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ドトールが珈琲文化を進化させたように、うどん文化を。
~「丸亀製麺」をうどん文化のスタンダードに育てる~(3-3)
粟田貴也氏 株式会社トリドール 代表取締役社長

2011.4.1
2年連続で100店舗以上の出店を続け、既に400店舗以上を数える「丸亀製麺」。そして1000店チェーンを目指す。その発祥は焼鳥店。神戸市内の本社を訪ねて粟田氏にその軌跡を聞いた。3回シリーズ。レポートは安田正明。


うどんを食べるニューヨーカー。

ドトールが珈琲文化を進化させたように、うどん文化を

「丸亀製麺」は昨年4月から今年2月の10ヶ月間で新規に118店を出店し、全店で444店。2010年3月期も大量の128店を出店した。店舗数の拡大とともに既存店売上高は昨年実績を割り続けている。

「既存店は厳しい。店を沢山出すリスクは避けて通れない。商圏を細分化して1000店舗が目標。カニバリは当然です。全体の利益が下がっているといけませんが、上がっています。」

「ドトールさんが喫茶業界を一変しました。重たく暗かった喫茶業界を女性1人でも飲めるようにした。皆が珈琲に詳しくなった。日常に珈琲文化がより浸透しました。それはドトール効果です。喫茶がセルフコーヒーに変わって 日本の珈琲文化が格段進化したと思います。市場規模が2倍になったわけじゃないですが、珈琲がより身近になって日常に珈琲が溢れました。素晴らしい。」

「今のうどんは『申し訳なさそうに、今日はうどんにしとこか』。うどんのバリエーションを頼んでもらいたい。顕在化していない潜っているニーズを我々は表に出す作業をしているんです。300店では足りない。1000店超えないと。ドトールさんのように、うどんの出汁の香りがする街を作りたいです(笑)。うどんといえば丸亀製麺。丸亀製麺がうどん業態のスタンダードになることが私の果てしない夢。夢の実現に向けて出店していきたい。」

「セルフうどんは、TPOに応じて使い分けできます。うどん店に定食機能が付いたものですね。280円でもOKですし、お腹が空いていれば1000円でも使えます。色んな利用動機を囲うことができる。ファーストフードだけどファーストフードらしくない。牛丼は家族では行かない。丸亀製麺はうどん専門店で色んなうどんがあって、家族で行ってもいいかなという空気を出しています。2重3重の利用動機を持ってるから勝てる。」

「チェーン店はスケールメリットを求めてきました。1店1店のコストをどれだけ削っていけるか。でも、これでは日本の外食は停滞します。まずはお客様を呼び込む。集客こそが外食の原動力です。もっとお客さんの喜ぶことをやらないと生き残っていけない。マクドナルドさんが40周年のスローガンに掲げた『MAKE WOW』(お客様に驚きを)が気に入っています。満足では人には言わない、満足を通り超えた驚きでないと人に言わない。口コミ材量をどれだけ店に入れられるか、いつも考えています。」

「最近の大ヒットは、肉ごぼううどん。目の前でグツグツいってる肉をかけるだけなんですが、それが『MAKE WOW』。小さなことに成功の要因がある。それを何?と思う人はこの商売ができない。ピュアな気持ちで、どうしたら人は喜ぶのか考えています。どうやったら驚くのか、目に留まるのか、仕掛けをどう作るかを常に考えています。」

 チェーン店ながら、セントラルキッチンは使わない。人の手間を惜しまない。そこが差別化のポイントだ。

「外食は既成概念がきつい。セントラルキッチンありき。我々にはチャンスです。店ごとに調理しています。基本は鮮度。それをやりつづけることが大事。その文化を無くしたら成長のエンジンが止まってしまう。我々は面倒なことをやる。楽な方に皆が行き、面倒な方には人は寄りつかない。競合は来ない。毎日、天候に応じて加水率がいくつ、塩分がいくつと測って作っていますが、完ぺきじゃない。それを毎日いやというほどやっているんです。」

 次の手は海外。海外に子会社を設立して出店を待つ。粟田氏はアジア視察を重ねている。日本のうどん文化がアジアにも拡散する日は近い。


【取材・執筆】 安田 正明(やすだ まさあき)  2011年3月22日取材