フードリンクレポート


良質なレストランクーポン開拓に力を注ぐ「カウポン」。
〜半額は当たり前!? 大胆割引で集客、フラッシュマーケティング〜(5−2)

2010.8.31
インターネットで共同購入者を募り、3割引から9割引という大胆な割引設定のクーポンを発行する「フラッシュマーケティング」。アメリカで2年ほど前に始まり、早くも500億円市場にまで急成長していると言われる新サービスだ。日本でも今春より始まり、相次ぐ参入でサービス提供会社は既に30社を超えるという。この「フラッシュマーケティング」の特徴として、飲食店のクーポンが非常に多い。こんなにも割り引いてどんなメリットがあるのか、販売促進につながるのか、取材してみた。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


「カウポン」ホームページ、ツイッターでリアルタイムの購入状況がわかる

良質なレストランクーポン開拓に力を注ぐ「カウポン」

「ピク」と同様、日本では立ち上がりが早かったフラッシュマーケティングのサイトに「KAUPON(カウポン)」がある。

 運営しているのはキラメックス(本社・東京都千代田区麹町)で、村田雅行社長は楽天の出身。大学を卒業して楽天に入社し、2年ほどシステムインテグレーションなどの仕事に従事した後、半年間カナダに語学留学。帰国して2009年2月に同社を設立した。

 最初は新しいインターネットサービスがやりたいと考えていたものの、特に何をすると決めていたわけではなかった。Webサイトの構築・運用の仕事などをしながら、アメリカのニュースサイトを見たり、いろんな分野の業界紙を読むなどして、これから成長するサービスのプロトタイプを探したという。

 グルーポンのようなフラッシュマーケティングの存在を知ったのは昨年の11月で、繊維業界の新聞に書かれていた記事からだった。

 将来性を直感した村田氏は開発に取り掛かり、今年5月10日よりサービスを開始した。最初のクーポンは知己である麻布十番の豚肉専門店「豚とんびょうし」であった。


キラメックス 村田雅行社長(右)、樋口信吾コンテンツプロデューサー。

「先払いでレストランの食事券を購入するサービスはこれまでになかったので、リリース前から不安でしたが予定していた200枚が売り切れてホッとしました」と村田氏。

 5000円のサムギョプサルのコース、飲み放題付きを2500円と半額で販売したインパクトもあったのだろう。順調なスタートを切ることができた。200枚のクーポンが売り切れるのに要したのは12時間だった。

 飲食をターゲットとしたのは、村田氏によれば「ターゲットが広く、利用してもらいやすいから」で、クーポンの有効期限は2〜3ヶ月に設定している。手数料率は現状30%程度に設定している。

 ただしどこにでもあるものでなく、エッジのかかった内容でなければ肝心なリピートにはつながらないと、キラメックスではレストランをセレクトして営業している。

 ページビューは月間4〜5万であるが、50〜80%引という破格値で売り出すクーポンだけに最近は売れるスピードが早くなり、100枚程度の限定クーポンだと5分くらいで売り切れることもあるそうだ。

 告知は1つのエリアにつき1日1店を集中的に、ツイッター、フェイスブックを中心に定期的につぶやいて、「現在20人が購入しクーポンが成立しました」、「残り20枚ですからお急ぎください」といったように実況するので、ネットを見ている人はついつい購入したくなる。このあたりの駆け引きの心理はオークションに似ている。

「基本は商品の割引を広告費と考えていただきたいです。ユーザーにとっては非常にお得でインパクトがありますから、集客に効果があります。雑誌やフリーペーバーのクーポンはどれだけのお客様が来るのかわかりません。カウポンは先に数量を決めてクレジット払いで売り切っていますから、それだけの集客をあらかじめ見込めるわけです」と村田氏は、従来のクーポンになかった集客の確実性を強調した。


「カウポン」ホームページでは店舗情報にも力を入れている。

 しかも副次的な効果として、クーポン購入者が購入していない人も連れてきたり、時間を延長したり、飲み放題が付いていないなら付けてくれたりと、クーポンにプラスアルファで正規の値段を結構払ってくれるそうだ。なので、商品力とやり方次第では広告費に使った金額を回収するのに、さほど苦労しないケースもあるそうだ。

 たとえば購入を1人何枚までと条件を設定することも可能だ。男女や年齢で条件は付けられないが、ネイルのような一部商品の性質によって女性限定も受け付けている。

 営業面では担当者がしっかりと必ず店舗にまで出向いて、仕組みを説明しプランを提案する。ベンチャーらしい小回りの良さが、「カウポン」の特徴と言えようか。

 東京からサービスをスタートしたが、千葉を皮切りに京阪神などにも進出を予定している。地方は代理店に店舗開拓を任せ、クーポンの発行自体は自社で行う。今年中に全国10エリアの展開を予定している。また、今後は東京を幾つかのエリアに分割することも考えていく。

 既にクーポンをリピートしたいといった依頼もあるが、有効期限が切れてから2、3ヶ月後を推奨しており、短期間での連発は勧めていない。

 クーポン発行時はアクセスが集中し、サーバダウンするケースもあったことから、システム増強にかかっており、顧客が安心して利用できるクーポンサービスを目指している。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年8月26日執筆