
・自家栽培ハーブと調理化学で現代フレンチを提供
「『サイタブリア』が2000年にオープンした頃は、メニューにビビンバや冷麺があって、そういうのが評判良かったんです。ビビンバの具材を1つずつ垂直にならべたビビンバタワーとか。アジアン・フュージョンレストランです。当時は何料理か言えないのがよしとされていました。デザイナーズレストランがブームの頃で、そこではフュージョン料理が花盛りでした。」
「お客様の間でサイタブリアの料理はかくあるべきという固定概念が出来ていて、質の高いものを出してもお客様が響いてくれなかった。今までいろんなことに手を出し過ぎて 料理の柱がなった。あれもできる、これもできるはいい所でもあり悪い所でもある。リセットしないと、料理の質もお客様の満足度も上がらないと、フレンチ『レフェルヴェソンス』に変えました。」

料理イメージ。

料理イメージ。

料理イメージ。
料理コースは1万5千円(税別)の2種のみ。「ルミエール(光)」という鶏肉等を使いライトに見える料理を並べたコースと、「オンブル(影)」という牛肉等を使いヘビーに見える料理を並べたコース。同じ料金で2本のコースは初めての試みだ。
「両コースともに食べてみると満足度は同じです。ヘビーな方は高級食材を使っているのでプラクティスディナーでは注文される方が多かった。でも意外に、ライトな方が満足度が高かった。それが嬉しい。ライトな方で軽いと言われたら負けです(笑)。」

「ルミエール(光)」メニュー。

「オンブル(影)」メニュー。
オープンに合わせて、目黒の建物の屋上を借りて北海道時代と同じく自家農園を始めている。また、那須高原の完全無農薬栽培を手掛ける農園からも野菜を定期的に仕入れる。
「僕がセレクトした種を農家の方に栽培していただいています。それを僕らが摘みに行く。普通には売られていない特別なハーブや特別な野菜を自分たちの手で栽培する。バジルにも様々な種類があります。紫バジル、レモンバジル、シナモンバジルなど。料理のアクセントとして使っています。ベースにあるのは北海道での経験です。」
「味覚は5味しかない。甘い、しょっぱい、酸っぱい、苦い、旨い。ところが嗅覚は300種あり、それを分別できる。フレーバーを料理に加えることができれば、300以上に広がる。だからハーブを料理に使うんです。さらにハーブは健康にも良いですし。魚、肉、フォアグラが主食材であっても、補う野菜はふんだんに使います。フレンチ食べたけど重くないね、と言われます。」
調理法には化学を取り入れる。調理器具ではなく理化学研究用機材を米国からわざわざ輸入した。今後も、新しい機材を取り入れていくという。
「火入れに関しては0.1度単位でこだわります。肉の芯温が58度なのか57度なのか、0.1度単位で刻める温度計で測っています。特にフォアグラは、0.1度変わると完全に破壊されます。」
「料理はクオリティ&コンシスタンシ—(一貫性)。一貫性がないとプロじゃない」とブルメンタール氏の言葉。どのお客様にも同じクオリティーを提供するために化学技術を使っている。現在、欧米のトップレストランで化学技術を活用していない店はないと言われる。日本のフレンチでは科学技術を使うことは希だが、反面一部の日本料理では、出汁の取り方などに活用が始まっている。
厨房にパソコンを持ち込む生江氏。その光景は今までのシェフ観を一掃させる。「星(ミシュラン)はおのずと付いてくる」と自信をのぞかせる。サイタブリアの新しいフレンチへの挑戦が始まった。日本のフレンチに風穴を開けることを期待したい。
■生江 史伸(なまえ しのぶ)
株式会社サイタブリア 副社長 エグゼクティブシェフ。1973年生まれ。神奈川県横浜市出身。1996年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業。都内のイタリア料理店で基礎を学び、株式会社グローバルダイニングでアルバイトとして働く。2003年、3つ星「ミッシェル・ブラス トーヤジャポン」に入店、シェフドパルティー担当後スーシェフに就任。2008年、英国の3つ星「ザ・ファットダック」に入店、スーシェフ及びペイストリー部門担当に就任。2009年、サイタブリア系列の新事業展開に参画。2010年、「レフェルヴェソンス」エグゼクティブシェフに就任。
→「L’Effervescenceレフェルヴェソンス」