フードリンクレポート


ぱど、リクルート、USENと大手メディアも続々参入。
〜半額は当たり前!? 大胆割引で集客、フラッシュマーケティング〜(5−4)

2010.9.2
インターネットで共同購入者を募り、3割引から9割引という大胆な割引設定のクーポンを発行する「フラッシュマーケティング」。アメリカで2年ほど前に始まり、早くも500億円市場にまで急成長していると言われる新サービスだ。日本でも今春より始まり、相次ぐ参入でサービス提供会社は既に30社を超えるという。この「フラッシュマーケティング」の特徴として、飲食店のクーポンが非常に多い。こんなにも割り引いてどんなメリットがあるのか、販売促進につながるのか、取材してみた。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


1000万部以上発行しているフリーペーパー「ぱど」もフラッシュに参入。

ぱど、リクルート、USENと大手メディアも続々参入

 フラッシュマーケティングに参入しているのは、ベンチャーだけではない。これまでフリーペーパー、雑誌、ネットのサイトでクーポンを発行してきた実績ある企業も、こぞってビジネスチャンス到来とばかりに、グルーポン型クーポンサービスを開始している。

 ぱどは8月5日、「CooPa(クーパ)」のサイト名でクーポン共同購入サイトをスタートした。「クーパ」はクーポンとぱどを合わせた造語である。

「クーパ」の特徴は1エリア・1日・1商品限定ではなく、1日に複数の案件の「割引率50%以上の格安クーポン」を売り出すこと。案件によっては2〜4日を期限とすることもある。エリアについては、フラッシュマーケティングの性質上、ツイッターやミクシィなどのSNSが普及し、ネットの口コミによってクーポンが成立しやすい都市部を中心に展開していく。

 まずはこれらソーシャルメディアのアクティブユーザーが最も多い首都圏においてスタートしたが、9月スタートの九州を皮切りに地方の大都市にも広げていく予定だ。

 ぱどの強みは全国に、フランチャイズも含めて約500人いる営業とPC、モバイルといったネットの口コミに加えて、フリーペーパー「ぱど」の読者、また首都圏だけでも約7000人いる「ぱど」配布スタッフ「ぱどんな」による、リアルな口コミが可能な点。バーチャルとリアルのダブルの口コミでリーチを広げ利用拡大を目指すという。


ぱどはフリーペーパーで築いたインフラを活用して「クーパ」の浸透を目指す。

 案件はグルメに限らず、リラクゼーション、ビューティー、美容クリニック、くらし、レジャーといった幅広い分野をしばらくテストしていく方針で、ある時点で反響の良い分野に絞り込む。約500人の営業がいろんな分野の商材を集めてくることができるのが、ぱどのもう一つの強みである。

「ぱど」誌面では飲食業の取り扱い比率が約20%と最も多いが、グルメを中心としたクーポン共同購入型サイトは競合が多く、価格競争になりがちなので、「クーパ」の取り扱いクーポンを飲食業に絞る予定はない。

 クーポンの有効期限は3ヶ月が平均だが、割引率ともども一番効果的な打ち出し方を店舗との話し合いで決める。マージンは50%を基準値としている。

 また、ぱどは格安クーポンで集客した顧客を固定客化するツールとして、「ぱど商売名人プラス」というCRM(顧客管理)システムを有している。このシステムを利用すれば、加盟店共通のポイント発行、顧客分析、再来店を促進するメールマガジン配信などが可能だ。「ぱど」誌面と「クーパ」で集客して「ぱど商売名人プラス」でリピートさせるという固定客化に必要なPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを一気通貫でできる仕組みを提供する。

 このように紙媒体とITを組み合わせたクロスメディアのプロモーションができるのは、20年を超えるキャリアと発行部数1000万部以上のフリーペーパーを発行している実績があるからだ。

「サービス内容に自信を持っているのに認知度が低く集客に困っているお店や空席の克服にぜひ活用していただきたい」(ぱど経営戦略室・大木隆太郎氏)とのこと。

 固定客化の方法や利用目的を明確に持てば、飲食店でもクーポン共同購入サイトを効果的に使うことができそうだ。

 また、フリーペーパーや雑誌で実績がある会社では、リクルートも「Pomparade(ポンパレード)」で7月21日、フラッシュマーケティングに参入した。


「Pomparade(ポンパレード)」。

 人々が時間、場所、つながりを求めるリアルタイムWebの時代に入った時代背景を受けて、「まだ、ここにない、出会い。」、「あなたの街の、とっておきの情報を、お届けします。」をコンセプトに推進する。

 対象領域はレジャー施設、グルメ、レッスン、エステ、ヘアサロン、ホテルなどで、1都市、1社の掲載、24時間〜3日を販売期間とし、その期間内に設定した最低限の人数に達すればクーポンとして成立する。決済はクレジット払いで、販売額より手数料を徴収する。

 ツイッター、フェイスブックなどソーシャルメディアを使って口コミを促進していくのも、他の同種のサイトと手法は同じだ。

 対象となるユーザーに、普段はハードルが高いワンランク上のプチ贅沢、やろうと思っていたが取り組めていなかった新しい体験を、50%オフのような大胆な割引で提供し、ニーズの掘り起こしを狙う。

 クライアントにとっては成果報酬型なのでリスクが少ない広告であり、集客の難しい曜日・時間帯などの席枠を埋めて稼働率の向上に寄与したいと考えている。

「じゃらん」、「ホットペッパー」などで築いた、紙媒体、Webの多くの読者・ユーザーを抱えているのがリクルートの強みで、ここからの集客も図っていく。

 それにリクルートには長年広告メディアとして培ってきた、集客できる文言のノウハウがある。たとえばただの個室タイプの露天風呂がある宿ではなく、「かぎ付き露天風呂」と表現すればカップルの集客に有効といったものだ。同社広報担当者によれば、「そそる表現力で、幾多の競合他社に差をつけたい」とのことだ。

 現在のところ東京でテストマーケティング中だが、売れる商品を見極めて早めに全国展開する意向だ。

 USENもフォアフロントシステムズ(本社・東京都港区芝)と共同で、8月9日「PitaTicket(ピタチケット)」のサイト名でフラッシュマーケティングに参入。50〜70%の大幅割引のチケットを1~3日の期間限定で販売するとしている。


「PitaTicket(ピタチケット)」。

 当初は東京と大阪でスタート、初日は東京のクーポンが40分で完売したそうで好調にスタートしている模様だ。

 音楽放送事業を通じて築いた約65万件の業務店顧客や全国の営業拠点網を生かして、日本最大のユーザー獲得を目指している。お酒を扱う飲食店に強いだけに、飲食業界においてはかなりのシェアーを獲得する可能性は十分あるだろう。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年8月26日執筆