
・厚木のB-1効果200億円見込む。本物に認定店制度開始
今回の第5回「B-1グランプリ」は地元厚木市に何をもたらしたであろうか。
まず43万5000人という過去最大の集客となったことで、B級ご当地グルメ及び「厚木シロコロ・ホルモン」が観光資源になると、行政や多くの市民が納得したことが大きいと思われる。参加全団体を合わせると、2日間で40万食以上を提供した。
メディア取材は175本に達し、これほどまでに厚木市が全国放送、全国紙、全国誌に載るのも初めてではないだろうか。

B-1グランプリ会場では地元のケーブルテレビも大々的に報道。

B-1グランプリ当日の本厚木駅前の案内板。

B-1グランプリ当日は市街地に夜店も出た。
市民ボランティア3900人を動員し、ローコストで運営して大きな混乱もなく終ったのは高く評価できる。
人口22万5000人を有し、神奈川県中部では最大の都市・厚木市であるが、JR厚木駅とストッキングで有名なアツギは隣の海老名市にあり、米軍・自衛隊の厚木基地はやはり隣の綾瀬市と大和市、海老名市にまたがる地域にある。丹沢のハイライトである大山登山は隣の伊勢原市からのアクセスとなる。市内には対外的に厚木らしさを明確にアピールできるものがなかったのが実態であった。
七沢、飯山といった温泉地はあるが、県内でも箱根、湯河原ほどのパンチ力がないのが難点なのである。
盛大なB級ご当地グルメの祭典を見事に成功させた、まちおこし団体の厚木シロコロ・ホルモン探検隊を中心とする市民のイベント運営力は大きな財産となり、今後神奈川県あるいは関東圏のB級ご当地グルメの中心地となり、数々のイベントを開催していくことになるだろう。
昨年の開催地、秋田県横手市では運営力を買われて、10月23、24日に「北海道・東北B-1グランプリ」なるローカル版「B-1グランプリ」が開催される。これには「厚木シロコロ・ホルモン」も投票に関係ないエキシビジョンで参加するが、こういったイベントで、秋田県での横手の位置づけと同じく、今後イニシャティブを取っていくことになるだろう。
「厚木シロコロ・ホルモン」は元々厚木市内で「シロ」と呼ばれていた、豚の大腸を焼いた内臓肉の焼肉料理。厚木のシロは、市内の食肉センターで処理された豚の大腸が、管状の生のまま流通する特徴があり、一般の流通では割いてボイルしたものが多いのと異なっている。
提供店では仕入れた新鮮な大腸を丁寧に手作業で水洗いし、各店自慢の味噌ダレに漬け込み、網焼きでじっくり焼き上げる。焼いている間に丸まってコロンとしてくるので、2007年3月に探検隊が記者発表し「厚木シロコロ・ホルモン」と命名して地域ブランド化をはかったものだ。
探検隊は厚木市商店会連合会の若手メンバーで集まって、元気がなくなってきた市内の商業をなんとか活性化しようと討論を続け、「シロで始まりシロで終わる」と言われる、厚木のホルモン焼文化、焼肉文化に絞り活動を続けてきたものだ。
「探検隊のメンバーに飲食店は入っていません。私たちは営利目的なのではなく、ボランティアでまちおこしをしています。イベントでシロコロを食べておいしいと感じたら、厚木にまで来ていただき、もっとおいしいシロコロを味わってもらいたい。食べ歩きに来る観光客が増えれば、街の活性化になると考えています」と中村昭夫隊長。一般社団法人「あつぎ街おこし応援団」代表理事でもある。

