
・買収企業は人件費カットで蘇る
薬師寺氏は、渋谷で「エレファントカフェ」「12.6東京」「ボビーズカフェ」など巨大コンセプトレストランを次々に出店していた大阪の外食企業ユージーグローイングアップの出身。同じくコンセプトレストランを作っていたダイヤモンドダイニングに転職した。そのユージーグローイングアップの店舗の一部をフードスコープから買収し、今やダイヤモンドダイニングの傘下となりその子会社の社長となっている。巡り合わせに驚かされる。
「2004年6月に入社。5店目の『竹取百物語』がオープンする直前です。100店舗100業態というコンセプトもなかった。社長もまだそこまでは考えてなかったのでは。100店舗達成は感無量です」と薬師寺氏。
「上場前が一番負荷が高かった。現場に入りながら上場の準備。300ページの上場計画書を松村社長と重田(広報部長)と私の3人で作りました。当時はパソコンが苦手で、1本指でキーを押していました(笑)。お陰でパソコンを覚えられました。リスク、衛生、マニュアルなどを作りました。期限が限られているので、毎日家に帰れなかったです。」
「上場できた時は嬉しかった。この会社が上場会社になるとも思ってなかったですから。 出店数も多く、会社全体が高揚していました。熱い時期です。今もそうですが、その時の密度は違いますね。新しい有能な人材も沢山入ってきました。刺激を受けて自分も成長しないとと思い頑張りましたね。」
「僕はM&Aの取得業務にはあまり関わっていません。僕の意見はほとんど聞かれないんですよ(笑)。買収してからが僕の仕事。人事や営業管理システムを整えていきます。給料テーブルを合わせて行くんですが、これが難しい。たいがい向うの方が給料が高いことが多いですね。経営が立ちゆかなくなるのは給料などの固定費の問題が大きい。その問題に着手しながら、片方でメニューを調整して利益率を上げていく。食材もそうですが一番大きい圧迫要因は人件費ですからね。売上だけ見ると比較的安定している企業を買収しているのですが、それを維持、向上させながら人件費を調整します。それさえやれば流れがみえてくる。でもその交渉が一番難しい。力のある人ほど辞めていく可能性が高いので。モチベーションを維持させることが大事です。」
「フードスコープの店舗を買収した時、ユージーグローイングアップの私の元上司がシークレットテーブルに店舗とともに入社してきました。向こうも気を使ってくれましたが、最初の2ヶ月間は打ち解けることに時間を使いました。力のある方に残ってもらう為です。サンプールを買収した時は、ほぼ全員が辞めていきました。」
・アメーバーのごとき隙間産業
「ウチのいいところは、社員同士の仲がいいこと。隔たりがない。今でこそ上の人っぽく見られますが、他社に比べて下と近い。「薬さん」と今も呼ばれてますよ(笑)。」
「アメーバーのごとき隙間産業と言えます。他社がやらないところ、隙を狙ってる感じ。常に形を変えられるのが良さ。こうじゃなきゃいけないがない。良く言うとやわらかい、悪く言うと いいかげん。大所帯になっても、意固地になって守ることはしません。いつでも攻めていける。」
「FL50%以下、1店も退店しない、という意地はありますが、戦略的な部分でアメーバー的です。まだまだディフェンディング・チャンピオンになっちゃだめ。100店舗100業態という会社のコンセプトが期せずして、常に新しいことをやらないといかんと思わせてくれます。他方、シークレットテーブルをは柔軟性が弱いけどブランド力が強い。ゴールデンマジックやサンプールも戦略が違う。戦略が違う会社がグループ内に同居しています。」
「季節やトレンドにより良い悪いがあります。夏に強い業態があればダメな業態もある。例えば夏はビールが強く、冬は鍋は強い、商業施設は土日はいいけどオフィス街はダメ。それがあるからトータルで安定した売上ができる。大きな視点で見ると、ゴールデンマジックやシークレットテーブルの関係性もそう。アッパー系がダメな時は安い居抜き系がある。何が起きてもどこかが儲かっている。それがダイヤモンドダイニンググループの強みです。時代と共に補完し合い広げていける。」
「今のデフレ時代、どっちの方向に進むべきか迷うことが沢山あります。割引をかけた方がいいのか、我慢した方がいいのか。割引をすると客数が増えるが原価率は悪化する。割引したときにブランド力が劣化する。でも我慢するとお客様が来ない。そこをどう切り盛りするかが難しい。」
「今のFL50%以下という規定は果たして正しいのか、100店舗を機に見直すことも必要かもしれません。シークレットテーブル、ゴールデンマジック共に別のFL目標があります。ダイヤモンドダイニングもそれぞれの業態に合ったFLに変えていきたいですね。時代と共に柔軟に変化できるのがダイヤモンドダイニングの強みですから。」