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きっかけはリーマンショック。上場は一つの手段でしかない。
〜上場廃止という選択。既成事実に縛られない経営体制で再スタート。〜(5−2)
林 祥隆氏 株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長

2010.8.10
現在20業態、63店舗を国内外に展開する、業界大手の株式会社ワンダーテーブル。東証二部上場企業として事業を展開してきたが、今年4月、上場廃止の決断を下した。廃止に至った理由とその後の反応、そして、現在の業態展開や海外進出について、代表取締役社長の林氏に聞いた。5回シリーズ。レポートは村田麻未。


「ユニオン スクエア トウキョウ」。

きっかけはリーマンショック。上場は一つの手段でしかない

 昨年秋に起こり、日本経済にも大きな衝撃を与えたリーマンショック。上場廃止に至ったきっかけの一つは、このリーマンショックだった。

「リーマンショックで今後のことを今まで以上に考えました。この経済状況においては、臨機応変に対応していかねばならず、それにはスピードが非常に大切になってきます。重要な経営判断をする際、上場企業では時間がかかります。上場企業として継続的な成長を求められる中で、立てた目標が“既成事実”となり、それに向けての出店をすることになってしまいます。」

 加えて、親会社のヒューマックスとの組織体制でも問題点を抱えていた。

「ヒューマックスグループ全体での資源配分のバランスが悪かったんです。財務、法務などのオフィス機能がダブっていました。でもこれは上場しているからには仕方の無いことで、個社ごとに必要な部署です。しかし、これをヒューマックスで一つにまとめることができれば、資源配分も効率化できます。」


「ユニオン スクエア トウキョウ」で提供されている米国産牛ロースの“スモークステーキ”。

 様々な角度から考えた時、上場していることはもはやメリットではなくなっていた。

「この経済の中では、これ以上株価を上げ続けることは難しい。半年先にどんな状況になっているのか見通しが立て辛い中で、どうなっても柔軟に対応できる状態にしておくべきだと思ったのです。」

 上場する企業と社長の関係性について、林氏はこう語る。

「上場は手段でしかありません。目的があってやるならいいと思います。でも、金儲けのためならやらない方がいい。そして、上場したら社長は変えた方がいい。一つの考え方ですが、会社のステータスによって求められる経営者のタイプは違うと思います。創業期、成長期、安定期・・・。それぞれ求められる能力が違います。自分はどのタイプと言われるとわかりませんが、あえていうなら、自分は新しい企画を考えて、形にしていくことが好きです。大きくしていく過程ですね。」

 企業のステータスと抱える業態、経営者のタイプ、そして経済状況。全ての条件が合って初めて上場が意味を成すのかもしれない。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ) 2010年7月23日取材