フードリンクレポート


系列事務所で芸能活動を行うアイドルが働くメイド喫茶も。
〜アイドルに会いに行けるお店、じわり増殖中〜(5−4)

2010.9.21
「会いに行けるアイドル」をコンセプトに、秋葉原のカフェ付き小劇場からメジャーにのし上がったアイドルグループがAKB48。今やテレビ、雑誌で見ない日はないその成功に学んで、カフェ、バー、居酒屋といった飲食店にてアイドル、タレントが働いて、ファンと直に交流できる「タレントカフェ&バー」ともいうべき業態がじわじわと増えている。その背景にはアイドルをもっと近くで感じたい、ファンのニーズがある。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


秋葉原のメイド喫茶老舗「ミアカフェ」。カレー、ケーキ、オムライスなどはメイドが席の前でお絵描きしてくれる。

系列事務所で芸能活動を行うアイドルが働くメイド喫茶も

 秋葉原のメイド喫茶でも老舗になる「ミアカフェ(Maid in Angels’ Cafe)」は2004年4月のオープン。開業以来、メイドのルックスレベルの高さには定評があり、作詞家の秋元康氏が05年にAKB48をプロデューサーとして立ち上げる時に何度も視察に訪れたほどだ。

「秋元さんは秋葉原のメイド喫茶を熱心に回っていらしたですよ。ウチには特によく来られていました。AKB48を立ち上げた頃はまだ良いメンバーが揃っていなくて、どうしたら女の子が集まるのか質問もされていました。よく秋葉原のメイドでスカウトされていましたが、待遇が悪すぎて誰も行かなかったようです」と、感慨深げに話すのは同店を経営する、ナーズアンドギークス取締役副社長・寺島弘祥氏。

 現在は撤去されたが、AKB48劇場にあった、メンバーの缶バッチやお気に入りメンバーと2ショットチェキが撮れる券などが当たるガチャガチャなどは、メイド喫茶のサービスをヒントに設置したものであった。


「ミアカフェ」 外観。


店内。

 現在は行っていないが、「ミアカフェ」ではAKB48の衣装のレプリカを着て接客する、AKB48応援キャンペーンを過去に何度か開催した。ナーズアンドギークスは系列にミアコスチュームというアパレル部門を有しており、メイド服やコスプレ衣装を製造販売しているが、そのアパレル部門で衣装は作成した。 

 卒業生の中にはAKB48の姉妹グループで名古屋の栄を拠点とする、SKE48に入った人もいる。

 ルックスレベルの高いメイドが集まるのは、アルバイトの待遇を良くしているからで、時給800〜900円の店が多い中で研修期間中も時給1000円以上が可能。社内規定を満たせば1ヶ月最大で4万5000円の家賃補助を支給している。そのため毎月500人程度の応募があり、採用者は1、2名なので300倍の倍率とまで言われる。

 時給が高いので、本来は常時満席でなければペイしないが、さすがに今はそこまでの集客はない。しかし「ミアグループ」のシンボルとしての役割を担っていて、グループ会社には先ほどのアパレルだけでなく、イベントコンパニオン派遣事業、アニメなどのマーケティング、撮影スタジオなどの分野があり、そちらで利益が出ているので続けているという。

 また、グループのメイドを使った事業に、05年12月にオープンしたリフレクソロジーの「ミアリラクゼーション」、今年3月に新設した秋葉原を観光案内ガイドする「ミアガイド」があり、これら3部門に所属するメイドは希望により「ミア・エンタテイメント」というグループ内の芸能事務所にて、メイド店員として働きながら芸能活動を行うことができる。


火・木限定、「ミアガイドカフェ」のスタッフ。

 つまり、DVDなどを出版したり、テレビ、ラジオ、雑誌などマスコミにアイドルとして登場したり、撮影会を行ったりするのである。

 元々、会いに行けるアイドルとしての側面を持っていた、メイドという資源を生かして店員兼タレントとして売り出している。

「ミア・エンタテイメント」に所属するには、マニアックな趣味を持った明確な個性が必要で、ミリタリーアイドル、投資家アイドル、農業アイドル、節約アイドル、カードゲームアイドル、自動車アイドルなどとして、活動している。

「ミアガイド」に所属する現役高校生のみみりんさんは、8月に「ミア・エンタテイメント」入りが決まり芸能活動を始めたばかり。これからオカルトアイドルとして売っていくのだそうだ。

「子供の頃から宇宙人、お化け、未確認動物が好きで、いつもそんな本ばかり読んでいます」とみみりんさん。見かけは普通にかわいらしいが、確かにマニアックである。

 なお、火曜と木曜の夕方は「ミアガイド」スタッフが「ミアカフェ」で働く、「ミアガイドカフェ」として営業しており、みみりんさんらはカフェ店員となる。


おかわりカードを持つ、オカルトアイドルのみみりんさん。

 ちなみに、ミリタリーアイドルの相原みぃさんは08年駒澤大学の準ミスである一方、散弾銃の所持許可を取得しクレー射撃が趣味。普段は「ミアカフェ」店員として働いている。8月には写真集を発売し、握手会イベントに70人を集めるほどグラビアアイドルとして人気も高まっている。投資家アイドルの今田なおさんも、マネー関係の媒体にたびたび登場している。


ミアカフェ勤務、ミリタリーアイドル・相原みぃさんは8月に写真集を発売した。

「ミアカフェ」の席数は29席。客単価は1000〜2000円で、ランチはカレーまたはパスタに、コーヒーか紅茶と、サラダかアイスが付いて1000円。ソフトドリンクは基本500円均一、アルコールはハイネケンなど輸入瓶ビールのみで1000円である。カレー、オムライス、ハンバーグ、ケーキなどが人気だそうだ。記念にメイドとチェキを撮るのが1枚1000円。


カレーは日替わりメニューがある。


デコってもらったケーキ。メイドとのコミュニケーションが楽しい。

 独特の制度として「おかわりカード」があり、ソフトドリンクを2杯以上注文した顧客は、1杯ごとに1枚引くことができる。当たれば50円または100円の割引券として使える。また「おかわりカード」は当たり外れに関係なく、全てメイドのプリクラが貼ってあり、好きなメイドを指名してその子のプリクラ写真を集めることができる。


当たっても外れても、おかわりカードはメイドのプリクラ付き。

 顧客層はサラリーマン、アニメ好きのオタク層など男性が8割だが、女子高生も来る。

 さらにミアグループには、「ミア・エンタテイメント」ではない外部の芸能事務所に所属して声優、メジャーなアイドルを目指している人もいて、タレントにも会いに行けるメイド喫茶の側面を持った店になっている。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ) 2010年9月8日執筆