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世界的に日本料理の人気はフランス料理に迫る勢い。
〜2011年の外食業界は都心部と地方にマーケットが分離する〜(5−4)

2011.1.11
2010年の外食業界は一言で言えばデフレ旋風が吹き荒れ、300円以下のメニュー均一料金居酒屋やB級グルメが注目された一年だった。しかし後半には新橋を中心にビストロがブームとなり男性サラリーマン層も取り込むなど、価格が上がる傾向も見えた。2011年は都心部は高価格帯も狙えるが、地方は均一居酒屋が広がるといったマーケットの分離が進みそうだ。5回シリーズ。レポートは長浜淳之介。


ラーメンブームのシンガポールでも人気の一風堂。

世界的に日本料理の人気はフランス料理に迫る勢い

 2010年は羽田空港の再国際化、成田スカイアクセスの開業で、東京、そして日本と海外、特にアジア各国との心理的距離が縮まった年だった。羽田空港新国際線旅客ターミナルには「江戸小路」などの商業施設もオープンした。


羽田空港新国際線旅客ターミナル 江戸小路。

 そうした時代背景も踏まえて、いちよし経済研究所・鮫島誠一郎主任研究員は「2011年は日本の外食がアジアを中心に海外に積極的に展開していく年になる」と予想している。

 尖閣諸島の問題をきっかけとする中国人の反日感情の盛り上がりはリスクだが、反面中国人は日本のファッション、アニメなど生活スタイルには強い憧れを抱いており、もちろん食スタイルも例外ではない。それは中国人に限ったことではなく、アジア全般に言えることだ。

 アジア諸国の所得は上がってきており、中国の上海、北京、香港、韓国のソウル、プサン、台湾の台北、シンガポール、タイのバンコク、マレーシアのクアラルンプールなどといった都市がまずターゲットになるだろう。

 日本料理の人気はいよいよ世界的に勢いを増しており、わざわざ「ミシュラン」が東京・横浜・鎌倉版、京都・大阪・神戸版でだてに星を連発しているわけではない。美食の国フランスの企業だけに、日本食は商売になると踏んでのものではないだろうか。

 ニューヨークを拠点とするグルメガイド「ザガットサーベイ」でも世界主要国のトップ40のレストランを国料理別に集計した場合、日本料理の人気は世界2位で、1位のフランス料理に肉薄している。

 最近は、フランスやアメリカでは日本の弁当が人気になっており、彼らなりにアレンジした「bento」を持参して出勤する人も増えている。日本人は米を食べなくなっているが彼らは逆に米を食べるようになってきており、イタリア米やカリフォルニア米が重宝されているようだ。


海外の弁当本。弁当本は書店の売れ筋。

 日本の弁当は欧米のサンドイッチと違ってバラエティーに富んだおかずが入っており、栄養バランスもいいというのが「bento」人気の理由で、「bento」本が多数出版されている。日本人が製造する弁当箱も売れており、日本に拠点を構えて弁当箱をフランスに通販して儲けているフランス人もいるほどだ。

 弁当に似た概念として外食では定食がある。また、カフェ形態ではカフェ飯もある。これらはひっくるめて輸出して面白い商材だ。こちらは欧米向け、または欧米や日本での留学、勤務経験があるアジアの富裕層が住む街向けになろうか。

 海外では日本食ブームに従って日本酒の人気も高まっていて、醸界タイムスによれば「2010年の日本酒輸出は戦後最高のペース」だという。輸出のシェアーはまだ2%に過ぎないが、当面輸出はアジアを中心に伸び続けると思われる。

 ただし、国民的な消費者のアルコール離れもあって国内の日本酒需要は前年比5〜6%減と苦戦している。根強い郷土料理、B級ご当地グルメの需要、最近伸びが目立つビストロの需要などをいかに開拓していくかが、日本酒の課題であろう。


歌舞伎町オフィシャルタウンマップ。英語、中国語、韓国語で表記。

 海外に話を戻すと、「もちろん世界一海外旅行でお金を使う中国人をはじめ、日本に来る外国人をいかに取り込むかも中長期の課題」と鮫島氏。英語、中国語、韓国語のメニューを作成したり、外国語のホームページを開設するなどやり方はいろいろあるはずだ。より望ましいのは歌舞伎町、秋葉原のように街ぐるみで取り組むことだ。


【取材・執筆】 長浜 淳之介(ながはま じゅんのすけ)  2010年12月31日執筆