厚木シロコロ・ホルモン探検隊の中村隊長(左)、小野塚副隊長(右)。

厚木シロコロ・ホルモン探検隊は、今回のB-1グランプリで1万2000食を提供した。
その成果として「B-1グランプリ」初参加の第2回富士宮大会で5位。この時、行列が5時間待ちとなるほどの人気となり、雑誌の記者が選ぶB級ご当地グルメ1位に掲載されるなど確信を得た。そして翌年の第3回久留米大会で優勝し、一躍知名度が高まった。
日本一のなって以来2年間の経済波及効果は330億円、今年1年で200億円を見込んでいるのだそうだ。
中村隊長と小野塚徳博副隊長によれば、「ホルモンは厚木に根付いた文化で、子供の頃は母親に晩ご飯のおかずを買ってきてとお使いを頼まれて、よく鍋を持ってもつ煮込みを買いに行った」という。ホルモン焼の店が小田急線本厚木駅前に軒を連ねていた。
厚木では周辺の綾瀬市、寒川町などとともに戦後昭和20年代から養豚業が盛んになり、日本の高度成長とともにいわゆる「高座豚」の産地として発展し名を馳せた。その関係で屠畜場があり、安くて新鮮なホルモンが流通する環境にあった。駅前には一升瓶にホルモンを詰めてタレ付きで販売する業者もいた。
大腸は豚1頭から70cmくらいしか取れない希少部位だが、当時の感覚では厚木なら産業廃棄物としてふんだんにあったのである。
現在は宅地化のため市内の養豚業者は2軒を数えるのみだが、市内南部東名高速道路と小田原厚木道路の厚木I.C.近くに神奈川食肉センターがあり、関東一円の豚を解体して出荷している。
そうした歴史的背景もあって、シロを出すホルモン焼店、焼肉店は、「B-1グランプリ」に参加し始めた頃で市内に50店、現在では100店近くにまで増えているとのことだ。
ところが「厚木シロコロ・ホルモン」が有名になると、まちおこしに関係なく単に金儲けに利用する便乗商法が盛んになってきた。
本厚木駅前を歩いていると、やたら「シロコロあります」の看板やノボリを目にするが、例えば牛のシロコロは高座豚の産地だった厚木になじまないし、厚木以外の業者から明らかに仕入れてシロコロを出している店もある雰囲気だ。
これには探検隊も頭を抱えており、「厚木シロコロ・ホルモンはあくまで厚木に来てもらって食べるものとしてブランド化しています。通信販売で売っていないし、牛はとんでもない。チェーンの居酒屋だからといって、横浜、相模原、赤羽、郡山で出してもらっては困るのです」と語る。
通販業者でメディアの露出も多い厚木シロコロ本舗、厚木に本社がある外食企業オーイズミフーズの炭火七輪「じゅう」に対しての批判である。「じゅう」郡山店は福島県の店舗であって、まちおこしを目指す地産地消の趣旨とはかけ離れてしまっている。

オーイズミフーズの炭火七輪「じゅう」。本厚木駅前でB-1に合わせてオープン。厚木市内では愛甲石田駅前にもある。
対策として、探検隊では今年4月より、「厚木シロコロ・ホルモン」が食べられる店を「認定店」、関連の菓子・雑貨を売る店を「推奨店」として認定制度を始めた。
厚木市内にあって、神奈川食肉センターから出荷する筒状の大腸を使っており、まちおこしに賛同できる。これら3点が認定基準である。
「認定店」は14店。よくメディアに取り上げられる「千代乃」、老舗で市民にもよく知られている「鬼の家」、シロコロ入り焼きうどんも出す鉄板焼の「ばかすや」、シロコロ入りのそばや丼もある立ち食いそば「蕎麦や
忍庭」などがあり、食べ方もオーソドックスから焼きうどん、そば、丼までバラエティーに富んでいることがわかる。

「千代乃」。

「鬼の家」。厚木の人気ホルモン焼店の1つ。

立ち喰いそば「忍庭」。シロコロ丼に横手やきそば、甲府鳥もつ煮も提供するB-1大好きな店。
「推奨店」は2店。小野塚副隊長が経営する「ピーナツのオノヅカ」では、厚木のお土産として「厚木シロコロ・ホルモン」味のせんべい、チップスなどを開発。11月には新商品として「厚木シロコロ・ホルモン」味「柿ピー」が発売予定となっている。どこにでもあるような菓子では魅力がなく、地域の食文化に根ざした商品を売っていきたいといった思想が根底にある。

ピーナツのオノヅカ。厚木シロコロ・ホルモンにちなんだ菓子、雑貨が買える。

ピーナツのオノヅカ、厚木土産の厚木シロコロせんべい。
もっとも、古くから営業している焼肉店にも、探検隊とは距離を置く店もあり、市民から人気が高い1965年創業の「酔笑苑」では「当店のシロコロは厚木シロコロ・ホルモンとは異なります」とわざわざうたっているほどだ。

