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モーパラの海外FC展開が好調な理由とは?
〜上場廃止という選択。既成事実に縛られない経営体制で再スタート。〜(5−5)
林 祥隆氏 株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長

2010.8.13
現在20業態、63店舗を国内外に展開する、業界大手の株式会社ワンダーテーブル。東証二部上場企業として事業を展開してきたが、今年4月、上場廃止の決断を下した。廃止に至った理由とその後の反応、そして、現在の業態展開や海外進出について、代表取締役社長の林氏に聞いた。5回シリーズ。レポートは村田麻未。


アジアでは鍋業態が人気。

モーパラの海外FC展開が好調な理由とは?

「モーモーパラダイス」(以下、モーパラ)、「鍋ぞう」の海外展開も行っているワンダーテーブル。鍋文化があるアジア、台湾とタイでFC展開をしている。海外ではどのように受け入れられているのか?

「立地にもよりますが、モーパラの方が人気があるようです。そして、国によって人気に特徴があります。モーパラではしゃぶしゃぶかすきやきか、メニューが選べますが、日本では、しゃぶしゃぶとすきやきの割合は、8:2くらい。それが、台湾では逆の割合2:8で、タイでは半々くらいですね。タイには、現在2店舗ありますが、さらにもう1店舗出店の予定です。」


台湾では、しゃぶしゃぶよりすき焼きが人気。

 モーパラが好調なのには訳がある。

「モーパラのキッチンには、専門のシェフが必要ありません。そして、鍋がメインなので、味のコントロールがしやすいのです。ちなみに、味は日本と同じです。出店前は、現地FCの経営サイドは味を変えたがります。現地の人に受け入れられ易いようにと。でも、“なんちゃって”の日本食にはしたくないので、味は日本と一緒で通しました。すると、これが本当の日本食だと人気が出たのです。変えない方がうまくいくのです。」


海外展開を行っている「鍋ぞう」。

 これには海外FC経営ならではのプロセスが功を奏していた。

「FCであるということが防波堤になるのです。現地のFC経営陣が何かを変えたいと思っても、本部がこっちでは簡単に変えられない。場合によっては数ヶ月かかることもある。その間、“耐え忍ぶ”ことになります。その間に変えない方がうまく行くことが分かったりするのです。」

 アジア圏での同社の業態は利益率がいいので、今後も展開が広がっていきそうだ。

 臨機応変に対応できる体制が整った同社。国内外共に、今後の展開に注目したい。


■林 祥隆(はやしよしたか)
1963年生まれ 東京都出身。1986年、慶応義塾大学卒業後、株式会社第一勧業銀行に入社。 第一勧業銀行を退職し、UCLAビジネススクール(MBA)へ留学。 卒業後、両親が経営する株式会社ヒューマックスへ入社。1994年、富士汽船(株)<現 株式会社ワンダーテーブル>転籍。2002年、株式会社ワンダーテーブル 代表取締役社長に就任。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ) 2010年7月23日取材