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東京の店は席が選べない?なぜ、客主導じゃないサービス。
〜だから東京の店は客を逃がす!?関西に見る、人を惹きつける接客の極意〜(3−1)

2011.1.12
 東京には、料理が美味しくてサービスも申し分ない、本当にいいお店がたくさんある。しかしその半面、接客について「マニュアル的な対応で心がない」、「何度行ってもよそよそしくて常連になりにくい」という声も。それに比べて関西では、ふとしたことで店のスタッフと話が弾んだり、二度目にはもう顔を覚えてくれるなど、どこか温かみがあって、また行きたいと思わせてくれる対応の店が数多くある。もちろん、東京でも店によって違うが、調べてみると興味深い地域差が見えてきた。心地いい関西のサービスは、東京とは何が違うのだろうか?3回シリーズ。レポートは伊藤由佳。


東京では「こちらへどうぞ」、関西では「お好きな席へどうぞ」その違いとは?

・東京の店は席が選べない?なぜ、客主導じゃないサービス。

 関西から東京に来て数カ月経った頃、ふと気付いたことがある。それは、東京では席をリクエストできない場合が多いということだ。

 きっかけは、ランチに入った新宿のレストランでのこと。一人だったせいか狭いカウンター席に通された。繁忙期を過ぎた時間でそれほど店内が混んでないことを確認し、二人用テーブル席への変更を希望したが、あっさり断られた。

 神楽坂のビストロでランチをした時もそうだ。出入口すぐの席に通されたので、これでは落ち着かないと奥の席をお願いしたところ、一応は代えてくれたものの、どうしてそんなことを言うのか?と納得がいかなさそうな顔つきの店員に違和感を覚えた。席に関する同じような体験は、他の店でも数回あった。

 席をあれこれ言うなんて、私だけなのだろうか?まわりの人に席について聞いてみた。「席を代わりたくてもなかなか言い出しづらい。席についてから、友人とあっちの席がよかったねと話すことはある(20代・神奈川出身)」、「東京だと客を機械的にさばく感じで、席をうつれる雰囲気じゃない(30代・大阪出身)」と感じている人も。また、「私は通された席に素直に座る。基本的にこだわりはない(30代・東京出身)」、「よく行く店なら大丈夫だと分かっているから、声をかけることもある(20代・東京出身)」などの意見もあった。

 ちなみに、新宿の店はその後も数回行ったが、一人で行くと必ず、窮屈なカウンター席に通された。ある日、思い切って「いつもカウンターに通されるが、二人席にゆったり座ることはできないのか」と聞いてみた。

「土日は終日、平日もランチ時間は混み合うので、一人だとなるべくカウンターにお願いしています。ただ、平日の14時以降は比較空いているので、ゆったり座ってもらえますよ」とのこと。確かに、多くの客を入店させ、効率よく利益を上げるにはそうするのが一番だろう。もっともな意見である。

 ところで、東京、関西ではどのくらいの人が席をリクエストするのだろうか?東京(銀座、新宿、渋谷、表参道、恵比寿)と関西(京都、大阪、神戸)のカフェやレストランにそれぞれ1時間滞在し、リサーチしてみた。その結果、東京と関西のリクエスト率にそれほど差はなかった。しかし、それには東西における店側のスタンスの違いが関係しているようだ。

 というのも、東京では「こちらへどうぞ」と店側が決めた席に案内されることが多いのに対し、関西では「お好きな席へどうぞ」と、お客側が席を選べる店が多かったのだ。これはとても面白い発見だった。新宿のレストランのように効率と利益を優先させる店がある一方、関西には客の気分を優先させるカフェがある。

 大阪のビジネス街・堂島に本店を置く「ロンドンティールーム」だ。代表の金川宏氏は「たまたまお客さんが一人で来たからと言って、狭い席に案内するのは本来おかしいことです。うちでは、一人で八人席に座っても構わない。それはお客さんが決めることだから」と笑う。


「ロンドンティールーム」のエントランス。

 英国風のクラシカルな店内は、それぞれパーテーションで仕切られた半個室風になっており、一人で来たお客さんが四人席に座っても追い立てられるような気分にならない工夫をしているという。


店内。ゆったりとした時間が流れる


会社帰りの「おひとりさま」利用も多い。

 ロンドンティールームは、その時代には珍しい紅茶専門店として1983年に創業。当時は16坪しかなく、「できるだけお客さんを入れたいと思い、効率と利益を優先させた店づくりをしたこともあった。でも、そうすると一人で来たお客さんが犠牲になるのが心苦しかった」と話す。


スコーンセット900円。手作りのスコーンは看板商品。

 席に対する東京と関西の違いについて聞いてみると、「店の意向をお客さんが汲むのが東京、お客さんの意向を店が汲むのが関西、と言われていますが、そう感じることもあります。でも私としては、ひとりひとりのお客さんを大事にしたいという思いでやっています」。

 その店で食事やお茶を「楽しむ」というのは、贅沢な時間でもある。お店での時間が楽しく居心地がいい印象として残ることで、また来たいと思うし、それぞれのお客さんに長く愛されるというのだ。「そういう意味では、東京も関西も同じだと思いますよ」。

 席を自由に選んで座れるのは、居心地のよさでもある。関西の店の多くがそうするのは、客の意向を汲んだ結果なのかも知れない。


【取材・執筆】 伊藤 由佳(いとう ゆか)  2011年1月9日執筆
神戸出身。関西でフリーライターとして京阪神のグルメ情報、ファッション記事のほか、人物インタビューや体験記事など様々なジャンルで執筆。2010年より東京に拠点を移して活動中。趣味はヨガ、食べること。