
・老舗を飲み込む大手の波。路地にこだわりのある専門店が生き残る
SL広場から道を挟んで西側に広がるエリアは、大衆居酒屋が並ぶ通りとその裏には、烏森神社を中心に細り路地がいくつも交差し、数十年続く老舗の焼き鳥屋や居酒屋が並ぶ通り、その昔新橋芸者の置屋だった面影を残す通りがある。
【地図】
今回は、昔の面影を残す紫線内のエリアに注目。

かつては置屋や料亭があった、しっとりと落ち着いた路地。
まずは、大手居酒屋チェーンも出店する目抜き通りから。歩き始めてすぐ目に留まったのは居酒屋「しゃかりき」。メニュー看板がいくつも店頭に置かれていて、何が売りなのかはよく分からないが、賑やかな雰囲気が居酒屋としてはわかりやすい。入ろうとすると、満席だった。客席120席を超える大型店舗にもかかわらず、水曜19時前で満席とは、繁盛ぶりが伺える。水曜以降、木曜、金曜は予約がないと入れない場合が多いとのことだ。

「しゃかりき」外観。
店の裏側に回ってみると、何かの仕込みを行っている光景に遭遇。なんと、自家製のからすみの仕込みだった。国産のボラの卵巣を生で仕入れ、何度も血抜きの作業を繰り返して作るという。12月頭くらいからメニューに加わるとのこと。手間かけた仕込みを行っているのが人気の秘密なのかもしれない。

「しゃかりき」の裏口で行われていた、からすみの仕込み。
目抜き通りを進んで、右側の細い路地に入ると、店頭で立ち飲みできる居酒屋がある。ここで30年近く店を営む、ホルモン焼きの「野焼」。ホルモンを中心に炭火の串焼きや七輪焼きが楽しめる。訪れたのは21時過ぎで、店内に3組、店頭で1組のサラリーマンが立ち飲みをしていた。
「全盛期は、この店頭に人があふれて、100人は立ち飲みしていましたよ。10年以上前ですけどね。」と語る店員。年季の入ったメニュー看板にはホイスのシール。ホイスとは、薬草酒と焼酎を炭酸で割った、チューハイの元祖とも言われる飲み物。聞けば、通の間では、ホイスが飲める店として有名だという。

年季の入った木製のメニュー看板。

通りに面して開け放たれた焼き台の横でモツが煮込まれている。

ホイスとモツの煮込み。
「最近は、全体的に新橋のお客さんの質が下がった気がします。昔はもっと粋な人が多かった。飲み方も店の使い方も。例えば、混んでいる時は気を遣ってくれて、食べたい物、飲みたい物を手早く楽しんだら、店を変えるとかね。今は常連のお客さんがほとんどで、年齢層が上がってきました。店が下の世代に受け継がれなくなったようですね。部下を連れてのみに行かない人が増えたし、上司とは飲みに行きたくない若手が増えたんでしょうね。」とも。時代と共に、客の質も変わってきたようである。
そして、ここ数年でこの界隈の老舗が次々と店を閉めている。36年間営業をしている焼き鳥店の店員によれば、「古い店から潰れていきます。数年で大手資本のチェーンの飲食店が急に増えたのが大きいですね。それと、粋なお客さんが減りました。」前述と全く同じコメントである。「お金払いは悪くなりましたよね。以前は2軒、3軒とはしごが当たり前だったのに、今は1軒で十分みたいな。霞ヶ関が近いこともあって、官庁関係の人も多いのですが、引退されたり、社用ではあまりお金を使えなくなったりで。」新橋の老舗も大手の波に飲み込まれようとしている。
ただ、細い路地に入ると、繁盛店も多い。居酒屋というよりは専門店。焼き鳥、炉端焼き、馬肉料理、寿司、イタリアンバール・・・。固定客がついているのか、20時を過ぎると満席の店が多く賑わいがある。こだわりのある、特徴ある店が残っていくようだ。細い路地の飲食店が賑わっている光景がいい雰囲気を醸し出していた。新橋らしい光景である。

満席の炉端焼き店。活気が外の路地まで伝わってくる。
最近は、このエリアにもイタリアンバールやビストロが登場。そのような業態の店には女性客が多い。OLと思われる彼女たちは、30〜40代。丸の内や銀座にいるようなタイプではなく、貫禄ある落ち着いたタイプ。居酒屋でもよく見かけた。お酒の飲みっぷりもよく、店としてはいい顧客なのではないだろうか。

13席+立ち飲みのイタリアンバール「Barbone」。連日満席の人気。

男性が多い新橋でも、イタリアンバールやビストロには女性が多い。

「Barbone」の「イナダと水茄子のカルパッチョ」(650円)と「ピクルスとグリーンオリーブ」(550円)
お客の質は変わろうとも、それでも依然多くの人が飲食をするために訪れる街、新橋。大手の波が押し寄せようとも負けない老舗やこだわりの店が路地に息づいていた。