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・新ターゲットは「メキシコ料理に興味のなかった人」。
飲食店検索サイトや各店のホームページで、さまざまなメキシカンレストランのメニューを見てみると、どこも非常にラインナップ豊富でにぎやかである。テキーラ、ラムをベースにしたカクテル類をはじめとする多種多様なドリンク(60種類はざら!)、チリコンカルネ、ワカモレ(アボガドのディップ)などのフードは1皿500円前後とリーズナブル、宴会用コースはフードのみ2000円~2500円、飲み放題付きでも4000円以内という設定が目立つ。

メキシコ料理はバリエーションの多さが魅力。(写真は「サルサ・カバナ・バール」)
お店によってはハバネロ料理を用意しているところもあるが、これは宴会を盛り上げるためのアイテムとしての色が濃く、全体的には野菜を使用したフードが多い。メキシコ料理のヘルシーさは関係者が口をそろえて強調する、一般消費者には知られていないポイントだ。
酒類の豊富さ、深夜営業という、お酒好き・ラテン好きの人のための要素も持ちつつ、チェーン店系の居酒屋に負けないリーズナブルさ、お酒も食事もカタカナが並びなんとなくおしゃれ、ラテン音楽のBGMはにぎやかで気分がアガる・・・と「安い予算で盛り上がれる」という不況時にウケる要素もしっかり持っている。大型モニターを置き、スポーツバーとして利用されている店舗もある。メキシカンレストランについて、あらためて分析してみると、向かうところ敵なし?!と思えるくらい消費者にとってうれしいメリットがそろっていると言える。

ビールの種類が豊富なのもメキシコ料理の特徴。

季節が温かくなってくれば、スパイシーなフードとビールで一杯・・・という人も増えて来る。
(写真は「サルサ・カバナ・バール」)
しかしそんな多数のメリットにも関わらず、イタリアン、フレンチ、中華といった他の料理に比べ、メキシカンはそこまで私たちの食生活に浸透していないように思える。ひとつの大きな理由はメキシカンレストランの数が多くないという、ごくシンプルな環境要因にあるかもしれない。とすると、ここ最近で数多く新規オープンしているという動きには、非常に期待が寄せられる。
「僕らのターゲットはラテン好きの人というわけではなく、ごく一般の人や若い人たちです。メニューにサボテンもないですし、本当のメキシコ料理好きの人は、僕らの料理にはがっかりするかもしれませんね(笑)」と話すのは、「メキシカンキッチン ヴィダロッサ」の湯田健氏。「ヴィダロッサ」は、日本初のタコスのデリバリーを手掛け話題を呼んだ株式会社タイムシェアが、2009年7月にオープンさせたモダンメキシカンの先駆け的存在だ。

細長い店内だが、レストランとデリバリーの両業態で営業しているため、2路面に面した物件は非常に便利。タコスのデリバリーは一人暮らしの若い女性に人気。
「辛い料理、サボテン、テキーラなど、メキシコ料理にはすでに出来上がったイメージがありましたが、実際はそこまで辛いわけではないし、僕が現地で食べた料理は野菜がおいしくて、もっと親しみやすいものだった」という湯田氏の体験は、「ヴィダロッサ」が掲げるコンセプト『伝統的メキシカンのエッセンスを生かしながら、日本人が毎日食べられるメキシカンへ』に生かされている。本場の味に忠実なメニューもあれば、料理によってはオリジナルアレンジを加え、日本の消費者にとって食べやすくしたり、わかりやすいネーミングに変えて提供している。

「ワカモレ」「エンチラーダ」など初心者にとってはわかりにくい料理名。どういった料理かわかりやすく説明している。

現地で食べてとても美味しかったリゾットをイメージした、その名も「メキシカントマト鍋」(1180円)。やさしいチキンスープにトマトとアボガドがどっさり!

「メキシカントマト鍋」は、最後はもちろんリゾットにして食べるのがおすすめ。
新しいターゲットを迎え入れるには、新しいハコ(環境)が必要である。インテリアの点でも「ヴィダロッサ」は従来のメキシカン、テックスメックスのイメージを覆した。
「現地視察でメキシコに行ったのですが、メキシコって危険で街が汚れていて・・・というイメージがありませんか?実際はそんなことはないんです。植民地時代の美しい街並みも残っているし、自然豊かな所。そしてルイス・バラガン・モルフィンの建築に衝撃を受け、すっかりインスパイアされてしまいました」(湯田氏)と語るように、店内はルイス・バラガンの特徴であるメキシカンピンクを基調にしつつ、メキシコの伝統的モチーフを効果的にあしらったおしゃれなデザイン。モダンと伝統が融合した他に例のないインテリアとなっている。

この正方形の穴あきモチーフも、ルイス・バラガンにインスパイア。とても存在感がある。

店内には、バラガンの建築物の絵もかかっている。


女性客に「かわいい」と人気の原色のお皿。斬新なインテリアも小物も、日本国内のメキシコ料理店に影響を与えているに違いない。
前回のレポートで紹介した「アシエンダ・デル・シエロ・」(東京・代官山)は、N.Y.のおしゃれでモダンなテックスメックスレストランのイメージだ。
「MUCHOは丸の内という場所柄、サラリーマンが多いですが、代官山にあるアシエンダは、近隣に住む若いご夫婦、休日に買い物に来た若いカップルなどがターゲット。メキシコ料理は、アメリカでは家庭料理的に楽しまれているものなので、家族連れで楽しんでいただくのは理想像です。お客様からは『カジュアルにメキシカンを楽しめるお店を待っていた』という声もうかがっています、日本ではまだお店の供給が足りてないのが現状ですね」(HUGE広報・浅井真由子氏)
これからの“浸透”が期待される、ニューメキシカン。第三回では、メキシコ料理のフードやドリンクのトレンドに迫りたい。