フードリンクレポート


社長は物件開発・交渉に特化。
〜物件開発に特化して外食改革を進める“郊外のストラテジスト”(戦略家)〜(4−3)
花光雅丸氏 株式会社サブライム 代表取締役

2010.8.25
通常の外食企業なら見向きもしない郊外駅前で出店を続けるサブライム。9月で32店舗を展開するまでに成長した。その秘密は物件開発・交渉力。さらに低投資で損益分岐点を極限まで下げる。基本的には、誰がやっても儲かる店舗を生み出し続けている。新しい外食経営スタイルを築きあげようとする、“郊外のストラテジスト(戦略家)”だ。4回シリーズ。レポートは安田正明。


もも焼き、丸揚げを始め、名物手羽先唐揚げなど鶏メニューの「サンダーバード」。サッポロビールが開発した業態。永福町、向ケ丘遊園、高円寺、つつじヶ丘の4店。

社長は物件開発・交渉に特化

 花光氏と取締役の中村英樹氏の2人は物件開発・交渉に特化している。経理・財務も完全にアウトソーシング。

「僕の今の仕事はデューデリジェンス。難しいですが、それをマニュアル化しようとしています。ある程度任せられるようになるまでは、自分で仕組みを作ります。飲食はなんとなくわかるのですが、異業種はわからない。実は、美容室やマッサージもやってみたい。粗利益率が高い業種は家賃が安くて投資がかからなければどんな立地でもいけそうな気がします。で、マッサージ屋がやりたい、美容室がやりたいという人に業務委託します。ただ、飲食店と違って、デフォルトのリスクをどのようにカバーしようかなと考えています。さすがに美容室は直営では出来ません(笑)」

 物件の希望条件は、駅から3分以内、坪2万円以内、30坪以上。1階ならなお良い。


お手軽イタリアン「生ハム」。新宿と武蔵小山に2店。

「まずは送られてくる情報だけで見ます。ネットで導線を確認。現場に行かずに申込を入れます。坪1万6千円ならいいですよ、などと条件で刺す。保証金が600万円で償却20%なら、300万円で償却100%。その代わり、礼金なし、看板代も含めて家賃を下げてと提案。それはキツイけどこれならと返ってきた段階で、初めて現場に行きます。頻繁に現場に行く時間がもったいない。家で本を読んでいた方がマシです。いかにして自分の生産性を上げるかを判断基準にして動いていますし、幹部陣にもそれを徹底的に叩き込んでいます。」

「物件は、週に1000件以上目を通しています。1000件見て本当にやりたいなと思うのが2〜3件。いいなと思う物件に出会うのは月に10〜20件。実際に刺すのは、ダメ元もあるので約30件。そして決まるのが3〜4件です。僕と中村(取締役)の2人で月に3〜4店の出店を決めています。」

「情報の母数が増えれば、開発が2人でも月に10件くらい決めることができると思います。郊外は物件の母数が少ない。懇意にしている不動産会社に多めに手数料を払って集めてもらったりしていますが、まだまだ眠っている物件があります。出店に出店を重ねると不動産会社からもっと情報が集まる。今の店舗数では中途半端。100店くらいになるとまた違ってくるでしょう。」

「僕は従業員のモチベーションを上げたり、店舗をまわったりは一切しません。事務所にもめったに行きません。通勤時間がもったいない。家で本を読んだり、家族と過ごした方がいい。僕は極端なので、例えば物件開発50、人材育成50とかのバランスが嫌なんです。現時点では、物件開発100がいいんです。営業管理は部長に信用して任せています。日報は見るだけは見ますが、ほとんど指示は出さない。向こうも黙ってくれという感じです(笑)。部長の下にエリアを管理するマネージャーが3人。今後は、1人10店舗以上を見てもらう体制を作ります。その下に店長がいるイメージです。新入社員は積極的には採用せず、中途に特化(もちろん新入社員が面接に来て、よければ採用しますが)。募集告知も僕のブログだけなのでコストゼロ。募集広告にかかる何百万、何千万という費用は成果を残せる従業員に還元したいからです。」

「幹部だけ握っておけば、出来る人材は勝手に上がってくる。きついことを言うようですが、上がってこられない人は基本的には放置。上がってくる人は5人に1人もいません。教育に自分のパワーを使いたくない。人の問題は一生つきまとうので、上手くいかないと割り切っています。強い人材が教育していく仕組みを作ることが、強い組織を作る秘訣だと思います。」

「郊外は都心と比べて売上は落ちますが、損益分岐点が低いので成立するモデルです。だから日報をあまり気にしなくていい。損益分岐点が高いと気になって仕方ないでしょう。」


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年8月5日取材