・上場のメリット、デメリットを徹底的に考えた末の決断
「モーモーパラダイス」や「東京ベリーニカフェ」などで知られ、「バルバッコア」や「ユニオン スクエア トウキョウ」など海外ブランドの国内展開でも有名な株式会社ワンダーテーブル(以下、ワンダーテーブル)が今年4月、上場を廃止した。上場したくても、上場できない飲食業界の企業が多い中、同社がこのタイミングで上場を廃止した理由は何だったのか?
「何のための上場か?上場していることのメリットとデメリットを全て洗い出し比較して考えたとき、上場をやめるという結論に至りました。」と語るのは、同社代表取締役社長の林祥隆氏。
「ユニオン スクエア トウキョウ」の店内。
「上場の意味を考えたとき、会社にとってのメリットは資金調達がしやすくなり、上場企業というステータスにより、良い人材も集まりやすいという点です。しかし、資金面では、上場し続けることもそれだけでコストが年間数千万単位でかかります。法的な報告義務や手続きがあるためです。そして、株主には配当を支払わなければなりません。仮に上場していなかったとして、銀行から資金を借りることを考えたとき、その利子が上場コスト+配当より少なかったら資金面でのメリットはなくなります。今は、お金の集め方もいろいろです。上場していなくてもできると思いました。」
林氏は、飲食業界ならではの上場の難しさも指摘する。
「上場するということは、株主からは継続的成長を求められるわけです。それは、規模の効率性を高めていかなくては難しいこと。スケールメリットですね。しかし、飲食業の場合は、そのスケールメリットがあまりない事業だと思います。人に任せる部分がどうしても多いので、標準化し辛いからです。」
海外でも展開している「鍋ぞう」。
加えて、業態によってもそのデメリットは大きくなるとも。多岐にわたる業態を抱えるワンダーテーブル。上場に向かない業態があるという。
「高単価の業態は、上場により向いていないと思います。先の数字が読みにくいからです。飲食の高単価の業態で安定させられるのは、ウェディングビジネスをやっているところくらいじゃないでしょうか?半年先、一年の予約が入ることもあるので、売上が読めますよね。さらにうちは、海外ブランド含め、企業を預かって、マーケットに適応させていくやり方をしている業態がいくつもあります。そうした場合にも、どこまで上場していることがいいのか、疑問でした。」
飲食業界の企業において、必ずしも上場がいいことではないと言う同氏のロジカルな見解には説得力がある。