フードリンクレポート


<毎日連載>
ダイヤモンドダイニング100店舗達成記念!
“DD6人衆”
④ 久保田勝氏
株式会社ダイヤモンドダイニング 常務取締役 管理本部長

2010.10.14
“100店舗100業態”を2005年1月に掲げた時、ダイヤモンドダイニングはわずか8店舗。07年3月に大証ヘラクレスに上場。08年6月に株式会社サンプールを買収。08年12月に株式会社フードスコープの店舗を買収し、株式会社シークレットテーブルを設立。そして09年5月に居抜き専門の株式会社ゴールデンマジックを設立。破竹の勢いで成長を続け、今年10月29日に本体でついに“100店舗100業態”を達成する。その成功には、松村厚久社長が育てて来た6人の幹部の存在が欠かせない。その“DD6人衆”を1人ずつインタビュー。成功の秘訣を探る。7回シリーズ。レポートは安田正明。


久保田勝氏。ダイヤモンドダイニングの金庫番。

上場経験2度目のCFO

 久保田氏は税理士を目指し会計事務所で働く。その取引先だった「すし好」に請われ、同社の会計担当となり、その後、ダイヤモンドダイニングの管理本部長として入社。同社で上場経験2度目だ。

「すし好では井戸(エムグラントフードサービス社長)さんと同時期に働いていました。お客様から、坊主頭で目つきが悪く、言葉遣いの悪い奴がいるとクレームを受けて、確認に行ったら、井戸さん。話せば分かるイイ奴だったんですが(笑)」と久保田氏。

「店舗数がまだ少ない頃で、会計から人事、クレーム対応まで何でもやりました。現場以外は全て経験できました。株式公開を目指していましたが、途中で止めてしまい、仕事が無くなったんです(笑)。」

 その後、上場を目指していたアミューズメント系の会社に移り、ジャスダック上場を助けた。そして、ダイヤモンドダイニングに移り、07年3月に大証ヘラクレスに上場させ、2度目の上場経験を持つ。

「会社を安定させるには利益率も大切ですが、利益額が必要です。僕は昭和41年生まれで、松村社長は42年の早生まれで同級生だったんです。安定した外食企業を作ろうと息が合いました。ただ当初はマルチコンセプトが理解できなかった。外食は店舗数を増やしてスケールメリットでコストダウンして利益を出すという構造だと思い込んでいたから。1店1店がバラバラでスケールメリットが出るんですか?という話を何度もしました。松村社長からは外食は面白いんだ、面白いんだと説得されて入社したんです(笑)。」

「結果、同じ外食でも、寿司屋と居酒屋は収益構造が違いました。寿司屋は原価が高くて、1階路面なので家賃も高い。でも、高い単価で回転が利くので売上高が高く、坪4〜5万円でも家賃比率は10%に落ちる。販促もお金を出して広告を出すのが悪みたいなところがあります。ここに来ると、販促費が高い。それを出さなきゃもっと儲かるのに、こんなやり方はおかしいと大喧嘩もしました。」


松村社長の謙虚さが魅力

 久保田氏は、経理・財務・IRなど管理面全般を担当している。

「大証の上場セレモニーで松村社長が拍子木を鳴らした時、皆は嬉しそうでしたが、僕にはプレッシャーでした。今までと同じにはいかないなと。」

「増資が上手くいき、既存店が生む金で出店も出来たし、銀行からはお付き合いで借りていました。ただ、フードスコープの店舗を10億円で買う時、ちょうどリーマンショックで急に当てにしていた銀行が貸してくれなくなりました。仲介者からは買うの買わないのとせっつかれ、綱渡りをしてようやくある銀行が出してくれたんです。嬉しかったですね。」

「お店で頭をぶつけて7針も縫ったお客様のクレーム処理も担当しました。誠心誠意、謝るしかないので、会ってくれなくても毎日通いました。最後はその方と良い関係を築くことができました。」

「ウチは社長や社員が皆、正直でやりやすいです。絶対的な松村ファンが多くて、社長の笑った顔を見たいと頑張る幹部がいます。僕も含めて、一種の松村教ですね。松村への憧れがあります。特に、謙虚な点が人間として尊敬できます。僕なんかそうなれなくて、上場記念パーティーでは、同業の社長さんから社長は久保田だと思ったと冷やかされました(笑)。」


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき) 2010年10月5日取材