって開業した。

 村野氏は「UMIGOYA」を拠点に、ウィンドサーフィン、カヤック、セイリング、スタンドアップパドルというハワイで人気の立ってオールを持って漕ぐサーフィンといったマリンスポーツを教えており、都内から通ってくるマリンスポーツファンも多い。週末は朝7時よりヨガ教室も開いている。

 近年は1区画だけではさばき切れなくなり、2区画を使って運営している。このスタイルなら片方でライブをしていても、もう片方では通常営業が可能なので、ライブを目的としない人が来ても満足してもらえると、村野氏は業容を拡大してさらに顧客が増えたと語る。「UMIGOYA」のパワーアップが、一色の集客にもたらした影響は大きい。

 さらに、2009年12月には、海の家の発展形として、御用邸より山側の住宅地に「UMIGOYA スタイル&カフェ」という常設店を新規オープンした。席数は40席。海の家がオープンした今は人手が足らず一時的に閉めているが、お盆過ぎから再オープンする予定だ。


「UMIGOYA スタイル&カフェ」は昨年末にオープンした常設店。

「やはり夏だけでなく一年を通じてUMIGOYAに来たいと言ってくださるお客様が増えてきて、ちょうど海の家から歩いて5、6分の場所に良い物件を見つけたのでオープンしました」と村野氏。

 こちらのカフェでは奄美鶏飯、海南鶏飯、佐島漁港で獲れたイワシを使った料理、鎌倉野菜などが売りになっている。

 そのほかの海の家では、「カフェドロペ・ラメール」は、70年代表参道にあった伝説のオープンカフェ「カフェドロペ」を再現したというコンセプトで、今年が2年目となる。葉山の野菜を使った料理や、ベリーダンス、フラダンスのイベントなど、こちらは若者向けの店となっている。


「カフェドロペ・ラメール」。

「UMIGOYA」と並ぶ一色の代表店「ブルームーン」は14年目を迎え、三浦市のたかいく農園の有機野菜や葉山の漁師から仕入れた鮮魚を使ったメニューが売り。新鮮なシラス丼、ジャコサラダうどんなどが楽しめる。眺めのいい2階のウッドデッキ、リフレクソロジーのサービス、ミュージシャンによるライブイベントもあり、レベルの高いサービスを提供している。


「ブルームーン」外観。


「ブルームーン」のウッドデッキ。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年8月3日執筆