
・バギーとワイングラスで豊洲「CAFE;HAUS」のターゲットを分析!?
5月7日、豊洲のららぽーとに隣接する晴海通り沿いに、入川氏がプロデュースする「CAFE;HAUS(カフェハウス)」がオープンした。ここは、この街区を定期借地している大和ハウス工業が、日常の中でライフスタイルの提案に触れてもらおうと事業企画と設計・施工を行った新しい試みのカフェで、コンセプトに賛同した14社の住宅関連メーカーも協力している。108坪、テラス席含め160席の大型店舗だ。
ランチタイムから午後にかけては、周囲の高層マンションに住む赤ちゃんや小さい子供を連れたママたちで賑わい、夜は近くの住人や会社帰りの人たちが集まる。オープン間もないが、連日ランチタイムは満席、閉店の23時近くまで賑わう人気の店になっている。
筆者もよく行く店だが、ランチタイムに行って驚いたのは、バギー(赤ちゃんを乗せるベビーカー)の多さ。8割位を占める、赤ちゃん連れのママたちの大多数がバギーで来店していたのである。広い店内には、バギーを席の隣に置くスペースがあり、エントランス脇にはバギーを押して入れる、ゆったりとしたスロープが設置されている。

「CAFE;HAUS」店内。明るく開放的なカフェスペース。
「ターゲットを考える際、実際に現地に立って朝昼晩、平日/休日と定点観測を何度も行い、豊洲で生活している人とそのスタイルを徹底的に調べました。また、今回は子ども連れが多いことに着目し、バギー(ベビーカー)のブランドや価格帯まで分析してみたんです。すると、インポートの高級バギーが非常に多いことがわかりました。恐らく、世帯の所得が高く、シックス・ポケットで自由になるお金も多い。そして、豊洲の高級分譲マンションのチラシを見ると、“銀座から6分”の文字。それで、ターゲットとする人たちは、銀座のすぐ近くに住まう意識を持ちながら、子育てなど自分の生活も大切にしたいと考えているだろうと感じました」
ターゲットを例える表現として、「きっとワイングラス選び一つにもこだわりがある。リーデルなどはもちろん、さらにグレードの高いヨーロッパのブランドのものまで関心がある人たち。」という分析。このレベルまで具体的に、裏付けを持ったターゲットの分析をしているのである。

「CAFE;HAUS」店内。リビングのように寛げるハウススペース。
立地面での分析も然り。「これまでの豊洲周辺の開発は全て海に向いていました。それ以外の場所は、緑も少なかった。でも、住んでいる人にとっては海ばかりが景色じゃない。大和ハウス工業の担当の方と一緒に現場を見たときに、ここは誰も注目していない場所だったけど、街に向けて心地よく過ごせる場所があったらいいなと、意見が一致しました。」

豊洲の街に開かれた「CAFE;HAUS」。
そんなターゲットの人たちは、都心に住みたいけれど、子育てなどの自分の生活も大切、流行にも敏感で、自分たちらしく生活を楽しみたいというタイプ。そんなターゲットに向けて、メニューを考え、ドリンクメニューを充実させたり、ワインのテイスティングイベントや料理教室、新しいライフスタイルを提案するイベントなども企画。開放的なテラス席も多く、予約さえすればお店の前で手軽にBBQを楽しむこともできる。カフェの隣の敷地には、スポーツを教育のベースに取り入れた幼児園と保育園。送り迎えの際や子供の様子を見ながらカフェで過ごせるような配置になっている。
オープンして3ヶ月足らずだが、連日地域の方で賑わう人気店になっている。

「CAFE;HAUS」のテラス席。芝の上ではBBQも楽しめる。
「住んでいる人が本当に欲しいものを、そして、今そこに無いものを提供すること。その人たちがちょっと喜ぶことを提供する。そんな場所が「サードプレイス:自分が自分らしくいられる場所」となり、地域のコミュニティになります。そして、今後どんな人が増えて、誰のための街になるのかを予想する。それが、地域を読むことです。」
ターゲットとその土地にとことん向き合い、そこでの日常生活をちょっと豊かにするために必要なものを提供する。だからこそ、地元の人に愛され続けるカフェになっていけるのである。