フードリンクレポート


物件交渉の主導権を握る。
〜物件開発に特化して外食改革を進める“郊外のストラテジスト”(戦略家)〜(4−1)
花光雅丸氏 株式会社サブライム 代表取締役

2010.8.22
通常の外食企業なら見向きもしない郊外駅前で出店を続けるサブライム。9月で32店舗を展開するまでに成長した。その秘密は物件開発・交渉力。さらに低投資で損益分岐点を極限まで下げる。基本的には、誰がやっても儲かる店舗を生み出し続けている。新しい外食経営スタイルを築きあげようとする、“郊外のストラテジスト(戦略家)”だ。4回シリーズ。レポートは安田正明。


花光雅丸氏。インタビュー当日、「2週間ぶりに会社に来ました」という。

物件交渉の主導権を握る

 南武線の稲田堤駅、京王線の京王稲田堤駅から共に徒歩2分の立地にサブライムの「エビス」稲田堤店がある。博多牛モツ鍋、手羽先唐揚げ、馬刺しをウリとした居酒屋。線路の反対側には焼肉「牛繁」、稲田堤駅前にはマクドナルド、少し離れた府中街道沿いにはワタミの「餐の屋」。全国チェーンと地元の個人店からなる典型的な郊外駅前。乗降客数は両駅合わせて1日7万人程度。小規模な外食企業がリスクを取ってわざわざ出店するような立地ではない。しかし、サブライムはこんな立地に出店するのを得意としている。


「エビス」稲田堤店。

「経営の原理原則にのっとり、投資を押さえて利幅を大きくし、売上の最大化を目指し経費を最小化する。そして他人の負債を自分の資産に転用する。僕はその3つの武器を徹底的に磨いているだけです。」と29歳の若き社長、花光雅丸氏は語る。

「渋谷や新宿ではリスクが大きくて出店できない(業態力がないので)。郊外は、ローリスクで、悪い時はローリターン、普通の時はミドルリターン、いい時はハイリターンの3つの可能性がある。例えば、銀座のコリドー街で物件が出ると何十社か申し込みがあると聞きました。確率は純粋には何十分の1。郊外なら3分の1以下。自分たちが主導権を持って大家に実利で訴えかけることができる旨みが郊外にはあります。」

「競合がある物件は取れればラッキーという感覚で交渉します。ウチが条件を釣り上げることはまずない。キャッシュフローが大事なので、家賃を安くするためには保証金の償却を100%にしたりします。撤退しませんよ、という思いを実利で訴えかけます。こういう風な手法は何通りもストックしているのですが、これが通じてかつ誰も手をつけてないゾーンとなると郊外に行きつきました。」


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年8月5日取材