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寂しさが増す飲食店街に集う、根強いニュー新橋ビルファン。
〜【シリーズ:あの街は今どうなっている?】サラリーマンの聖地、新橋の“今”〜(3−2)

2010.11.9
飲食店はその街にいる人々によって作られ、街の変化と共に姿を変えていく。一つの街で誕生した食のトレンドが全国に広まることもある。どこで誰が何を食べているのか?飲食店をエリアごとに切り取り、徹底レポート。その街と飲食店の“今”が見えてくる!今回、取り上げるのは、新橋。サラリーマンの聖地としてお馴染みの新橋は、多様な業態がひしめき合う飲食店密集エリア。このエリアを探れば、サラリーマン層の新たなトレンドが見えてくるはず。第1回目は、新橋の中心部ともいえる、ニュー新橋ビルとその周辺エリア。サラリーマンの聖地のど真ん中に飛び込んだ。3回シリーズ。レポートは村田麻未。


常連が集う、ニュー新橋ビル1Fの「とり茂」。

寂しさが増す飲食店街に集う、根強いニュー新橋ビルファン

 前回に引き続いて、ニュー新橋ビル(下記地図の黄色のポイント)。2階には40〜50席ほどの中規模居酒屋が5店舗ほど入っている。しかし、フロアの人通りは一気にまばらになる。客引きで連れてこられたグループ客が入るのと、行き先の決まっている常連客が来店しているようだ。その一つ、居酒屋「初藤」へ。ニュー新橋ビルオープン当初から店を営んでいるという「初藤」。5年前に改装したという店内は小ぎれいで、雰囲気は良い。客層は40〜50代のスーツ姿の男性サラリーマンだ。

【地図】

黄色のポイントがニュー新橋ビル


ニュー新橋ビル2Fにある「初藤」。ほとんどが常連。新橋サラリーマンが集う。


「初藤」エントランス。ニュー新橋ビルの中では真新しい雰囲気。


シラスぽん酢、味噌キュウリなど、居酒屋メニューが豊富。

 店長によれば、「常連のお客様がほとんどです。開店当初から通っていただいている方も多く、定年後も来てくださる方もいらっしゃいます。そのせいか年齢層は少し高めですが、単価は4000円ほどで周辺の相場よりも高めです。でも、ここ2年くらいは業績が厳しいですね。実は、今週から営業時間を30分後ろ倒して、17:00開店にしたところなんです。昔、景気が良かった頃は週初めでも18:00過ぎには連日満席で、16:30の開店直後から、打ち合わせがてら飲み始める方もいらっしゃいました。JR関係の一日3交代制勤務の早番だった方や、汐留開発時の建築関係者は、まだ明るい早い時間から飲まれていましたね。」新橋らしいエピソードである。

 3階、4階にも上がってみたが、ますます閑散としていて、かなり寂しい状態。賑わっていた過去の栄光は見る影もない。


怖いくらいに静まりかえる4階フロア。

 そして、ニュー新橋ビルで最もディープなゾーンである、地下1階の飲食店街へ。このフロアは、10坪程の小規模な居酒屋や小料理屋がびっしり軒を連ねている。まず、驚いたのは、店頭で客引きをしている女性従業員のほぼ全員が日本人以外のアジア人であること。中国人が多いだろうか。ミニスカートをはいて、ピンクのエプロンをして、片言の日本語で盛んに引きをしている。飲食店街というよりは、違う業態の店かと錯覚する雰囲気である。この数年でこの傾向が加速したという。店の入りは19時を過ぎても、多くの店では5割以下。人通りも少なく寂しい状況である。


19時台でも人影はまばら。


店頭で客引きをしているのは、みなアジア系の外国人女性。

 そんな中でも満席の盛況ぶりだったのが、野球を見ながら飲める居酒屋「新橋ベースボール居酒屋 三冠王」と、10席ほどのカウンター居酒屋「とり茂」。


点数が入るたび、歓声が上がる「新橋ベースボール居酒屋 三冠王」。

「とり茂」は、焼き鳥が売りで、新橋の居酒屋に詳しい人には有名な店。地下フロアで唯一壁の無い、暖簾だけで仕切られた店である。この時にいたのは、新橋の常連、ニュー新橋ビルの常連だという面々(冒頭写真)。月に1回、2回は必ず来るという。ニュー新橋ビルが好きというニュー新橋ビルファンがいるらしく、顔馴染みになるようである。カウンターだけなので、カウンターに並んで飲んでいると、大将や他のお客とも自然に会話が生まれ、気付けば、店にいる全員での会話になっていた。これが新橋ならではの雰囲気なのかもしれない。


「とり茂」外観。


店主の出身地山形県の料理もメニューに。「玉こんにゃく」と「かつぶし茄子」。

 時代とはいえ、ニュー新橋ビルの閑散ぶりは寂しいものがあった。ビルとしては大きいので、全体的なリニューアルは難しいのかもしれないが、立地がとてもいいだけに残念である。そして、あのディープな雰囲気が好きな根強いファンもいる。うまく利用した、新たな展開がないものだろうか。


【取材・執筆】 村田 麻未(むらた あさみ)  2010年10月22日執筆