酔笑苑では厚木シロコロ・ホルモンと、当店のシロコロは別物と距離を置いている。
同店にしてみれば、20年以上も前から愛されているメニューに対して新参のライバルが攻めてきたという感覚なのではないかと思う。同様に考える店も特に本厚木駅周辺部にはまだ多いようで、焼そばの富士宮市、横手市のような業者で一丸になってといった雰囲気には欠ける。そこが課題として残っている。
しかし同店が厚木式シロコロを初めて出した店ではなく、戦後間もなくバスを改造した屋台で売っていたのがどうも発祥らしい。
中村隊長、小野塚副隊長のアドバイスのもと、「千代乃」にて「厚木シロコロ・ホルモン」を食してみた。本厚木駅前から車で北へ20分ほど走った郊外にある「千代乃」は、厚木市民から見れば市街からは離れていて、シロコロの代表店とされるのに抵抗がある向きもあるようだが、多くの他の店と異なりランチ営業をしているので、取材に使いやすいといった事情がある。
撮影の見栄えが良いので、シロコロ(400円)を3人前注文。炭火を起こした七輪が運び込まれ、網焼きにする。
イベントの際は早く提供するために、予めボイルし味付けたものをスタッフが焼いており、千切りキャベツを添えているが、お店での提供方法とは異なる。
お店ではあくまで生のシロコロを、顧客が自分で七輪で焼く。焼き上がると平べったかったシロコロが丸まってくる。それにニンニク味噌を付けて食べるのが本来の厚木流。焼き上がるまでは生キャベツにニンニク味噌を付けて食べながら、一杯やって待つ。

「千代乃」にて。キャベツにニンニク味噌。シロコロが焼けるまでキャベツをかじって待つのが厚木流。

「千代乃」にて。調理前のシロコロ。3人前。

「千代乃」にて。七輪でシロコロが香ばしく焼き上がった。

「千代乃」 シロコロチャーシュー(600円)。
さて、お味は余計な脂が落ちているので、ホルモンのわりには意外とあっさりしており、しつこくない。それはイベントでも感じたが、提供方法が異なるので別の料理といった感想を持った。探検隊が厚木で本物を体感してほしいと勧めるのも、分かる気がする。
この店のオリジナルメニューとして、シロコロのチャーシューがあり、これが滅法旨い。ラーメンにも入っているが、お勧めである。
「千代乃」は11年前に魚系居酒屋としてオープンしたが、2007年3月にホルモンを中心とした焼肉屋に転換した。時流を読んでの決断であった。
25席あるが、20台近く車が泊められるよう駐車場を確保している。一人で行動する人も多いB級グルメのオタクに来てもらうには、こういったサービスが効くのだという。客単価はランチ1250円、ディナー2250円ほど。
横浜や丹沢を観光したついでに立ち寄る観光バスのツアーのルートにも入っており、売り上げは上々のようだ。筆者が訪れた土曜のランチも、満席に近い入りで安定した人気がうかがえた。
さて、B級グルメ全般に話を戻すと、地域の食文化というよりも、個別の店の味を全国に広めたいニーズも高く、「B-1グランプリ」と同時開催で、神奈川県の食を集めた「ロコフードフェスタ KANAGAWA」が、厚木市役所前の厚木中央公園で開かれた。

ロコフードフェスタ KANAGAWAは、B-1と同時開催。
39のブースが出展し、プラスB-1殿堂入りの「厚木シロコロ・ホルモン」、「富士宮やきそば」、「横手やきそば」の3団体も出展した。
こちらも大盛況であったが、厚木商工会議所青年部がシロコロに対抗して広めようとしている「厚木バーガー」が目を引いた。厚木の名産品である、豚ロースの味噌漬け「とん漬け」を挟んでいる。

厚木バーガーブース。シロコロに続くか。
そのほか、平塚市、茅ヶ崎市のしらすを使ったメニュー、小田原市「あげかま」のようなわりと想像のつくものから、大和市「大和名物やわらかホルモン炒め」、横浜市「横浜パラタ」、相模原市「はちみつたいやき」のようなその土地以外ではまず知られていないものまでカオスの状況で、これはこれで面白かった。

平塚市のしらすぶっかけカオリ麺ブース。
このように過去最大の盛り上がりを見せた第5回「B-1グランプリ」によって、B級ご当地グルメブームはいよいよ本格化。参加団体数もピークに達しつつあり、来年の姫路大会で普及段階という意味では集大成を迎えるのではないかと思う。
あとは、富士宮市、横手市、甲府市が始めている他の観光資源とのセット売り、厚木市で始まっているグッズへの展開や第2のB級ご当地グルメ開発など、さまざまな施策で定着をはかっていくことが必要だろう。