・ビストロが増殖、地方色豊かなエンタメにも期待感
2010年後半の飲食は、サラリーマンの街「新浜田」=新橋、浜松町、田町の活気が注目された。
そうした中で、ミドルから少しアッパーなゾーンを開拓したのはビストロだった。ビストロは少し前から30代くらいの女性に人気であったが、それがサラリーマン男性に広がったのが今回の特徴で、ここ数年お酒の需要を満たしてきたトロ箱系、昭和風チープ居酒屋に変わってトレンドの中心になっている。
出るお酒も、焼酎からワインにシフトした。この流れからも2011年も焼酎苦戦、ワイン好調は変わらず、ビストロは増え続け都心部から郊外にまで広がる模様。魚介類などのトロ箱系やもつ焼を含む昭和風チープ居酒屋は一巡して、生き残り競争に入ったと見ていいだろう。
ただし、ワインは値段の安い輸入物が中心。国産は全般に高いので不調ではないが顕著に売れているわけでもないようだ。2011年は国産ワイン、特に大産地である山梨がどのようにクローズアップされてくるか、注目したい。
ところでアメリカのサンフランシスコから車で1時間ほどのワインの産地ナパ・バレーは、カリフォルニア州ではディズニーランドに次ぐ年間470万人も観光客が訪れる大観光地なのである。つまりワインと食事を楽しみに行く。
東京からの距離を考えても山梨の勝沼は観光には非常に手頃な距離だ。2010年のB級ご当地グルメの祭典「B-1グランプリ」では、「甲府鳥もつ煮」がグランプリに輝き早速メニューに加える居酒屋、惣菜店も全国に急増している。甲府を中心に「甲府鳥もつ煮」食べ歩きの観光客も増えている。
2010年の「B-1グランプリ」に輝いた「甲府鳥もつ煮」。
行政がどういうふうにトータルで山梨の食をアピールしていくのかにもよるが、軽井沢、湘南に続いて山梨の勝沼、塩山、石和、甲府あたりに東京で流行りのレストランが地産のワインとそれに合った料理をメインにして、そろそろオーベルジュのような形態を含め進出し出すかもしれない。
2011年3月九州新幹線鹿児島ルートがいよいよ博多から鹿児島中央まで全線開通する。九州の食は引き続き注目されそうで、九州料理は堅調に推移すると思われる。
また、朝の連続テレビ小説「てっぱん」で話題になっているお好み焼も活性化するのではないだろうか。
新しくオープンした広島お好みロール「アルテ」下北沢店。
エンタメ系では、秋葉原の歩行者天国が再開されたので、メイド系、コスプレ系は立地を選ぶが堅調と見る。アニメ、漫画好きのオタクやゴシック・ロリータが趣味の女性は必ず一定数いるので、アキバ系は一度顧客をつかむと簡単には廃れない。一般の消費者も見慣れてきて抵抗感がなくなってきており、観光気分で訪れる人を確保できるだろう。
また、なまはげ、阿波踊りといった全国的にも知られた地方の民俗芸能をテーマにした店が人気だ。東京での地名度を見ると次に成立するのは、高知のよさこい、仙台の七夕、青森のねぶた、新潟の佐渡おけさ、北海道のソーラン節といったものが思い浮かぶ。東京のローカル物では浅草のサンバもありかも知れない。東京近辺の夏から秋の祭で、よさこいとサンバは阿波踊りに次いでよく見るのである。次にどんな業態が飛び出すか楽しみだ。
「阿波おどり」(東京・銀座)
癒しを求める消費者の志向もあって、アクアリウムやプラネタリウムを設置したレストランも増えた。盆栽や畑を設置した店もかなり見かける。2011年はより凝った仕掛けの店もできるかもしれない。