・ゲームと提携した海の家や大都会に人工ビーチも登場
同じ鎌倉市内でも藤沢市の片瀬東浜に連なる海岸の東側にある、腰越海水浴場は今年は例年より多い7軒の海の家を出店しており久々に活気が出ている。今までは2、3軒、多くても5軒ほどにとどまっていた。オープン期間は7〜8月いっぱい。
腰越海岸から江ノ島を望む。
今年の海の家の運営は、人材派遣、イベント事業、広告代理店などを営むレスコム(本社・東京都渋谷区)が一括して請けている。
目玉はカプコンが監修した「カプコン・シーサイド・ハウス」で、ショップ&カフェと「モンハンキッチン」に分かれる。
ショップ&カフェでは80種類のカプコンのゲーム関連グッズが販売され、「モンスターハンター」シリーズの人気キャラクターで、ネコ型獣人の「アイルー」の絵柄が描かれた海の家限定Tシャツなども置かれている。
併設されているカフェでは、コーヒー、紅茶などソフトドリンクが300円で提供され、1杯につき1回ラッキールーレットにチャレンジできる。ルーレットで当たればもう1杯サービスとなる。
「カプコンシーサイドカフェ」。ショップに併設されている。
大谷充店長によれば「カプコンのゲームファンの方に遠くからもたくさん来ていただいています」とのことで、こちらは遠方から目指して来る人が多く、海水浴の利用者はそれほどいないようだ。顧客は若い人、ファミリーが多く、男女比は4:6で女性が多い。
「モンハンキッチン」は「モンスターハンター」シリーズにちなんだメニューを提供する食堂で、中華がベースになっている。たとえば「モス角煮丼(豚角煮丼)」600円、「ティガレックスまっしぐらポポカレー(鎌倉・腰越カレー)」700円、「ドス丼(酢豚丼)」600円、「教官チャーハン(五目チャーハン)」550円、「ファンゴ麺(ラーメン)」750円、「こんがり肉(肉の串焼)」600円、といった具合で料理はオーソドックスなのだが、ネーミングでそれらしき雰囲気を出している。
「モンハンキッチン」。
モンハンキッチン注文カウンター。奥は厨房になっている。
こんがり肉。
点心では「ぽかぽか餃子(焼き餃子)」450円、「くの字エビ爆弾(エビ海鮮まん)」
3個450円、など。
モス角煮丼とくの字エビ爆弾。
デザートに「アイルー特製みるくソフト(北軽井沢みるくソフト)」350円、ドリンクに「栄養剤(ブルーハワイ味)」350円、「回復薬(メロンソーダ味)」350円、などとなっている。
回復薬。
メニューの種類は43を数え、かつリーズナブルな値段設定である。
顧客層は右奥に更衣室があることもあり海水浴客が主流。水着を着用していないショップ&カフェの顧客は、少なくとも炎天下の日中は「モンハンキッチン」に寄り付かないようである。
さらに、湘南以外の話題を拾っていけば、今年は都会に人工ビーチをつくる動きが定着してきている。これはパリのセーヌ河畔の夏のイベントとして2002年より開催して人気になっている「パリ・プラージュ」に倣ったもので、日本では05年代々木公園オリンピックプラザに人工砂浜をつくった「東京プラージュ」が初めての試みだったと思う。
まず、神戸では神戸港・新港第1突堤で「神戸プラージュ」が7月17日にオープンし、8月31日まで開催している。人工砂浜の広さは約3000平方メートルで結構広い。特別に寄航した帆船・海王丸の一般公開、ビーチバレー、ビーチヨガ、ライブ、子供用特設プールなどの催しが行われている。
「神戸プラージュ」。海の家のように飲食店が連なる、にぎわい通り。
「神戸プラージュ」。人工砂浜に寄航した海王丸。
「神戸プラージュ」。夜は光のモニュメントを見物しながら飲食もできる。
「神戸プラージュ」。神戸牛のロコモコ(800円)。
市の中心街、三宮から歩いて20分ほどで、鎌倉駅から由比ガ浜までの距離とそう変わらないから徒歩でも行けるくらいだ。1時間に2本シャトルバスも出ている。
フードは神戸の有力7店が出店。インドカレー「アールティ」では本格インドカレー各種(700円)が食せ、神戸牛の「元町吉祥吉」では「神戸牛ローストバーガー」(600円)、「チャイナガーデン」では南京町「朋榮」の点心が提供されるなど、神戸の味を満喫できる充実した内容になっている。
また、横浜でもみなとみらい21の一角、横浜赤レンガ倉庫広場にて、真っ白い人工砂浜が夏季限定で出現。「ふんすいビーチ」と銘打ち子供が入って遊べる噴水も設けられる。今年は昨年に続いて2回目の開催で、人工砂浜の広さは36m×17mとなっている。開催期間は8月7日〜29日で、ライブなどのイベントも開催される。
横浜赤レンガ倉庫「ふんすいビーチ」。噴水の先に「BEACH BAR 99」のエントランスが見える。
横浜赤レンガ倉庫「ふんすいビーチ」。プレオープンのハワイアンイベント。
フードは海の家のような感じで、フォーシーズグループが「BEACH BAR 99 」という昼はカフェ、夜はビアガーデン感覚を取り入れたバーになるようなショップを展開している。
フォーシーズによれば「昨年は一日を通してカフェのような感じだったので、今年は夜にもっと集客するように夜はお酒を売っていくように考えた」とのこと。ビーチの海の家大人化は都会の人工ビーチにも及んできている。
かき氷 マンゴーミルク(500円)。
「BEACH BAR 99」の「鶏肉のトマト煮込み」(600円)、ハートランド(550円)。
以上、由比ガ浜のような心配な要素があるビーチも存在するが、今年の猛暑から見て、繁忙期のお盆前後に台風が直撃しない限り、各地の海の家は昨年の不振を補って余りあるほどの売り上げを叩き出す勢いだ。
特に住宅地にほど近い湘南の海岸では、天候に左右される海水浴客に頼らない、地元住民の食のニーズを満たすレストランとしてのパワーアップが目覚しい。資金回収のため企業タイアップを付ける動きも顕著だが、これはやり過ぎると消費者に敬遠されると思われるので、ほどほどにしたほうが良いのではないか。
昨年のような冷夏の年もあるが、全般に地球温暖化のため、日本の都市部の夏は尋常ではない暑さになっている。夏に涼を求める消費者ニーズはますます高まるはずで、都会の人工ビーチも定着していくだろう。
いずれにして海の家は、夏の新しい食文化創造の場として、より進化していくに違いない。