フードリンクレポート


フュージョンvs江戸前。
〜外国人“寿司シェフ”が増加中。フュージョンと江戸前がせめぎ合う〜(3−3)
福江誠氏 東京すしアカデミー 校長

2010.9.3
海外の日本食ブームで、脚光を浴びる寿司。日本で唯一の寿司職人養成スクール、東京すしアカデミーが活況を呈している。中でも、海外の寿司店で働く外国人が“寿司シェフ”を目指して寿司留学してくるという。校長の福江誠氏に海外の寿司事情を聞いた。3回シリーズ。レポートは安田正明。


バナナを巻いてチョコレートソースを添えたブラジルの「モンキーロール」。

フュージョンvs江戸前

 海外では、変わり寿司が多い。福江氏の著書『日本人が知らない世界のすし』(日経プレミアシリーズ)でも数多く紹介されている。アメリカでは、芋虫をイメージしたアボガド寿司「キャタピラーロール」。メキシコでは、唐辛子入りスパイシーソースが入った「タンピコロール」。ブラジルでは、バナナを巻いてチョコレートソースを添えた「モンキーロール」。世界各地でその土地ならではの様々な寿司が誕生している。


芋虫をイメージしたアボガド寿司「キャタピラーロール」(アメリカ)。


唐辛子入りスパイシーソースが入った「タンピコロール」(メキシコ)。

「アメリカ発祥のフュージョン系と、本家日本の江戸前が今、世界でせめぎ合っています。 欧州は完全にフュージョンですね。授業では江戸前を教え、フュージョンは教えません。でも、リクエストが多いので最後の方でちょっとやる。彼らは国に帰ると現実的にはフュージョンを作りますから。彼らには日本の食文化、江戸前を知ってもらうため、築地市場や様々な日本文化を見に行ってもらいます。包丁も毎日研がせています。」

「お客の喜ばせるため、シャリを飛ばしてネタの上に着地させるパフォーマンスを行っている寿司シェフもいます。でも、魚を捌いたりする所作がパフォーマンス。包丁捌きそのものを食い入るように見ています。海外のお客にとっては職人が普通にやっていることでスタンディング・オベーションで称えられるんです。但し、マグロの解体ショーは海外では反発されます。特にクロマグロ。ある程度の階級の人は環境保護への意識が高く全く受付ません。店の店頭にクロマグロを使ってないことを表示している店もあるくらいです。」

 ロシアなど東欧や北欧からの要望が強く、年に1〜2回出張で教えに行っているという。スクールを開くと反響がものすごい。同行では海外分校を計画している。まずはアジア。韓国、タイ、シンガポール、北京、上海あたりが候補先。

 また、海外での新規開業のプロデュースも計画。現在は「寿司JOB」という海外の寿司店と寿司シェフのマッチングサイトを運営している。現在は無料。

「今も週に何件も求人依頼が来ます。ビザ取得のサポートをしてくれないなど、不安のある店舗はスクリーニングして無料で掲載しています。今後は、海外在住の日本人を日本食コーディネータとして認定する制度を考えています。海外に暮らす日本人には日本のすし職人を紹介してくれと頼まれる事が多い。そこでマッチングしてあげて、成功報酬で現地コーディネーターにも報いる方法です。」

 ロンドンでは毎年「オリジナル寿司コンペティション」が開かれ、ユニークな寿司作品が続々生まれている。世界中でローカル化した寿司が食べられているゆえに、今の寿司ブームが続いている訳だ。日本人もどんどん世界に本家の江戸前寿司でチャレンジして欲しい。ミシュランガイドで日本の寿司店が評価され、江戸前寿司への理解も徐々に浸透するだろう。ローカル化したフュージョンと本家の江戸前寿司の両者が互いに刺激し合ってますます寿司の人気が広がっていくことを期待したい。


■福江 誠(ふくえ まこと)
東京すしアカデミー校長、東京すしアカデミー本科校長、東京すしアカデミー株式会社代表取締役、JSIA寿司インストラクター協会理事長。西新宿で「まこと寿し」を経営。1967年、富山県に生まれる。金沢大学卒業後、株式会社TKCに勤務。1995年、寿司業界の経営指導の草分け的な経営コンサルタント渡辺英幸先生のもとに弟子入り。5年間の勤務コンサルタントを経て、2000年個人事務所を設立。東京の超繁盛店「梅ヶ丘寿司の美登利」「神田江戸っ子寿司」をはじめ、数々のチェーン寿司店、個人店の経営指導にあたる。2002年日本初となる社会人向け寿司スクール「東京すしアカデミー」を設立し、校長に就任。卒業生は1000名を超え、200名以上が海外で活躍中。

東京すしアカデミー
まこと寿し

【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年8月26日取材