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上場廃止への社員の反応とその後。
〜上場廃止という選択。既成事実に縛られない経営体制で再スタート。〜(5−3)
林 祥隆氏 株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長

2010.8.11
現在20業態、63店舗を国内外に展開する、業界大手の株式会社ワンダーテーブル。東証二部上場企業として事業を展開してきたが、今年4月、上場廃止の決断を下した。廃止に至った理由とその後の反応、そして、現在の業態展開や海外進出について、代表取締役社長の林氏に聞いた。5回シリーズ。レポートは村田麻未。


「バルバッコア」のシュラスコ。

上場廃止への社員の反応とその後

 上場を廃止してからの変化について聞いた。

「適時開示の義務が無くなったので、精神的には楽になりました。開示業務は、本業ではないところで労力を使うことなので、かなり負担になります。人員的には、本社スタッフを現場に移すなどして、40人から30人ほどに減らしました。」


モッツァレラバー「オービカ」のエントランス。

 社員の反応はどうだったのか?

「上場廃止は、大きな不安が生まれたというよりは、どうなるのだろう?という漠然とした不安を抱くという感じだったようです。でも実際には日常にはあまり変化がありません。それよりは、事業のリストラのショックの方がよっぽど大きかったようです。」

 上場廃止と並行して、事業の整理を始めた同社。昨年から数えて、7店舗を閉めた。来年、2011年度中に全店の黒字化を目指している。「今年中に黒字化の目途が立たない店舗については、クローズすると全店舗に伝えました。」



4種類のフレッシュ・モッツァレラが楽しめる「オービカ」。

 新規出店より、既存店舗の業態転換を進めている。港北の店舗の一つをハワイアン業態の「パイナップル・テラス」に、ラ・チッタデッラのイタリアンをカフェ業態「チッタ・カフェ」へ転換させる。最近の傾向として、イタリアン業態はあまり奮わず、「東京ベリーニカフェ」は現在新宿の1店舗を残すのみとなった。

「上場を廃止したというのもありますが、現在は会社全体としての目標数値は出していません。昨対の数字のみ共有し、ブランドごとに比較分析しています。目標を並べるよりは、現時点で昨年と比べて今どうなのか、ということの方が社員にはわかりやすいのではないかと思っています。」

 既成事実に縛られない、より現実に即した経営と業態展開が始まっている。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ) 2010年7月23日取材