フードリンクレポート


ALL WINのために実利にこだわる。
〜物件開発に特化して外食改革を進める“郊外のストラテジスト”(戦略家)〜(4−4)
花光雅丸氏 株式会社サブライム 代表取締役

2010.8.26
通常の外食企業なら見向きもしない郊外駅前で出店を続けるサブライム。9月で32店舗を展開するまでに成長した。その秘密は物件開発・交渉力。さらに低投資で損益分岐点を極限まで下げる。基本的には、誰がやっても儲かる店舗を生み出し続けている。新しい外食経営スタイルを築きあげようとする、“郊外のストラテジスト(戦略家)”だ。4回シリーズ。レポートは安田正明。


肉業態「エビス」は、つつじヶ丘、平塚、川口、高田馬場、本川越、三鷹、稲田堤、八王子に8店。店により、モもつ焼き、もつ鍋、馬刺し、手羽先唐揚げなど名物料理が異なる。

ALL WINのために実利にこだわる

 同社のFL値は60〜65%と比較的高い。

「ウチは店舗の営業利益ベースで20〜25%。悪い時でも10%は出る。損益分岐点さえ低くて、店舗の規模が小さければ基本時には誰がやっても儲かります。」

「現時点で最も古い店は4年。居抜きは普通の店より寿命は短い。5年、10年経つとどうなるのかですが、失敗するイメージはありません。なぜなら固定費が低いから。今は、業態開発やメニュー作りをサッポロビールさんにやってもらっています。飲食業の命とでもいうべき商品開発すらもアウトソーシングしています(笑)。」


魚業態「ととしぐれ」は、下北沢、武蔵境、江古田、八王子に4店。

「目標は1千億円企業。1都3県だけでも複数業態で1千店は出店できる余地はあると思います。しかし、地方にも出店はします。東京の郊外と地方都市は似ています。1業態50店舗くらいでようやく規模のメリットも出るのでやりたいし出店余地は多分にあります。少子化で日本の外食市場は縮みますが、とはいってもまだまだ規模は大きい。」

「夢と希望だけでは飯は食えない。モチベーションは短期的には続きますが、長期で見たときには絶対に続かない。続いて2年。月給10万円代では家族も養えないし、自己投資も出来ない。自己投資が出来ないということは、成長機会が失われる確率が高いということ。だから僕は、徹底的に実利にこだわります。そして、成果を残す社員の給料を上げたい。飲食業に従事する人はお金がないと言われるのが厭です。将来的には、5年以内に取締役に年収1億円以上、3年以内に部長クラスでボーナスが1000万円以上とれる財務体質の会社を目指します。これが実現できれば、それを見て、もっと成果を残そうという人が増えてくる。これが企業のボトムアップにつながると信じています。」

「サブライムの理念は、ALL WIN。関わるすべての人々が、笑顔になるような会社創りを目指しています。利益や満足感を全員に還元したい。そのために店舗数が必要です。関わる人のパイを増やしたい。お客様からは、安くて美味しいね。業者さんからは、ウチと取引してよかった。従業員からは給与も高くていい会社だな。と言われることが僕の目標のひとつです。」

 花光氏は生産性が低いと言われる外食産業の構造を、郊外から変えようとしている戦略家(ストラテジスト)だ。歴史を顧みれば、変革は辺境から始まる。その挑戦を今後も注視したい。


株式会社サブライム

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年8月5日取材