・ハイボールは銘柄が多様化、食材では生姜に注目
全般に明るい感じのする外食の2011年であるが、懸念材料は鮫島氏によれば材料高。
「小麦、大豆、コーヒーも上がってきています。うどん、ラーメン、パン、豆腐、畜産飼料にもかかわりますから肉料理、喫茶など、2011年後半には広い範囲に影響が出てくる懸念があります」。
それと2010年は猛暑のためビール、ビアホール、ビアガーデンが伸びたが再びその恩恵が来るかは疑問だ。ビールはそうした追い風がありながらもおそらく2010年はトータルすると前年をやや割っている模様。「プレミアムモルツ」、「ヱビス」のような高級ビールは堅調のようだが全般にパッとしない。
伸びているのは低価格の第3のビールで1割ほど増えているようだ。そうした二極化の中、発泡酒は特徴を打ち出せずに苦戦する傾向があり2割ほど減り、そろそろ存亡の危機となりそうである。
一方でハイボール人気でウィスキーは復活しており、2割近く伸びているようだ。「トリス」を使った「トリハイ」など、ウィスキーの銘柄に消費者の興味が移ってきており、2011年は銘柄の競争になってくるだろう。
しかし消費者のアルコール離れもあって、伸び率では恐らく倍増くらいになっている、ノンアルコールのカクテル、ビールなどが今一番の旬の商品と言えるかもしれない。ますますノンアルコール市場は成長すると思われ、お酒を飲む人と飲まない人が共存する、かつ価格的にこなれてお洒落感もある、バルとカフェとダイニングの中間のような業態が出てくるような気がする。
2010年は前半に新たな集客装置として「Twitter」が登場。フォローしあった人同士の交流から顧客を呼び込む「豚組」のマーケティングなどが注目された。
「豚組」を展開するグレイス・中村仁社長のツイッター。
さらに後半には、「Twitter」を活用して半額、著しきは9割引といった大胆な価格設定で人数を決めてレストランなどのお試しクーポンを発行する、共同購入型クーポンサイトが一気にブレイクした。またの名をフラッシュマーケティングと言う。「Piku」、「グルーポン・ジャパン」、「ポンパレード」などがあり今や百花繚乱だ。
「Twitter」上では飲食業界の有名人やマスコミ関係者、芸能人もたくさんつぶやいていて、さまざまな出会いのチャンスがあるが、短文で書き込む気安さから不用意な発言でとんでもない炎上を起こす場合もあるので常に気をつけないとならない。
頭に血が上った状態でつぶやき続けると、フォローしている人から人へマイナス情報が伝播し社会的信用をなくしてしまう危険性がある。
また、フラッシュマーケティングはあくまで一度試食してもらうために活用すべきで、店舗に魅力がなければリピートにつながらず不発に終わるだろう。
新しいツールはリスクも伴うが、メリットも多い。さらに「Twitter」とフラッシュマーケティングは広く浸透していくだろう。
iPadも話題になった新ツールだが、活用法の試行錯誤が行われている。面白いと感じたのはヒルトンホテルが始めた「おうちde 結婚式」。これは高齢者など結婚式に出席困難な人のお宅に訪問し、iPadを活用し「Ustream」で動画中継した結婚式を見てもらいながら料理を提供するというものだ。ただ35万円払ってこのサービスを受けようという人はごく限られてくると思われる。
最後にこれだけは間違いないというミラクル食材として、2010年は「食べるラー油」があった。ラー油を使ったタンタン麺、麻婆豆腐、サラダ、肉じゃが、鍋など無数のメニューが提案された。ブームのきっかけとなった、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」は今も品薄であり2011年も継続する模様だ。
桃屋の食べるラー油は今も品薄で幻の商品と化すほど売れている。
とは言え、ラー油にはかなり飽和感が出てきているのも確か。それに代わるものがないかと探してみると、有力なのは生姜だ。生姜ブームはじわじわと来ている。
ブームの発端とされるのは永谷園の生姜カップスープで、元々は冷房で冷え症に悩むOL向けに2007年6月に発売。通常カップスープは夏に売れないが異例のヒットとなり、ホット飲料などにアイテムを広げている。他者とのコラボレーションでスナック菓子、ビスケットも発売した。2010年の生姜関連商品の売り上げは10億円以上になっている。
生姜ブームの発端とされるのは永谷園の生姜カップスープ。
永谷園広報では「和洋中どの料理にも合い、デザート、飲み物にもなる。他社製品では入浴剤にもなっている。おばあちゃんの知恵袋的な面白さもあるやりがいを感じる食材」としており、生姜部なる社内のクラブ活動まであるほど熱心に取り組んでいる。
そうした中で、ジンジャーシロップ専門店もブレイクしつつある。
ジンジャーシロップ専門店 銀座コンフィチュール・エ・プロヴァンス。
飲料としてはジンジャーエールやそれを使ったカクテルも面白いか。最近はラーメン屋にも、擦りニンニクとともに擦り生姜もカウンターに置く店がポツポツ出てきた気がする。
お店の話題づくりとして、生姜を使ったパンチの効いたメニューが考案されることに期待したい。