フードリンクレポート


A5ランクの和牛を鍋でいただく。
〜「鍋はおうちで食べるもの」?!シーズン到来、この冬「外食」でこそ食べたい鍋は〜(5−5)

2010.11.5
鍋の美味しい季節が到来、各店ではオリジナル鍋が続々と登場し始めている。ぐるなびのアンケート調査ではこの冬最も食べたい鍋は「ラー油鍋」だという。過去にも「トマト鍋」「カレー鍋」「タジン鍋」などが話題をさらった年もあった。今年はどんな鍋を「誰と」食べたいか。おうちで食べる鍋とは一線を画す「外食」でこそ食べたい鍋をリサーチ取材した。5回シリーズ。レポートは国井直子。


「イマサラ」の「もや鍋」。

A5ランクの和牛を鍋でいただく

 スタイリッシュな空間、窓の外には東京タワーを臨む「イマサラ」(運営:株式会社エーゼット)は2年前の9月に麻布十番にオープンした韓国肉料理のお店。同店の看板料理「もや鍋」は鉄板鍋に山盛りの「細もやし」から名付けたというのは、店前のA看板からもすぐに分かる。ラグジュアリーなイメージの中にもユーモアが感じられつい入店したくなるファザードだ。


東京タワーを望めるビル8階の店内。

 鉄板鍋は二年ほど前に話題になり同店もその頃(2008年9月)にオープン。「世の中の移り変わりが早い中でも流されることなく美味しいものを永く提供したい」という理念のもとにこだわりを追求し現在も人気が高い。

 鍋には生でもいただけるA5ランクの和牛を使用、「もや鍋(上)」が一人前2950円でリブロースをいただける「もや鍋(特上)」は一人前3950円となっている。


出汁が湧いたら具材を投入(店舗ロゴ入り特注大鍋)。
 
 鍋の出汁は二種類から選べる。「和風だし」は鰹と昆布がベースのさっぱり味。「大辛だし」は鰯の出汁をベースにコチジャン、白味噌などをブレンドした大辛味でこちらは新登場。おちょこサイズにひと口の味見をさせていただくと、今までのラー油鍋、ハバネロ鍋に比べ辛味が圧倒的に強い。開発時には「ほどよい辛さ」も何度もトライしたが「大辛」と銘打ってあえて突き抜けた辛さに仕上げたという。具材にはその食感がベストマッチと選んだ「細もやし」、湯通し済みの発色の美しい葉先だけを選んだ「キャベツ」、手作りの「トッポギ」など。肉以外の食材も配慮が行き届き彩りよく鍋全体を引き立てる。


自家製トッポギ(韓国の餅)。

 卓上に用意された薬味の中には「大辛だし」以上に辛い薬味「特製大辛ダレ」が置かれている。メニューには「取り扱い注意」と明記されているが、ピリリとした刺激は鍋の味にアクセントを加えてくれる。


卓上の特製大辛ダレ。
 
 更に鍋をいただくタレは二種類が用意される。ひとつはスダチの香るさわやかな「自家製ポン酢」で、もうひとつは甘さとコクがあり濃厚なのになぜかさっぱりとした風味の「焼肉タレベース」。どちらもさらさらしたタレだが味わいは豊か、ごまかしのなさが感じられる。バリエーションのある薬味とタレ、出汁と食材、そしてそれを囲む空間、肩肘はらずに過ごせそして少し華やかな気分になれるお店だ。


タレ(「自家製ポン酢」と「焼肉タレベース」)。

■「韓国肉料理 イマサラ」
東京都港区麻布十番2-8-10 パティオ麻布十番8階
電話:03-6436-0299
http://imasara.jp/

 「鍋」という料理は誰にでも馴染みがあり、卓上で湯気と香りと共に出来上がるしづる感たっぷりの親しみやすい料理のひとつだ。飲食店にとっては一年で最も忙しい季節は目前。各店「見た目」「味」「食べ方」全てにおいて嗜好をこらし、〆のお食事と最後のスープ一滴までも残さず楽しんでもらえる鍋メニューを用意し、その時期を迎えよう。


【取材・執筆】 国井 直子(くにい なおこ) 2010年10月29日執筆