*バックナンバー
・新イメージを創出して、日本での定着を狙う。
今回さまざまなメキシカン・レストランを取材リサーチしたところ、新規オープン店・リニューアル店を中心に、おっ!と目を引くさまざまなトレンドが散見された。メキシコ料理の新しいイメージを作り上げるかもしれない興味深い動きも多く、ここでいくつかご紹介したい。
【プレミアム・テキーラに注目】
メキシコ料理といえばテキーラ。一般のテキーラは、サトウキビなどの糖分を40%程度まで使うことが許されているが、プレミアム・テキーラは100%アガベ(竜舌蘭)を使用、味・香り・色に非常に優れている。プレミアム・テキーラに特化した専門店も登場しているほどだ。「薫り高いプレミアム・テキーラに、ショットでガンガン飲む“酔うためのお酒”のイメージは崩されるはず。本当においしいものを味わってほしい」(ヴィダロッサ 湯田氏)。料理と一緒にゆっくり味わうスタイルがおすすめだ。

ボトルのデザインも凝っているプレミアム・テキーラ。ワインのようにグラスでサービス。回して香りを楽しんでもらう。
【ワインとメキシコ料理のマリアージュ】
メキシコ料理といえばメキシカンビール、ラムやテキーラベースのトロピカルなカクテル・・・・・・それらに混じってワインが人気だ。メキシコ料理にワインなんて?と思うなかれ、メキシコはスペインの植民地でもあった土地。「だから合いますよね。うちの店では国や銘柄にこだわらず、純粋に料理に合うものをソムリエに選んでもらっています」(湯田氏)。ワインといっても、ボトル1本3000円前後のお手頃価格でそろえているのが、リーズナブルなメキシカンレストランらしい。

国に関係なく選んだところ、南仏やイタリアのワインが多くセレクトされたそう(写真はヴィダロッサ)
【この夏来るかも?喉越しさわやか、ミチェラーダ】
コロナビールにライムを入れて飲むのはよく知られているが、メキシコではビールにレモン果汁、氷を入れ、塩を添えて飲む「ミチェラーダ」は非常にポピュラーな飲み物。このキリっと冷えた炭酸の爽やかさは、昨年から流行中のハイボールによく似ている。この夏電力不足が懸念される中、消費者はクーラー以外で涼を取る方法を探すはず。暑い国の喉越し爽やかなドリンクは、ハイボール慣れした日本人にウケるかもしれない

ビールは好きなものをチョイスできる。勢いよくビールを注ぐのがコツ。(写真はヴィダロッサ)
【気分は酔いたい!ノンアルコールカクテル】
ワインやプレミアム・テキーラなど、バリエーションが増えているのはお酒だけではない。ノンアルコールのドリンクに力を入れる店舗もある。「お酒を飲めない人や昼間のお酒を飲まない時間帯でも、お酒“風”のものを楽しめたらメキシカンという明るい場にも合いますし、気分がアガりますよね」と話すのはHUGE広報・浅井氏。ランチ営業も実施している店ならではの視点だ。アルコール離れが懸念される若年層の獲得にも有効に働きそうだ。


おなじみのカクテルのピッチャーメニューが並ぶ中、ノンアルコールカクテルが目を引く。ハーブティーなどソフトドリンクも充実。(写真はアシエンダ・デル・シエロ)
【アボガドは女性を取り込むキラー食材?!】
メキシカンの看板料理といえば、タコス、ブリトー、エンチラーダなどの“はず”だが、多くの店で人気を集めているのはアボガド料理だ。特に女性からの人気が高く、美容・健康によいとしてアボガドづくしコースを設ける店もあるほど。なぜか女性はあのこってりした味わいを好む人が多い、女子会ブームが継続する今、キラーコンテンツになるかもしれない。

「ヴィダロッサ」の人気メニュー。奥から、アボガドチーズオーブン焼き、ワカモレ、メキシカントマトスープ鍋、どれもアボガドをたっぷり使用している。

アボガドチーズ焼き。中にはサワークリームがあふれんばかりに入っている。
【ピザに変わるか?デリバリータコス】
「ヴィダロッサ」のデリバリータコスは、一人暮らしの女性と外国人からのオーダーが特に多いそうだ。女性一人では、例えばピザは量が多すぎて頼みにくいが、タコスならサイドメニュー、ドリンクと合わせて一人分1500円程度。ピザよりも格段にヘルシー、値段的にもお手頃とあってうまくニーズとマッチしているようだ。
「アメリカでは、タコスはハンバーガーに次ぐ市場規模を誇るファーストフード。しかし日本では未開拓に近く、競合がいないマーケットです。僕らがそもそもタコスデリバリーを始めたきっかけもそこにあります」(湯田氏)

「ヴィダロッサ」が位置する四谷は、帰国子女が多いことで有名な大学が。慣れ親しんだ食べ物として利用する学生も多い。
ずいぶん前になるが、アメリカの有名タコスチェーン「タコベル」が日本に上陸したが、当時はまだ受け入れられずあえなく撤退してしまった。「時代が早すぎた」と評する声は多い。他業界ではあるが、今や日本のインテリア業界の地図を塗り替えてしまった北欧家具メーカー「IKEA」も、1990年代前半に日本上陸を試みて大失敗した苦い経験を持つ。2006年に再上陸し現在大成功をおさめているが、入念なリサーチなどの企業努力以外に、消費者や時代の変化と受け入れ側の要因がかなり大きいはずだ。
10年、20年前に比べればメキシコ料理の認知は格段に上がり、N.Y.やロサンゼルスに滞在経験のある人々が「懐かしい!」と喜んで食べる姿もよく目にする。提供側、消費者側、両方が整ってきた感があるだけに、今後にぜひ期待したい。