・日本初のフラッシュマーケティング「ピク」が登場
閃光のように一瞬で販売完了してしまうから名づけられたという、「フラッシュマーケティング」。
インターネット上で、1エリア・1日・1商品限定で、最低でも3割引、甚だしきは9割もの驚愕の大幅割引で共同購入者を募り、購入人数の下限と上限、使用できる期間を決めて販売する全く新しいタイプのクーポンサービスだ。決済はクレジットカードで行われる。
このサービスを考案したのは、アメリカのシカゴに本社を置くグルーポン社。2008年11月設立。サービスを開始して2年足らずで年商約300億円、年間推定利益約45億円を計上したという急成長中のニュービジネスである。ちなみに「グルーポン」は、グループとクーポンを合わせた造語である。
日本でもグルーポンの成功に倣って、同様なサービスを提供する広告代理業の会社が次々と出現しているが、その口火を切ったのはピク メディア(本社・東京都渋谷区千駄ヶ谷)が提供する「Piku(ピク)」である。
日本初のフラッシュマーケティングサイトとして「ピク」がスタートしたのは、今年4月20日。7月末までに50種類のクーポンを発行し、総数約4万5000枚を販売した。
「ピク」ホームページ。
クーポンを発行している業者はレストランが多い。これはカナダ出身日系3世の森デイブ社長が、食べることが大好きであることに起因しているようだ。森デイブ氏はインタビュー中、「おいしいレストランがあれば教えてほしい」と記者に逆に質問してくるほどのグルメ好きな人物なのだ。自信のある好きな分野から、サービスを始めたのである。
現在はヘアサロン、クイックマッサージのような美容・健康分野、ダイビング、バンジージャンプのようなアクティビティなどの分野にも拡大している。
森デイブ氏は「ピク」を始める前も、2004年にEnglish Okという飲食店などのサービス業に特化し、英語を教えて外国人の集客につなげる会社を設立。支援事業を行ってきた。
代々木駅近くにある、ピク メディア本社。
ロゴの右に描かれたイメージキャラクター「ピクちゃん」で親しみやすさをアピール。
また、2009年9月より「Kudos(キュドス)」という会員制の紙媒体とWebの数量限定型の福利厚生型クーポンサービスをテスト的に開始。外資系企業CEO や日本人富裕層向けに売り出したところ会員数が約5000人となり非常に反応が良いことから、グルーポン型「フラッシュマーケティング」の日本でのニーズを確信した。
外資系企業の経営者、富裕層に人気の会員制クーポン冊子「Kudos」。
「レストランなどサービス業向けのウィンウィンの関係になれる、成功報酬型のプロモーションをリサーチしていました。一般的なプロモーションの方法とは違う、グルーポンのようなサービスに興味を引かれ、かなり研究してきました」と森社長は、「ピク」を開発した背景を語った。
「フラッシュマーケティング」が成功報酬型であるとは、ネットで募ったお互い見ず知らずの共同購入者たちが最低限の人数に達して、クーポン成立が確定した時点で、初めて手数料として収入が得られるシステムを指す。クーポンが成立しなければ、広告費用は一切発生しない。
手数料率は個々の案件によって話し合いで設定される。例えばとあるレストランのクーポンを5割引の2000円で発行し、100枚が売れて、手数料を50%取ると設定すれば、10万円がピク メディアの収入になる。
一方のレストランの側は、4000円のメニューを2000円にまで半額に割り引いた上に、半分を手数料で持っていかれたら原材料費、人件費などを考えれば儲けにはならないが、まずは自慢の味をお試しで体験してもらう大きなチャンスになる。
クーポンを使って来店したとしても、感動した顧客なら、今度はクーポンを使わずともリピートするであろう。「ピク」を使う多くのユーザーは決してお金を持っていないのではなく、お金を払うに値する食事はどれか、見極める機会を求めているのだ。サプライズの割引は、彼らの背中を押してくれる効果をもたらすだろう。
「クーポンを購入したお客様は、一緒に行こうよとツイッターやメールで友達を誘いますから、口コミですごく広がるんです。弊社が提供しているのは単なる割引ではなく、こういう料理、楽しみがあるのですよとお知らせして、ライフスタイルの改善につながることを目指しています」。
森デイブ氏が目標としているのは、まだ認知が進んでいない良質の食事、サービスを世に知らしめて、消費者のライフスタイルをより良き方向に改良することなのだ。
「ピク」のホームページは、5月の時点で既に月間130万ページビューあり、7月には月間250万ページビューに増えている。6月24日には携帯電話、モバイルにも業界で初めて対応。日本のフラッシュマーケティングをリードする存在である。
「ピク」のクーポンが順調に立ち上がった前提として、インターネット上にツイッターのような口コミの伝播力が強いミニブログサービスや、ミクシィ、グリー、フェイスブックのようなコミュニティ指向型のSNS、総じてソーシャルメディアがここ2、3年で急速に普及してきたインフラの発達が見逃せない。
「ピク」もツイッターなどのソーシャルメディアを駆使してクーポンを告知するが、ツイッターのオフィシャルアカウント「@Pikujp」のフォロワー数は8400を超えている。つまりツイッターを通じて8400ものフォロワーに割引チケットの情報が一斉に流されるのだ。それとは別に「ピク」のイメージキャラクター「ピクちゃん」がつぶやくような演出で、ファンを募っていく「@_Pikuchan_」というアカウントもツイッターにあり、こちらは1万1400を超えるフォロワー数がある。
かつ、「ピク」を一度でも利用するとクレジットカードを利用できるように会員登録することになり、お知らせメールによって日々のお得なクーポン情報が配信される。
森デイブ氏によれば「ピク」のブランド名は、日本語のピクっとするに由来するそうだ。ピクっとするようなサプライズを提供するのが「ピク」の趣旨であり、毎日その驚きを口コミで広めてもらうフレンドリーな関係を、ユーザーとの間に築きたいと考えている。
そのために、イメージキャラクター「ピクちゃん」が考案され、先ほどの「@_Pikuchan_」などによって心のつながりをつくっていこうとしている。
大胆な割引ももちろん魅力だが、それ以上にサプライズの共有、コミュニティが重視されているのが「ピク」の特徴と言えるだろう。
このほど、ぐるなびとの提携が発表され、9月中に共同事業を立ち上げるべく詳細を調整中とのこと。どんなサービスが始まるのか、楽しみだ。